研究課題/領域番号 |
22K18752
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松山 智至 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10423196)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 形状可変鏡 / 補償光学 / X線顕微鏡 / X線ナノビーム |
研究開始時の研究の概要 |
X線光学では,波長が1nm~1ÅのX線を扱うため,理想的な実験をしようとすると,非常に高い形状精度を持つ鏡が必要である.しかし,現在の最先端技術をもってしても鏡の作製には2nm前後の誤差が生じてしまう.このような鏡の形状誤差は,X線の波面を歪めるため,集光や結像などの高度な実験を困難にする.本研究では自由かつ高精度に変形できる鏡(形状可変鏡)を実現し,その形状をX線照射下でその場調整することでこの課題を克服する.高い完成度でX線領域の補償光学を実現すべく,全く新しい構造を持つ形状可変鏡を提案し,Åオーダーの精度と安定性の達成に挑む.
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研究実績の概要 |
本研究では,次世代のX線分析・顕微鏡を実現するために必要となる高精度・高安定・良制御性を持つ形状可変鏡を開発することを目指している.最終的な目標はÅ精度の形状制御である.これを実現するために,単結晶圧電素子を用いた新規構造の形状可変鏡の提案・開発・高度化を進めた. 本年度は,①設計の最適化,②有限要素計算を用いた性能予測,③単結晶圧電素子の加工特性評価,④形状可変鏡の試作を実施した. ①②では,有限要素計算を用いた様々な設計を調査した.電極配置や結晶厚みなどについて検討するために電場解析と変形解析を進め,基本的な設計指針を得ることができた. ③では,X線鏡作製でよく用いられる加工法を実践し,加工後の表面粗さを白色干渉計を用いて評価した.単結晶シリコンと同等の表面粗さを得ることができることを確認した.これはX線鏡としは十分な性能であった. ④実際に形状可変鏡を試作した.形状可変鏡をセットし電圧を供給できる実験装置を開発した.可視光干渉計を使ってその変形を測定したところ,②で得られた計算結果とよく一致した.また,その挙動を正確に評価したところ,安定性,リニアリティ,再現性,応答関数についてよい結果が得られた.以上のことから,試作は成功したと言える. 本結果を受けて,次年度は安定性評価やX線照射テストなどを実施する.また,さらに新しい構造を持つ形状可変鏡を探求し,性能の向上を図っていきたい.また,他分野での応用についても広く検討し,得られた成果を活用していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り順調に研究・開発を進めることができた.本年度の目標の一つである形状可変鏡の試作に成功した.その挙動は,既存の形状可変鏡を凌駕する性能(安定性,リニアリティ,再現性)を発揮した.今後の研究開発によってさらなる性能向上やもっと新しい構造の形状可変鏡を検討する足掛かりを得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらなる性能の調査を実施していく.長期間の精密な安定性の評価や短時間の変形挙動などを可視光干渉計にて実施する.また,SPring-8にて,X線照射テスト・X線干渉計評価などを実施する.時間が許せば,さらに新しい構造の形状可変鏡について検討(シミュレーション・設計)を実施する.
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