研究課題/領域番号 |
22K18762
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分18:材料力学、生産工学、設計工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
松本 龍介 京都先端科学大学, 工学部, 教授 (80363414)
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研究分担者 |
松永 久生 九州大学, 工学研究院, 教授 (80346816)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 水素脆化 / 疲労 / 破壊 / 環境変動 / 原子シミュレーション / 転位 / 疲労破壊 / 格子欠陥 / 遅れ破壊 |
研究開始時の研究の概要 |
遅れ破壊が,荷重変動ではなく,環境変動のみによって大幅に加速することが見出されているが,そのメカニズムは明らかにされていない.水素濃度の変化に伴う格子欠陥の見かけの自己ヘネルギー変化に起因して,転位が大きく動く.即ち,転位への水素のトラップと脱離が繰り返し生じる環境においては,転位の繰り返し運動を生じるために材料損傷が加速するという着想を得た.本研究では,固溶水素濃度と転位の自己エネルギーの変化の定量化,転位の自己エネルギーの変化に伴う転位運動の定量化,環境変動による遅れ破壊の加速の定量化という研究項目を通して,化学的作用による疲労現象という新しい領域を切り拓く.
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研究実績の概要 |
力学的な外部負荷の変動によって,転位が往復運動をする過程で損傷が蓄積することで,疲労が発生する.一方,環境変動によって転位に添加元素が配位/脱離することで,転位の安定性が変化することから,転位運動を生じることが予想される.本研究では,化学的作用による疲労という新しい現象に着目し,環境変動に曝される部材の高精度な強度信頼性予測に資することを目的とする.具体的な問題としては,水素の吸着・脱離によって繰り返し生じる転位運動や,転位の安定構造の変化と,材料損傷との関係を紐解く.研究代表者(松本)が主に実施する計算力学的なアプローチと,研究分担者(松永)が主に実施する実験力学的なアプローチにより研究を実施している. 第2年度は,初年度に引き続いて,解析や実験環境の整備を行い,基礎データの収集を行なった.また,幾つかのより具体的な研究を実施した.計算力学的なアプローチでは,規定された化学ポテンシャルのもとでの種々の欠陥まわりの添加元素の熱平衡分布を評価する枠組みをグランドカノニカルモンテカルロ法に基づき確立した.初年度に行った解析では,水素-水素間の相互作用が無視されていたが,本手法では陽に含まれる.そして,き裂先端,および,転位芯近傍での水素の熱平衡分布を明らかにした.実験的なアプローチでは,ボルトロード試験片を水素ガス環境の温度変動と圧力変動に曝す実験を実施した.現在のところこれらが,き裂進展を加速するというデータは得られていないが,その原因が昇温時や脱水素時に生じるき裂の鈍化にあることを突き止めた.一方,き裂の発生や転位運動への影響に関しては,本実験からは評価できていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算(主に研究代表者(松本)が実施)と実験(主に研究分担者(松永)が実施)で互いに協力しあうことで,化学的作用による疲労,特に水素環境の変動による格子欠陥への水素の吸着と脱離によって誘起される疲労を明らかにすることを目指している.第2年度は,初年度にやり残した研究の立ち上げ,基礎データの収集を終え,より発展的な研究に取り組んだ. 計算によるアプローチでは,水素-水素間の相互作用が欠陥まわりの水素分布に強い影響を与えることが明らかになったため,計算負荷を低減しつつ粒子数が変化する解析を可能とする,キャビティベースのグランドカノニカルモンテカルロ法のプログラミングを新たに行った.そして,添加元素の化学ポテンシャルを規定した際の格子欠陥まわりの添加元素分布を評価する手法を確立した.本手法により,モードIき裂前方の水素分布,および,種々の転位芯まわりの水素の熱平衡分布を明らかにした.また,水素の特徴を明確にするために,鉄における典型的な添加元素である炭素についても同様の解析を実施している.実験によるアプローチでは,ボルトロード試験片を,水素ガス環境の温度変動と圧力変動に曝す実験を前倒して実施した.現在のところこれらが,き裂進展を加速するというデータは得られず,むしろ,水素の影響が緩和する結果となった.この原因として,温度を上昇させた際や,水素ガス圧力を低圧にした際に,水素の影響が緩和されてき裂が一旦鈍化することが原因であると考えられた. 以上のことは,おおむね計画通りであり,本研究は順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,(1)固溶水素濃度と転位芯の自己エネルギーの変化の定量化,(2)転位芯の自己エネルギーの変化に伴う転位運動の定量化,(3)環境変動による遅れ破壊の加速の定量化を行う.第2年度の研究で,添加元素の化学ポテンシャル(あるいは完全結晶中の濃度)を規定した場合の,格子欠陥まわりの添加元素の熱平衡分布を高効率に評価する枠組みを確立した.これによって,(1)と(2)を実施していく.また,水素の特徴を明確にするために,鉄中の典型的な添加元素でも同様の評価を実施する.また,ボルトロード試験片を,水素ガス環境の変動に曝す実験を前倒して行った.現在のところ,(3)の遅れ破壊の加速は確認されていない.試験装置や予算の制限から,環境変動の回数が制限されていることから,計算によるアプローチと連携を強め,研究を行なっていく.
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