研究課題/領域番号 |
22K18766
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分19:流体工学、熱工学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
亀田 正治 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70262243)
|
研究分担者 |
伊藤 輝将 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60783371)
武藤 真和 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30840615)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
|
キーワード | 流体工学 / 光工学・光量子科学 / 非ニュートン流 / 光計測 |
研究開始時の研究の概要 |
食品,日用品,塗料,血流などは複雑流体と呼ばれ,水や空気に比べて流動(レオロジー)を司るパラメータが多岐にわたる.科学技術が発達した現在でも,既存の計測手法では,それらのパラメータの同定は難しい.本研究では,その解決に向けて,サブミリ秒の時間分解能が必要な非定常流れや非一様なひずみ速度場に適用可能な新しい計測手法を開発する.本研究によるレオロジー計測の革新により,複雑流体による流れの変調など,流体工学における未踏の課題の解決につながることが期待される.
|
研究実績の概要 |
複雑流体(complex fluids)のレオロジーは,ニュートン流体(粘度がひずみ速度に依存しない)とは異なり,流体の変形や時間発展による物質の内部状態変化の影響を受ける.流体内部の応力,ひずみ速度(ひずみ)分布と,物質の微視的構造や化学的性質を同時に把握する方法が必要である. そこで,ラボスケールかつ非定常計測への拡張が可能な,応力,ひずみ速度(ひずみ),物質の微視的構造・分子の状態を同時に把握する新しい方法論として,「光干渉断層撮影法(OCT)」による流動,構造計測と「ラマン分光法」による物質分子計測を複合した高時間分解レオロジー計測システムの構築を進めた. 本年度は,三つのサブテーマに分けて研究を行った.第1に,OCT/ラマン複合計測システムの構築を進めた.赤外スーパールミネッセントダイオード(SLD)を光源とするドップラーシフトOCT流速計の組み立てに必要な部品を収集した.ラマン分光による物質分子計測の予備調査を行った.第2に,非ニュートン流体の管内流れの計測に向けて,比較検証用の高速度複屈折カメラによる応力場非定常計測システムのセットアップを行った.また,試験物質として,複屈折流体(セルロースナノクリスタルにヨウ化ナトリウムを加えた水溶液)を選定し,基本的なレオロジー特性試験を実施した.第3に,伸長流に対する時間分解計測に向けて,比較検証用の非線形有限要素法(FEM)数値シミュレーションを実施した.マルチフィジックスソルバー(COMSOL)での計算を前提に,さまざまなレオロジーモデルでの計算を可能にするよう,計算条件を整え,既往の実験(Arora et al. 2017)による応力・ひずみ測定結果との比較から,良好な計算結果が得られることを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述の通り,3つのサブテーマ全てに着手し,それぞれ進展しているものの,以下の理由により,当初見込みより数カ月の遅れが生じた. まず,赤外スーパールミネッセントダイオード(SLD)を光源とするドップラーシフトOCT流速計の検出器として想定していたリニアイメージセンサが,コロナ禍による半導体不足の影響で調達の見通しが立たないことが判明した.そのため,検出器をフォトダイオードに変更し,装置構成を再考して,機材の調達を進めた.その結果,すべての構成要素の調達完了が令和4年度末になった. つぎに,測定対象物質の選定に時間を要している.当初想定していたひも状ミセル水溶液(臭化セチルトリメチルアンモニウム,サリチル酸ナトリウム混合溶液)は,ひも状ミセル構造特有の有意なラマンスペクトルが得られるないことが判明した.レオ・ラマン計測の既往の実施例を参考に,レオロジー特性が良く調べられており,かつ,比較検証用の光弾性計測も実施可能な物質の選定を現在鋭意進めているところである. 最後に,研究分担者(武藤)が,令和4年度4月に,現所属機関(名古屋工業大学)に異動し,異動後に,光弾性計測に必要な機材(複屈折カメラ)の調達を進めたため,機材が整ったのが令和5年1月となった.これにより,管内流計測の実施が令和5年4月以降となった.
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度も,令和4年度に引き続き,3つのサブテーマに分けて研究を実施する. (1)OCT/ラマン複合計測システムの構築(伊藤,亀田,研究協力者(河合隼,瀧誠二) 流動場のマクロなレオロジーと,局所局時的なレオロジーやそれを支配する物質の物理化学的な構造変化の関係を明らかにする「非定常計測」を実現する.令和4年度に収集した構成部品を組み立てて,OCT流速計を製作する.並行して,現有のコヒーレント反ストークスラマン分光(CARS)計測システムを本研究用に改良する.CNC水溶液を対象に測定を行い,計測システムの精度を検証する.計測法に関する成果をまとめ,英文論文として公表する. (2)非ニュートン流体の管内流れへの適用(武藤,亀田,研究協力者(吉野辰哉,梅澤遼,澤井紀人))円管内(あるいは矩形管内)を流動する非ニュートン流体を対象とする.レオロジーの非線形性が良く調べられているCNCヨウ化ナトリウム水溶液を作動流体とする.別に実施中の高速度偏光カメラにより比較検討用の流体応力場を算出する.OCT/ラマン複合計測システムにより管径(光軸奥行)方向流速分布,ラマンスペクトル分布を得て,せん断粘度分布を導出し,物質内部状態との比較検討を行う. (3)伸長流に対する時間分解計測(亀田,研究協力者(河合隼,龍見香穂,安部潤一郎,寺井雄祐)) 伸長変形にともなう非定常・大変形プロセスにおけるレオロジー解明を試みる.液糸伸長過程を利用したレオメトリーによる非ニュートン流れの計測を対象にサブミリ秒での時間分解計測を行う.測定対象流体内部の構造に相関するラマンスペクトルに着目し,動的光散乱マイクロレオロジーに基づく微小振動計測データや非線形有限要素法による数値シミュレーションとの比較を通じて,大変形かつ非定常性の強い現象における物質内部構造の特徴をとらえる.
|