研究課題/領域番号 |
22K18768
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分19:流体工学、熱工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
辻 義之 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00252255)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 量子乱流 / ヘリウムエキシマ / 中性子 |
研究開始時の研究の概要 |
量子乱流場は、超流動と常流動成分が混在する複雑乱流場である。常流動成分は水や空気の流れと同様に粘性乱流としてふるまい、乱流中には微細な渦構造(乱流渦)が存在する。一方、超流動成分中にも量子渦と呼ばれる旋回を伴う渦構造が存在する。本研究では、新たな可視化粒子としてヘリウムエキシマを用いる。エキシマはヘリウム原子に電子を衝突させることで電荷を持たせ、別のヘリウム原子と結合した状態である。エキシマの生成には放射線(中性子、ガンマ線)及びプラズマ発光を利用する。エキシマによる流動場可視化と量子渦の運動を定量化することで複雑乱流の新たな知見を得ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
大強度陽子加速器施設(J-PARK)において、液体ヘリウムに中性子を照射させ、ヘリウムエキシマの生成実験をおこなった。三重断熱構造のクライオスタットにヘリウムを収め、減圧することでλ点(2.17K)以下に設定した。中性子を照射することで生成されたヘリウムエキシマをパルスレーザー(905nm)により励起状態として、その発光を観測することに成功した。発光は極めて微弱であるため、新たにイメージインテンシファイアを設置して輝度を増幅し、加えて高感度カメラでの計測をおこなった。 パルスレーザーの発振周波数を撮像系(イメージインテンシファイア+高感度カメラ)と同期することでエキシマ発光を効率的に撮像した。また、昨年度までの研究から、レーザー照射からエキシマ発光まで微小な時間差があるため、その時間差を撮像系に加味することで、発光強度の高い画像が撮影できた。高感度カメラの輝度が飽和しないように事前の調整をおこなう必要があった。 ヘリウムエキシマは、クラスター構造を形成することが予想されており、その大きさは100μm程度である。本研究では、可視化画像の解析から同程度の大きさを持つ発光領域を観察できており、クラスター構造が中性子照射によって形成されることを初めて確認できた。今後は、発光領域の大きさの頻度分布、その継続時間を定量的に解析する必要がある。エキシマの発光時間は、脱励起過程が効率的におこなえれば10秒程度と見積もられており、時間的減衰の過程も調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ解析の方法について、クラスター構造を時間・空間で検出するアルゴリズムを開発している。ほぼ完成しているが、より定量的な基準を策定する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
中性子照射により励起されたヘリウムはエキシマ構造を持ち、特定の波長で励起することでエネルギー準位をあげ、その後、発光することを確認できた。しかし、発光は散乱角を考慮すると、特定方向に設置したカメラで継続的に計測できるわけではない。発光をくり返すエキシマの発光強度の時間的減衰を調べることで、エキシマが生成される頻度を算定する。エキシマクラスターが、空間内をどの様に移動するのかを定量的にしらべ、移動速度とクラスター形状の変化を調べる予定である。エキシマクラスター構造の発生する兆候を明らかにしたい。
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