研究課題/領域番号 |
22K18774
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分19:流体工学、熱工学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 洋平 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00344127)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | ラマン分光法 / ラマンスペクトル解析法 / ラマン散乱光イメージング法 / ラマン散乱光イメージ解析法 / 水分子動態 / イオン動態 / 活性酸素 / 難病 / ノイズレス全反射ラマン散乱光顕微法 / 水素結合分布 / 水和殻分布 / 細胞内液 / 難病検知 |
研究開始時の研究の概要 |
日本における死因の第1位は癌、第2位は心疾患であるが、年々、新たな診断・治療法が開発され、多くの命を救っている。一方、日本で指定されている330を超える難病に関しては、遺伝子解析や、血液や尿に含まれる蛋白質一つひとつと、難病との関係を解明する研究は、国内外において数多く行われている。しかし、難病の効果的な治療法は5%にも満たず、また、汗や尿に含まれる水分子動態との関係に関する研究は皆無である。本研究では、汗・尿による難病検知の基盤技術に貢献する、細胞内液に含まれる水分子の水素結合状態とイオン周りの水和殻状態の空間分布の計測を実現する、ノイズレス全反射3波長ラマン・イメージング法の開発を行う。
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研究実績の概要 |
日本で指定されている330を超える難病の効果的な治療法は5%にも満たないのが現状である。細胞内液や細胞外液には多種のイオンが存在し、近年、病と特定イオンとの関係が明らかとなってきている。水分子動態はイオンの影響を直接受けるが、汗や尿の殆どを占める水分子動態そのものの直接かつ非侵襲計測が可能となれば、難病の画期的な診断法として期待できる。本研究では、理想的な結晶構造を有し自家蛍光の無いフッ化カルシウム基板を採用して、ノイズの影響を極力受けない、イオン介在による水分子からの微弱なラマンスペクトルの取得を行う。細胞内液や細胞外液に存在するイオンを模擬した電解質溶液、および過酸化水素を選定し、過酸化水素の影響下における、水分子およびイオン動態の解明を行う。多くの難病に関する研究では、細胞内に存在する微量な過酸化水素により発生する活性酸素が、要因の一つではないかと示唆されている。本年度は、下記の点に焦点を絞り、研究を遂行した。 1.細胞膜外側の親水性、および内側の疎水性の、水分子動態への影響を明らかにするために、フッ化カルシウム基板(親水性と疎水性の中間程度)、石英ガラス(親水性)、そして過熱処理した石英ガラス(疎水性)を選定した。疎水性では、親水性よりも水素結合、そして非水素結合状態への遷移が促進されていることが、明らかとなった。 イオン介在による水分子の水素結合状態 2.昨年度は、イオン介在による水分子のOH伸縮への、過酸化水素の影響を実験的に初めて明らかにしたが、本年度は、イオン周りの水和殻状態変化への影響を明らかにした。具体的には、過酸化水素分子周りの水和する水分子数の増加に伴い、イオン周りの水和する水分子数が減少し、減少率は、構造破壊イオンと構造形成イオンとでは異なることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
世界的な新型コロナウィルス感染症の蔓延の影響や、物価高騰、そして物資不足により、実験に必要な機器や部材の購入が不可能となり、計画通りの実験的研究を遂行することが非常に困難であった。特に、フッ化カルシウム基板、石英ガラス基板、EM-CCDカメラ用フィルター等が納入されず、現有の設備を用いて可能な限り実験的研究を行った。そのため実験条件および実験回数には制限があったため、再現性の高い実験結果を抽出し、新たな解析法の開発に専念することとなった。具体的には、過酸化水素を含む電解質溶液に特化した、水素結合状態の解析を可能とするMultivariate Curve Resolution(MCR)法、そして水和殻状態変化の解析を可能とするRaman Difference spectroscopy with Simultaneous Curve Fitting(RD-SCF)法の開発を行った。古典化学や、過去の国内外の研究においても、過酸化水素、水分子とイオンとの物理的関係を対象とした実験的および数値解析的研究が皆無であったため、新たに開発した解析法により、イオンの種類によって、過酸化水素分子周りの水分子動態を詳細に把握することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
汗や尿に含まれる水分子およびイオンの動態を解明し、難病との因果関係を明らかにするためには、イオン周りの水素結合状態、水素結合エネルギー、そしてイオンに引き寄せられる水分子の数との物理的関係、そして本研究で選定した過酸化水素の影響を明らかにする必要がある。更に、それぞれの空間分布を取得し、例えば、あるイオン周りに存在する、水分子の水素結合エネルギーが減少し、引き寄せられる水分子の数が減少すると思われたが、過酸化水素の影響により増加する領域が存在し、これが細胞内の活性酸素発生の要因となる、という知見を得ることが、本研究の最終目標である。そのために、ラマン分光法から得られたラマンスペクトルの新たな解析法、そしてラマン散乱光イメージング法から得られたラマン散乱光イメージの新たな解析法の開発を行う。
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