研究課題/領域番号 |
22K18794
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山下 兼一 京都工芸繊維大学, 電気電子工学系, 教授 (00346115)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | ポラリトン / 微小共振器 / 鉛ハライドペロブスカイト / ニューロモルフィックデバイス |
研究開始時の研究の概要 |
集積性と低消費電力性に優れたニューロモルフィックデバイスおよび量子シミュレータの創成に、光子と励起子の結合量子状態(ポラリトン)を利用した新概念により挑戦する。特殊な半導体材料の適用により、ポラリトン凝縮状態を室温にて安定に生成可能とするシステムを実現し、ポラリトン凝縮相の双安定形成と相互作用効果、およびそのニューロモルフィック機能を実証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、集積性と低消費電力性に優れたニューロモルフィックデバイスおよび量子シミュレータの創成に、光子と励起子の結合量子状態(ポラリトン)を利用した新概念により挑戦することを目的としている。室温にて安定にポラリトン状態およびその凝縮相を形成できる活性層材料として全無機鉛ハライドペロブスカイト(CsPbBr3)を選択し、高Q値の微小共振器構造を作製する。独自に構築した光学測定系を用いて評価時実験を行い、ポラリトン凝縮状態の双安定性の確認とニューロモルフィック機能の発現を実証する予定である。 初年度には、貧溶媒ミストアシスト法による単結晶成長技術の適用によって、本実験で使用可能な100um四方のサイズをもつ大面積CsPbBr3微小共振器の作製手法を確立した。この結晶を用いて、双安定性発現するの物理量として偏光方向に着目し、ポラリトン凝縮実験を行った。励起強度依存性、および観測角度依存性など、詳細なフォトルミネッセンス測定を行った結果、ポラリトン凝縮状態において垂直偏光モードと水平偏光モードの間でカップリングが生じていることを証明した。本来は相互作用を起こさない直交した2つの偏光モードであるが、CsPbBr3結晶がわずかに光学的異方性を持つことにより、偏光ミキシングが可能であることを明らかにした。双安定性の実証には連続(cw)モードでの凝縮を達成する必要があるが、室温ポラリトン凝縮相のニューロモルフィック応用だけでなく、量子ビット応用としても期待できるものである。本成果は現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポラリトン凝縮相の双安定性を実証するためには、連続波(cw)出力の紫外レーザダイオードを用いたパルス幅変調による光励起実験が不可欠である。現状では励起密度が凝縮閾値には達していないが、GHz帯のファンクションジェネレータとオシロスコープによるサブnsの時間分解能での、ポラリトン凝縮測定系の構築はほぼ完了した。また、本経費での備品として購入した空間光位相変調器の立ち上げを行い、空間パターンを有する励起パルス光生成を可能とした。さらに、別の研究費で購入した波長可変ピコ秒レーザとも組み合わせて、電子エネルギーおよび波数空間に対しても任意の方向から励起可能な、ポラリトン凝縮相のオンデマンド励起システムも構築した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2年目)が最終年度となるが、cwレーザダイオードを用いた励起によるポラリトン凝縮を、なるべく早く実現する。計算上は、現状の注入励起密度は凝縮に達するに十分と見積もられており、凝縮が観測できない理由は主として光照射総量が大きいことによる材料の劣化であると考えている。そのため、パルスduty比を抑えたりサンプルへの封止を取り入れるなどして対応する。また、空間光変調器を用いたオンデマンド測定システムにおいては、任意の空間位置に生成したポラリトン凝縮相を実際にパーセプトロンとして見立てた励起実験を行い、各ノード間における相互作用効果を定量的に評価する。
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