研究課題/領域番号 |
22K18796
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
川原田 洋 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90161380)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 海洋通信 / ダイヤモンドSGFET / 電解質溶液 / 電解質イオン / 電極 |
研究開始時の研究の概要 |
電磁波は通常は横波であり、双極子アンテナで電解質中に入射すると正負イオンを進行方向に直交する方向に大きく移動させ、エネルギーを吸収され、減衰にいたる。縦波であれば、この減衰が非常に少ない。真空中での縦波は不可能だが、媒質中は可能である。送信側を単一極として、電位変化を与え、正負イオンまたは分子の分極による縦波が作製される。この分極した波を、バイオセンサとして開発してきたダイヤモンド電解質溶液ゲート電界効果トランジスタ (Electrolyte Solution Gate FET : SGFET)のチャネルを2次元面の受信器とする新たな海中無線通信を提案する。
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研究実績の概要 |
新方式の塩水中の無線通信,海水管での通信を提案した.直径2.5cmチューブにおいて各園濃度の溶液における距離4 mでのFET検出系の1 MHzのスイッチング特性では,純水の場合,信号の減衰が著しく,1m以上で出力電圧の振幅Vpeakが観測できなかった.NaCl濃度3.5%と25%においては,入力電圧vGに対し出力電圧vRLは周波数応答し,NaCl溶液の濃度が高いほど振幅Vpeakが4mでも増加した.電磁波であれば,NaCl濃度の上昇,つまり,イオン濃度の上昇により,減衰吸収が大きくなるはずである.したがって、NaCl濃度による伝播の上昇は電磁波では説明できない.電気伝導,イオンプラズマ振動等の立場から,伝送機構を明らかにし,信号の減衰を小さくし,伝送距離を長くする手法を検討していく.距離20mの平面波水槽(1mx1mx20m)にて共振回路を設け、インダクタンスLの10mHから1uHまでの減少で 、最大伝達ピーク周波数が140KHzから8MHzまで上昇した。20m以上の通信では共振回路は必須である.また、距離25 mの海水プール0.9mx15mx25m)においてもL=100uH にて1.5MHzにてピークをもち,1 Mbps以上のデータ伝送を行えることがわかった.本伝送方式は電気伝導を基礎とするので,不透明な環境でも問題ない.複雑形状のチューブやパイプ等でも可能である.しかし,塩水が海と接していない環境が必要である.海はアース電位となり,信号が短絡されるからである.淡水化プラントや醤油工場のように塩濃度の高い液体が存在するプラントの容器やパイプ内壁検査用小型ドローンなどの応用がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平面波水槽(1mx1mx20m)にて検出系に共振回路の有無で伝搬の状況を観察したことにより、等価回路モデルの検討を行った。インダクタンスLの10mH,1mH,100uH,10uH,1uHまのhen変化で 、最大伝達ピーク周波数が140KHz,440KHz, 1.4MHz,4MHz,8MHzまで上昇した。ピーク電圧は入力が5Vで100mV-200mVであり,十分検出可能なレベルである.20m以上の通信では共振回路は必須である。これより,等価回路を仮定して分布定数回路から単位長さあたりの直列抵抗,並列コンダクタンスに平面波水槽をシミュレーションすることで,伝導機構を解析することができた.今回の結果は,これまで2.5cm系でのチューブでの実験の延長ではあるが,25mで最大500KHzが可能であったチューブと比べ1x1mの断面を持つ平面波水槽では,より高周波数で8MHzまでの伝送が可能となったことはプラントなどの応用で重要な成果である.
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今後の研究の推進方策 |
距離25 mの海水プール(0.9mx15mx25m)においてもL=100uH にて1.5MHzにてピークをもち1 Mbps以上のデータ伝送を行えることがわかったので,今後,より多くの共振パラメータから形状が明らかな海水プールにてデータの蓄積が期待できる.また,距離にしても50 mまでは海水プールが国内に存在するので,50m実験を2023年度に計画している.ただし,国内には海水プールのような塩水での施設が研究機関ではなく,公営の水泳用プールに限定しているため夏季の限られた期間の実験となることがネックとなる.海水プールで海水ドローンの動作デモンストレーションも併せて計画している.
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