研究課題/領域番号 |
22K18808
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分21:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
本田 善央 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (60362274)
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研究分担者 |
田中 敦之 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任准教授 (30774286)
新田 州吾 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任准教授 (80774679)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | GaN / SJ構造 / HVPE / Mgの偏析 / Mgのメモリー効果 / SJダイオード / pn接合 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで実現していないGaNを用いたSJダイオードの作製を目指す。我々は、高速成長可能なHVPE法におけるp型伝導の実現に成功したことから、pn接合の厚膜化を可能とした。本手法を利用して、SJ構造のpn接合周期構造の成長を試みる。p型不純物に用いるMgの成長中での拡散による深さ方向への不純物濃度の不均一の抑制、厚膜化に伴う表面モフォロジーの悪化およびデバイスプロセスの確立を図る。SJダイオードを作製し特性を得ることを目的とし、そのための基礎的な成長~プロセス技術を構築する。
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研究実績の概要 |
本研究においては、HVPEの厚膜pn-GaN周期構造の作製とそのプロセス技術の開発を行うことでSJ構造の作製を目指す。初めに、結晶成長における問題点を述べる。GaNのpn周期構造においては、p型のドーパントとして、Mgを用いる。Mgは偏析現象と成長炉内のメモリー効果が切るため、p-GaNを成長後のn-GaN層にMgが拡散するように含まれてしまう。本研究では、成長炉内のp-GaNとn-GaNが成長するゾーンを物理的に分離することで、Mgのメモリー効果を排除を試みた。はじめに、HVPE法により、npn-GaN構造を作製した。それぞれの膜厚は1umとした。SIMSによりMgの深さいプロファイルを測定した結果、Mg濃度が7x10^19cm-3程度と高い場合は、Mgの偏析が観測された。このとき、Mg濃度が一桁下がるまでに要する膜厚はおよそ150nm程度であった。また、Mgは単調に減少し、およそ600-700nm程度で5桁減少した。従来のMOVPE法やHVPE法では、偏析のよる100nm/桁程度の減少に加えて、600nm/桁程度の減衰が重畳されることが報告されている。これは、先の述べた前者が偏析現象よるもので、後者がメモリー効果によるものである。本結果から、本成長手法により炉内のメモリ効果をほぼ排除した成長を可能とした。次にMg濃度が7x10^17cm-3程度と低くした場合、50nm/桁程度で急峻に減少することが分かった。この違いは、Mgの固溶限が2x10^18cm-3程度と報告されており、低濃度においては偏析現象の抑えられたことによると考えらる。本結果から、HVPE法を用いて1um程度のpn周期構造を非常に急峻に作製可能であることを示した。今後、周期数を増やし厚膜化することで、SJ構造の作製を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GaNへのMgドーピングにおいては、Mgの偏析が大きな問題であり、これまで多層のドーピング積層構造は作製されていない。LEDの作製において、Mgをドーピングした層は上部にある構造となっている。これは、下部にMgドーピング層が存在する場合には、Mgが上部の活性層に侵入し発光効率を著しく低減させることによるためである。このような問題を解決することは、本研究課題の一つの目標であったが、現状では界面でのMgの急峻性は50nm/桁と非常に高い。この値は、SJ構造を作製するにあたっては十分な値であり、原理的に本手法がSJ構造を作製する手法として、ポテンシャルを有していることを証明することが出来たと言える。一方で、面内での分布や、厚膜にしたした際の急峻性の評価に関しては未着手であり、今後評価を進める予定である。ダミー基板を用いた、プロセス技術に関しても着手している。はじめに、基板にフォトリソグラフィによりパターンを作製し、ICP~RIEにより側面のエッチングを実施、得られた側面にイオン注入によりMgおよびSiの打ち込みを行っている。また適切な回復アニールを行うことでダメージ回復を行い、電流‐電圧特性の評価を行っている。HVPEの結晶成長によって、厚膜化が可能となれば、本手法を得られた基板に適用してSJ構造を作製する準備がほぼ整っており、両者の技術を組み合わせたデバイス評価を進める。
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今後の研究の推進方策 |
pn-GaN周期構造の作製を進める。p-GaN,n-GaNのそれぞれの膜厚は1umとして、pn構造を150周期繰り返し成長することで、300um厚のGaNの作製を目指す。今年度と同様にSIMSによりMgのドーピングの深さプロファイルを計測し、厚膜においても急峻性が保たれるかの評価を行う。初期に成長したp-GaN層に関しては、成長中の熱履歴が長くなるため、Mgの拡散によるダレが生じる可能性がある。表面における急峻性の評価とともに、初期成長部分のMgの深さプロファイルも再度計測することで、Mg拡散の影響を評価する必要がある。同時に、面内における膜厚およびMg濃度の均一性に関して評価を行う。SJ構造においては、n型とp型の不純物密度の整合が必要であり、SiドーピングレベルとMgドーピングレベルを精密に整合させるためにSiドーピングに関しても取り組み、SJ構造作製用のテンプレートの形成を目指す。得られたテンプレートを用いて、プロセスを行う。試料を劈開して90°回転させ、上下にSiおよびMgのイオン注入を行うことで、SJ構造を作製する。電極を形成して、実際に耐圧を計測することで、本構造の問題点を洗い出す。一般的にGaNのc軸に垂直方向に電流を流す構造においては、結晶欠陥に対して堅牢な特性が得られることが報告されている。本構造においては、作製上そのような形状になるため、転位密度に対する特性の評価も実施したいと考える。
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