研究課題/領域番号 |
22K18819
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
藤倉 修一 宇都宮大学, 地域デザイン科学部, 教授 (90782558)
|
研究分担者 |
大森 俊洋 東北大学, 工学研究科, 教授 (60451530)
荒木 慶一 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50324653)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
|
キーワード | プレストレス / 形状記憶合金 / マルテンサイト変態 / ヒステリシス / コンクリート部材 / プレストレス導入 / 耐久性向上 / コンクリート構造物 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,構造物の老朽化が大きな社会問題となり,既設構造物の補修・補強が急務である.このような背景から,RC構造物を複数に分割し,工場製作されたプレキャスト部材を現場で接合する工法が注目を集めているが,接合部は現場で施工されるため,弱点となり耐久性が懸念されている.接合部にプレストレスを導入し耐久性を向上する例もあるが,施工上やコストの問題があり,耐久性を向上する有効な手段が存在しない.そこで,本研究では,異分野である金属材料工学と構造工学を融合することにより,構造物の耐久性向上を目指し,新しい形状記憶合金を開発するとともに,低価格で新たなプレストレス導入方法の開発を目指す.
|
研究実績の概要 |
土木構造物におけるプレストレス導入を可能にする形状記憶合金の開発研究を行った.変態温度ヒステリシスが広い形状記憶合金としてCu-Al-Mn系合金に着目した.200℃付近の温度域で時効処理を施すことでベイナイト変態が生じることがわかっているため,これを利用することで,変態温度ヒステリシスを拡大することが可能と考えられる. そこで,Cu-Al-Mn及びCu-Al-Mn-Ni合金を作製して200℃時効を行い,時効時間とマルテンサイト変態温度の関係を調査した.時効処理によりベイナイト変態が生じることでマルテンサイト変態温度が低下し,変態ヒステリシスが増大することが確認できた.これらの実験結果を解析することでベイナイト変態の活性化エネルギーを算出することができ,温度と時間をパラメータとした時効条件の推定ができるようになった. さらに,ベイナイト変態させたCu-Al-Mn合金単結晶を作製し,様々な応力下での変態挙動を調査した.印加応力が低い場合,複数のマルテンサイトバリアントが生成して大きな可逆歪は得られなかったが,比較的高い応力下では,最大で6.4%の大きな回復歪が得られた.また,印加応力が高いほど変態温度ヒステリシスが増大する傾向が見られた.時効時間が長くなりベイナイト変態が過度に進行すると,変態温度ヒステリシスは増大するが形状回復歪は低下した.以上より,Cu-Al-Mn合金において適切な時効時間で生成するベイナイト変態を利用することで,プレストレス導入に有効な,ヒステリシスの広い形状記憶合金が開発できる可能性を見出すことができた. 開発した形状記憶合金をコンクリート部材中に用いて,プレストレス導入効果を検証するための,実験方法に関する検討を行った.形状記憶合金を丸棒形状に加工し,定着工法については,丸棒両端部を転造ねじ加工し,ナットによって定着版を端部に取り付けることとした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,Cu-Al-Mn合金に着目し,適切な条件で材料を作製することでヒステリシスを広げることができた.実験により適切な時効条件を見出すことができたことは大きな成果と言え,予定通り進捗している.また,コンクリート部材中の合金によるプレストレス導入効果を検証するための構造特性評価については,評価実験の準備を行い,来年度に向けて予定通りに進捗している.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は,合金組成と熱処理条件の最適化を図り,一定応力下での温度と歪の変化を調査する実験を行った.翌年度は,選定した試料を用いて,より実用的な評価である歪一定下で加熱・冷却を行った時の応力応答を調査する予定である.さらに,コンクリート部材中の合金によるプレストレス導入効果を検証するために,コンクリートに合金を埋め込んだ要素試験体の合金に熱を加え,プレストレス応力を評価する.
|