研究課題/領域番号 |
22K18830
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
古川 愛子 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00380585)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 構造ヘルスモニタリング / 振動特性の高精度推定 / ブラインド・デコンボルーション / 部分空間法 / 数値実験 / 実橋実験 / ベイズ推定 |
研究開始時の研究の概要 |
構造ヘルスモニタリングは,構造物の振動特性の変化から構造物の損傷を捉える技術である.本研究では,ブラインド・デコンボルーションと呼ばれる信号分離手法とベイズ推定により,振動特性の計測値に含まれる計測誤差と計算誤差を取り除き,振動特性を確率変数として推定する手法を開発する.開発手法により,振動特性の推定精度を飛躍的に向上させ,結果として構造ヘルスモニタリングの推定精度の高精度化に貢献する.
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研究実績の概要 |
最初に簡単な外力を用いた数値解析により検討を行った.まず,起振機により構造物が振動するとき,地盤震動で構造物が振動するとき,起振機と地盤震動の両方で構造物が振動するときを想定した.地盤震動はホワイトノイズで作成した加速度を入力し,応答にはホワイトノイズを加えた.起振機と地盤震動の両方で構造物が振動するときの応答を,ブラインド・デコンボルーションによって起振機による応答と地盤震動による応答に分離することを試みた.ブラインド・デコンボルーションの手法としてスペクトログラムと独立成分分析を組み合わせる手法を用いた.起振機の外力が正弦波であるときは分離することができたが,起振機の外力をホワイトノイズにしたり,ハンマー加振を想定したときは分離できなかった.様々な前処理方法を試したが十分な精度が得られなかった.起振機の外力が正弦波で地盤震動がホワイトノイズの場合は,2つの外力に独立性があるため分離し易かったと思われる. 並行して,部分空間法にチャレンジした.これまで伝達関数を利用して固有振動特性を推定することを考えていたため,加振源毎に異なる手法を採用する必要があると考えていた.部分空間法を用いることにより,加振源を問わず同じ状態空間モデルで表現できる.ただし,加振源毎に外力の特性が異なる.数値解析では,理想的なホワイトノイズを混入したためか,精度よく固有振動特性を推定することが可能であった.ただし,データの前処理が重要であり,前処理をしないと推定精度が低下することもわかった.実橋の振動実験データに適用したところ,フーリエスペクトルから目視で読み取る手法に比べて,固有振動数,モード形状ともに僅かではあるが良好な精度で推定することが可能であった.実橋実験では僅かに改善しただけであったのは,実際の外乱や計測ノイズが数値解析で想定したようなホワイトノイズではないためではないかと考察している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スペクトログラムと独立成分分析を組み合わせる手法を用いたところ,正弦波入力とホワイトノイズ入力を分離することはできたが,2つのホワイトノイズの入力や,インパルスとホワイトノイズの入力を分離することはできなかった.部分空間法によって目的を達成できないかと考え検討を進めた結果,部分空間法の方で一定の成果を得た.しかし,部分空間法も前処理方法を考案するまでは良い結果が得られず,数値解析的検討に時間を要した. 数値解析の検証結果を踏まえて模型実験を実施する予定であったが,数値解析でなかなか良い結果が得られず,一定の成果を得るのに時間がかかったことから,模型実験の実施を次年度に延期することとした.模型実験の代わりに,過去の実橋実験データの中から,手法を適用可能なデータを探し出し検証に用いた.従来手法よりも良い精度で推定できたが,更なる考察を加える必要がある.なお,実橋実験を通して新たな発見があったので,次年度検討を進めたい.
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今後の研究の推進方策 |
ブラインド・デコンボルーションの手法としてスペクトログラムと独立成分分析を組み合わせる手法を用いたところ,正弦波入力とホワイトノイズ入力を分離することはできたが,2つのホワイトノイズの入力や,インパルスとホワイトノイズの入力を分離することはできなかった.そこで,他のブラインド・デコンボルーション手法を試すことを考える.ブラインド・デコンボルーションの成功には前処理が重要な役割を果たしていることから,様々な前処理手法についても検討する.また,どのような外力なら分離できるのか,手法の適用範囲についても検討する. 部分空間法によって,入力と外乱およびシステムノイズを分離できたため,引き続き部分空間法を研究対象とする.ただし実橋実験データで検証した結果,固有振動特性の推定精度向上は僅かであったため,実橋実験での推定精度をさらに向上する方法を検討する.実橋実験における外乱やシステムノイズはホワイトでないことが原因であると考えられるため,数値実験によって外乱の性質の影響を分析する.実験データを取得し,実際のデータを用いた更なる検証を行う. また,これまでの検討は全て確定論的な手法である.確率論的な推定手法へと拡張するためにベイズ推定を導入することを考えており,方法論を含めて検討・開発する.
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