研究課題/領域番号 |
22K18832
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
矢野 真一郎 九州大学, 工学研究院, 教授 (80274489)
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研究分担者 |
渡部 哲史 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (20633845)
丸谷 靖幸 九州大学, 工学研究院, 准教授 (50790531)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 気候変動 / 洪水 / ダム / リスク評価 / 流域 / 異常洪水時防災操作 / バーチャル / パターン分析 |
研究開始時の研究の概要 |
気候変動を前提とした社会のあり方を議論する上で,極端現象だけでなく,顕在化していない影響や経験則が通用しない影響も加味した新しいアトリビューション研究アプローチの開発を目的とする.これには将来予測からバーチャルに経験し,顕在化していないものを発見する手法が必要になる.本研究では,現在気候と将来気候に対する大規模アンサンブル気候予測を用いて,各種気象要素の予測情報に基づくバーチャル体験から経験知の抽出を行う新たな方法論をDeep Learningと数値モデル解析手法のカップリングから構築する.1)ダム事前放流,2)ダムの異常洪水時防災操作,3)非出水期洪水,を対象とする.
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研究実績の概要 |
九州地方に存在する筑後川水系の大山ダム,寺内ダム,江川ダム,小石原川ダム,球磨川水系の市房ダム,ならびに建設計画中の川辺川ダム(流水型ダム)について,大規模洪水時に発生する可能性が高い異常洪水時防災操作への移行確率を,現在気候と将来気候(平均気温4度上昇)に対して算定した.その際、降水量と気温については,地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース"database for Policy Decision making for Future climate change (d4PDF)"を用いた.利用の際はバイアス補正を両方の計算結果に行った.ダムへの流入量については,集中型流出モデルを作成し,精度良く流入量が評価できることを確認の上,使用した.ダムについては,既存の放流ルール,ダムのH-V関係データを用いて,流入量に対して合理的な放流量を設定できるモデルを作成した. これらを用いることで,ダムの操作についての将来予測が可能となった.その結果,例えば,寺内ダムにおける異常洪水時防災操作移行確率は,現在気候で1/250が将来気候で1/129に,同様に江川ダムでは1/500が1/225へ,小石原川ダムでは1/500が1/216と増加することが確認された.加えて,現在のダムの構造のまま操作方法を変更することでどの程度異常洪水時防災操作への移行を回避可能かを,(1)最大放流量の増量,(2)洪水調整容量の増量,(3)サーチャージ水位の増大,(4)異常洪水時防災操作開始水位の増大,などを適用して検討した.その結果,寺内ダムで9割,小石原川ダムで6割を回避できることが明らかとなった.さらに,回避できない場合でも避難のためのリードタイムを5時間程度確保できることも明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度と同様に,本課題のベースとなる,流出モデル,ダムモデルを構築し,気候変動予測アンサンブルデータセットのバイアス処理済みデータを作成し,それらから6つのダムについて異常洪水時防災操作への移行が起こる確率を現在気候と将来気候(4℃上昇)に対して定量的に評価することに成功した.これは,研究計画に上げた3つの目標のうちの一つである「ダムの異常洪水時防災操作に関する問題」についての解答が得られたことになる.加えて,異常洪水時防災操作というダム操作における最悪の状況を回避するために必要となることについての検討も行い,現在のダムの構造において現実的に実施可能な操作方法の提案とそれらによる異常洪水時防災操作の回避可能性を定量的に評価することにも成功した.また,それでも避けられないケースがあることも分かったが,その発生確率は非常に低いことや,上述の操作を加えることで避難に必要とされる5時間程度のリードタイムを稼ぐことが可能であることも明確になった.また,ダムの操作の結果としてダム放流量が決定されるが,それらによりダムの下流で発生する氾濫がどのような規模で起こりうるかについて,ダム放流量のみでなく支川の流量を加味した解析を行い,より現実的な評価を行うなど,現状想定できる将来予測としては信頼性が高い評価を実行できたと考えている.以上より,進捗としては順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに完成しているモデルを用いて,研究計画で上げた他の2つの目標である,「ダム事前放流に関する問題」と「非出水期洪水に関する問題」にアプローチしていくことを考えている.非出水期の洪水発生については,現状のモデルで評価可能ではあるが,分布型流出モデルを用いるなど,より信頼性を高い評価手法へのバージョンアップも検討したい.加えて,d4PDFの5km解像度バージョンの適用も検討し,解像度の違いによる結果への影響を評価したい.
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