研究課題/領域番号 |
22K18841
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分23:建築学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
海野 聡 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00568157)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 古代 / 石窟 / 東アジア / 組物 / 貫 / 両層闌額 / 薬師寺東塔 / 平等院鳳凰堂 |
研究開始時の研究の概要 |
古代東アジアの建築技術伝播では、中国大陸から朝鮮半島経由の北方のルートが想定されており、貫をはじめとする南方系の技術は現存建築の分析から中世の東大寺再建の大仏様の導入以降という固定概念が形成されてきた。一方で、小建築や建築を象った出土遺物・石窟や絵画からも建築情報を抽出することが可能であり、考古学的・美術史的視点により現存建築にはない特徴の抽出が可能である。それゆえ考古学・美術史的手法の導入により、貫の観点から技術伝播のルートを再検討し、古代から中世の東アジアの建築技術伝播史の再構築を目指す。
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研究実績の概要 |
現存最古の木造建築である法隆寺をはじめとする日本の古建築や発掘遺構・出土遺物等から古代東アジアの建築技術の伝播が活発であったことが知られている。しかし現存見地の数は限られ、その実態は明らかではない。いっぽうで、木造の小建築、木造建築を模した瓦塔などの小建築、墳墓の木造表現は豊かな情報を持っている。本年度は、これらからどの程度、実際の木造建築の上部構造を知ることができるのであろうかというテーマをもって研究を進め、国際学術会議を開催した。 抽象化され、上部構造の情報が捨象された対象から解釈するのであるから、そこには幅があるのが当然である。東アジアの建築技術の観点から捉えると、建築を表彰した造形物や描写は、建築の情報化であるから、現物の移動の難しい建築の技術伝播において、抽象・捨象の過程をうかがう一つの材料ともなる。それゆえ、国際学術会議では、おもに考古資料を取り上げ、共通する史料群にもとづきながら、多様な解釈がありうる実態を示し、史料解釈の幅を捉えたい。そして、史料そのものの表象としての側面の限界を踏まえたうえで、その有効性の可否、そしてその際には技術伝播における情報媒体としての可能性も見えてくる。これらの建築技術の伝播と情報化について、東アジアの視点から検討し、建築表象に関する東アジアの研究の立ち位置や課題をあきらかにした。 また法隆寺の建築細部を中国の建築表現と比較することで、古代建築の技術伝播に関する新たな視座を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国の渡航のハードルから、現地調査に関しては、不足する部分も否めないが、東アジアの建築表象に関する国際研究集会を2年度目に開催することができ、課題や成果がクリアになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、建築史において、考古学や美術史の視点を取り込むことを研究手法の一つとしているが、文字資料に関しても、やはり重要な情報源であることが、あらためて明らかになってきている。そのため、古代日本の辞書や造営関連の史料の分析を通して、建築の言語による表現を「窓」や「建具」を中心に考察する。同様の研究視座をもつ中韓の研究者らの協力を得て、各国の状況を比較検討し、研究手法の有効性を検討する。 建築表象や図化に関する日中の国際研究集会を開催し、各国の史料の遺存状況や課題を明らかにする。また、これらの成果を国際研究集会を開催することで、議論の上、成果をまとめていく。また国際研究集会に合わせて、中国の建築表象や現存建築、考古遺跡のフィールd調査をおこない、情報収集に努める。 これらをもとに、貫やその他の建築技術の伝播について、総合的な検討をおこない、東アジアの視点での建築技術伝播史の構築、および建築史学に考古学・美術史の観点の導入、の2点による挑戦的な研究としての意義を示してきたい。研究の成果は、各発表者や資料公開の制限がを踏まえる必要があるが、国際研究集会に合わせて、予稿集や報告集などの形でとりまとめ、公開していきたい。
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