研究課題/領域番号 |
22K18848
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分23:建築学およびその関連分野
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
塩屋 晋一 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80170851)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 自然循環型材料 / 木質構造 / カーボンニュートラル / ハイブリッド部材 / 長期性能 / 高温環境 / 高湿度環境 / 曲げ強度 / ハイブリット部材の特性 / 熱膨張係数 / 木の収縮と膨張 / 木の複合材材としての特性 |
研究開始時の研究の概要 |
建築分野では大量の二酸化炭素を排出してきた。今後は構造部材を、二酸化炭素の吸収を伴う自然循環により生み出される木質材料に転換させる必要がある。既存の木質構造では限界がある。木材(集成材)に、鋼材や繊維強化プラスティク材などの異素材を接着して、硬さと強さを増大させる木質ハイブリット軸材(梁,柱)が考えられる。申請者は、これまでの研究成果に加えて木の内部構造と、木の成長過程を考察して「木材はハイブリッド軸材の母材として、熱膨張率や木の含水に伴う収縮の影響を、柔軟に吸収する特性を備えていること」を発見した。本研究は、その発見を実証する。実証されると今後の木質ハイブリッド部材と、その構造の礎になる。
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研究実績の概要 |
科学的発見「木材はハイブリッド軸材の母材として、熱膨張率や木の含水に伴う収縮の影響を、柔軟に吸収する特性を備えていること」を実証するために縮尺1/3のハイブリッド軸材の鉄筋集成材の梁の加力試験を実施している。2022年度は、電気炉内に梁を設置して加熱により、高温で湿度が低下した環境で、鉄筋集成材の梁の力学的特性を明らかにした。2023年度(昨年度)は、その曲げ剛性、曲げ降伏モーメント、曲げ耐力を推定する式を構築して、国際会議で発表して日本建築学会構造系論文報告集で発表した。さらに、実験室の成り行き温度で、湿度のみを強制的に低下させる環境での梁の力学的特性を明らかにした。この環境でも、梁の内部のひずみは想定とおりの挙動を示していることを確認でき、その曲げ剛性、曲げ降伏モーメント、曲げ耐力も、前述の開発した推定する式により、ほぼ推定できることを確認でき、現在、論文としてまとめている。下記に現時点で明らかになっている事項を記す。 1)鉄筋を補強材料とする鉄筋集成材の梁と一般の集成材の梁を、2023年6月から2024年2月の8か月間において、室温は実験室の成り行きの温度の環境として湿度のみを70%を20%に強制的に低下させる環境下において、曲げ剛性と降伏強度および曲げ耐力を明らかにして、両者を比較して湿度すなわち木の含水率を低下させた場合の曲げ剛性と降伏強度および曲げ耐力の変化を明らかにした。 2)曲げ剛性は木の含水率の変化の影響をほとんど受けない。 3)曲げ耐力は木の含水率の減少に伴い、低下する傾向があり、内部応力の影響を考慮する必要がある。 4)比例限界に相当する曲げ降伏モーメントは、その熱膨張係数の違いの影響を受けて、温度が上昇すると低下することを明らかにし、その降伏モーメントは既に提案している推定式でおおむね推定できることも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温度が上昇して湿度が低下する場合の鉄筋集成材の曲げ剛性と曲げ降伏モーメントおよび曲げ耐力の推定式を提案して、論文等で発表した。さらに、湿度が低下することにより木の含水率が低下する環境の鉄筋集成材の曲げ剛性と降伏曲げモーメントおよび耐力を明らかにした。本研究の主目的であった科学的発見「木材はハイブリッド軸材の母材として優れた特性を備えている」の問いに対する検証データは入手できたことになる。 当初の予定より順調に実験を遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
1)湿度と連動する木の含水率の低下に伴う場合の梁の曲げ剛性と曲げ強度の評価方法を整備して、設計で用いる方法を提案する。 2) 本研究の主目的である科学的発見「木材はハイブリッド軸材の母材として優れた特性を備えている」の問いに対する検証データは入手できたので、それらのデータに基づき、解析モデルを構築して、木のせん断剛性の特異な値が、その優れた特性を生み出すことを理論的に証明し、論文で発表する。
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