研究課題/領域番号 |
22K18849
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分23:建築学およびその関連分野
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
久田 嘉章 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (70218709)
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研究分担者 |
久保 智弘 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (80601898)
村上 正浩 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (90348863)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 複合災害 / 土砂災害 / 水害 / 建築物の被害調査 / 2021年熱海市土石流災害 / 2020年熊本県球磨川水害 / 2023年トルコ・シリア地震 / 2024年能登半島地震 / 耐複合災害建築 / マルチハザード / 耐震・耐火・耐風・耐雪建築 / 耐水・耐土砂・耐火山噴火建築 / レジリエンス性能 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、建築物における従来の災害対策である耐震・耐火・耐雪・耐風の対策に加えて、耐水・耐土砂・火山噴火等によるマルチハザードに有効な耐複合災害建築の実現化に向けた基礎的な調査研究を実施する。そのために、近年に水害や土砂災害で被災した地域(熊本県人吉市・球磨村や長野県・長野市の水害、静岡県・熱海市の土砂災害まど)による現地調査を行い、かつ土石流などのシミュレーション解析を実施し、1) 複合災害情報の統合化と有効活用、2) 建築的対策の整理・検証、3) 統合的リスク評価手法の開発、の3つを課題を水害や土砂災害の研究協力者と連携して実施する。
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研究実績の概要 |
本研究は水害・土砂災害による建築物の被害調査を実施し、従来の耐震・耐火対策に加えて、建物に想定される各種災害に有効な対策を組み合わせ、それによるレジリエンス性能を評価し、複合災害による被害を効果的に低減する耐複合災害建築の実現化を目的とする。2023年度は、土砂災害と水害の実態調査の結果の分析とシミュレーション解析を実施した。一方、2023年トルコ・シリア地震では活断層帯地震による強震動と大規模な地表地震断層の断層変位による建物被害が発生し、さらに2024年能登半島地震における地震動・津波・液状化等による甚大な複合災害が発生したため、申請者らは両地震の現地調査を実施した。まず土砂災害としては、2021年熱海市伊豆山地区の粒子法による土石流シミュレーション解析を行い、146棟の建築物の被害調査結果の再現を試みた。その結果、土石流の流下現象と建物の構造別の被害の再現をほぼ再現することが可能となった。一方、水害では2020年熊本県球磨川水害による人吉市と球磨村にて被害調査結果による700棟を超える建築物のデータと、東京理科大学・二瓶研究室が実施した洪水シミュレーションによる浸水深と流速データをもとに、建物の構造・築年別の被害関数の構築を試みた。一方、2023年トルコ・シリア地震では活断層帯地震による強震動と大規模な地表地震断層による断層変位が発生し、複合災害による甚大な被害が発生したため、申請者らは建物被害の現地調査を実施した。さらに2024年能登半島沖地震では強震動と津波・液状化などによる甚大な複合災害が発生したため、申請者らは関係者と協力して現地調査を実施し、貴重なデータを収集した。これらの成果は日本建築学会、日本地震工学シンポジウム等の関連学会にて公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土砂災害では、2021年熱海市伊豆山地区の土石流と対象として、新たに開発した粒子法による土石流シミュレーションが可能となった。前年度に146棟の建築物の被害調査を実施しており、数値シミュレーションにより土石流と被害の再現がほぼ可能となった。一方、水害では前年度に2020年熊本県球磨川水害による人吉市と球磨村において被害調査を実施し、700棟を超える建築物のデータを収集した。このデータを用いて、耐震対策(築年や構造、階数など)の有効性や限界を分析すると同時に、東京理科大学・二瓶研究室が実施した洪水シミュレーションによる浸水深と流速データをもとに、建物の構造・築年別の被害関数の構築中である。さらに2023年トルコ・シリア地震では活断層帯地震による強震動と地表地震断層の断層変位による複合災害、2024年能登半島沖地震では強震動と津波・液状化などによる複合災害が発生したため、申請者らは現地調査を実施して貴重な建物被害データを収集することができた。この結果を現在分析中であり、様々なハザードに対して効果的な耐複合災害建築に向けた貴重な資料を得ることができた。対外的にも日本建築学会や日本地震工学シンポジウム等の関連学会にて公表することができた。さらに参加研究者に加えて、研究協力者として土砂災害の専門家である安田教授(東京電機大)、水害の専門家である田村客員教授(千葉大)、二瓶教授(東京理科大)らと研究会を開催し、土石流と洪水による調査結果とシミュレーション結果との比較検討などの成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
土石流と洪水被害に関しては、2021年熱海市伊豆山地区土石流災害と2020年熊本県球磨川水害(人吉市・球磨村)での調査結果と並行して、数値シミュレーション結果とも比較検討し、有効な建築・まちづくり対策に関する知見を最終成果としてとりまとめる予定である。さらに対象の調査地域では現在でも復旧対策が進行中である建築物のハード対策に加えて、避難計画や復興計画など、生活再建から復旧・復興に向けた進捗状況を調査しており、複合災害に有効な建築・まちづくりに関する知見もまとめる。一方、2023年2月トルコ・シリア地震では震源近傍の強震動に加えて、断層変位による建築被害と効果的な対策に関する知見をまとめ、さらに2024年1月の能登半島地震では、強震動と津波、液状化による建物被害と対策に関する有益な知見を得ることができた。これらの成果から有効な建築・まちづくり対策の知見をとりまとめ、日本建築学会や地震工学シンポジウム等の関連学会にて発表を行う予定である。
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