研究課題/領域番号 |
22K18857
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分24:航空宇宙工学、船舶海洋工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松岡 健 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40710067)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | 電気浸透流ポンプ / スラスタ / 超小型衛星 / RCS / 過酸化水素 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、超小型衛星ミッションの多様化が加速度的に進んでいる。故に、ジェット推進による姿勢制御系(Reaction Control System、RCS)の小型高性能化が求められている。 本研究では、電気浸透流ポンプ(EOP)と過酸化水素を組み合わせたEOP駆動型推力可変スラスタによって目的を達成する。EOPをRCSに応用した場合、低い消費電力での1MPa程度の高い吐出圧、印可電圧による推力可変、可動部が存在しないなど、これまでのRCSの概念を変革する潜在的強みがある。本研究期間において、本RCSの成立性と優位性を示し、ブレッドボードモデルの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
電気浸透流ポンプ(EOP)は、多孔質セラミック材の両端に電界をかけることで流体が輸送される「電気浸透流現象」を利用したポンプである。EOPは機械的可動部がなく、1MPa程度の高い吐出圧を得ることができる。また、電圧を制御することで流量を制御することが可能である。これらの特徴から、EOPを用いた超小型人工衛星用スラスタは、従来のスラスタで必要であった剛直な加圧系を排除した単純なシステムで推力制御を実現することが可能であり、超小型衛星の高精度姿勢制御を実現する。 当該年度までに、EOPを用いた水および過酸化水素の送液、およびそのモデル化を完了した。その結果、印加電圧20~140Vに対して、体積流量が線形増加し、5~50μL/minの広い範囲での流量変化を確認した。加えて、過酸化水素と白金触媒を用いた1液式EOPスラスタの作動実証試験を実施し、燃焼器内圧の上昇(推力の発生)を確認した。しかしながら、EOPの送液流量とノズルスロート直径のミスマッチにより、間欠的な圧力上昇であった。本年度は、本課題を解決するため、EOPの大流量化を目指した多孔質セラミックス材の試作器を作成に特化して研究を進めた。具体的には、実証実験で使用した円筒セラミックス(直径3.3mm、長さ4mm)に対して、最大直径15mmおよび最大長さ6mmである。 来年度、大型EOPを用いた流量試験およびEOPスラスタ作動試験を実施し、定常推力およびその推力可変を実証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目までに、EOPの基本特性である流量Qと押し圧Pとの関係(Q-P線図)を、純水および過酸化水素を用いた実験および理論解析から明らかにした。 加えて、小型EOPを用いたスラスタのブレッドボードモデルを製作し、真空チャンバー内での作動試験を実施した。実験の結果、過酸化水素の送液、白金との触媒反応、燃焼圧力の上昇を確認し、本実証試験にてEOPスラスタの実現可能性を見出すことができた。しかしながら、燃焼圧力が振動し定常推力を達成できていないため、来年度に取り組む予定である。 また、定常推力を実証するために必要な大型の多孔質セラミックスを試作した。 以上の3点から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の3つの課題に取り組む予定である。 1.試作した大型の多孔質セラミックスを用いたEOPを試作する。送液能力に大きく影響する炭素電極と多孔質セラミックスとの接触方法に着目し、メッシュ等異なる手法を試みる。 2.試作した大型EOPを用いた純水と過酸化水素の送液実験を行い、構築したモデルが成立することの確認、および炭素電極接触方法の有効性を検証する。 3.過酸化水素と白金触媒で作動する1液式EOPスラスタを構築する。真空環境下での作動試験を実施し、定常推力およびその推力可変能力を実証する。
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