研究課題/領域番号 |
22K18869
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分25:社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩井 一正 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (00725848)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
|
キーワード | 月面気象予報 / 気象レーダー / データ同化 / 太陽風 / 宇宙防災 / 太陽嵐 / 宇宙天気 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では月における天気予報を地球レベルで行うシステム開発に挑戦する。近年、月の有人拠点計画など月面が我々の社会の延長線上に見え始めた。月には地球のような高密度な大気や磁場が存在しないため、常に太陽から放出される電離した粒子の風「太陽風」に晒され、その変動によってもたらされる放射線によって生命や電子機器にとって危険な状態になる。 太陽風は電波を散乱する性質がある。そこで本研究では、独自の電波観測を用いて太陽風の散乱現象を検出し、そのデータを逐次データ同化の手法を用いて磁気流体シミュレーションに取り込むことで月面での太陽風変動の予測精度を劇的に向上させることに挑戦する。
|
研究実績の概要 |
本研究では月における天気予報を地球の天気予報レベルで行うシステム開発に挑戦している。近年、月の有人拠点計画など月面が我々の社会の延長線上に見え始めた。月には地球のような高密度な大気や磁場が存在しないため、常に太陽から放出される電離した粒子の風「太陽風」に晒され、その変動によってもたらされる放射線によって生命や電子機器にとって危険な状態になる。太陽風は電波を散乱する性質がある。そこで本研究では、独自の電波観測を用いて太陽風の散乱現象を検出し、そのデータを逐次データ同化の手法を用いて磁気流体シミュレーションに取り込むことで月面での太陽風変動の予測精度を劇的に向上させることに挑戦している。 太陽風は電波を散乱する性質をもつ。太陽系の外にある天体を観測中に地球と天体の間を強い太陽風が横切れば、天体からの電波が散乱によって揺らぐため、太陽風の通過を間接的に検知することができる。この原理は気象レーダーに似ている。宇宙には多数の天体が存在しているため、それらの電波の散乱から、宇宙全体に広がる太陽風の構造を把握することができる。 3年計画の2年目にあたる本年度は前年度に引き続き研究代表者が運用する独自の地上電波観測装置による太陽嵐の地上電波観測を1年を通して行なった。落雷による装置の停止期間があったが年間360日以上の観測に成功した。並行して、観測データを同化する磁気流体シミュレーション結果に含まれる誤差の評価手法の開発研究を行なった。その結果、太陽嵐の磁場パラメータに含まれる不定性を定量的に見積もることに成功した。加えて、前年度から継続して行ってきた観測データを即時にデジタル処理するソフトウェアシステムの開発を行い完成した。性能評価の結果当初の機能を有していることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、太陽風の地上電波観測を実施し360日以上データを取得することができた。このような観測を1年を通して毎日実施できているのは世界的に見ても本研究プロジェクトだけであり、価値の高い成果となった。 観測と並行して、磁気流体シミュレーションの誤差評価を行い、予測に含まれる不定性を定量的に評価することに成功した。 加えて、前年度から開発し今年度に持ち越しとなったリアルタイムでデータ処理するシステムが完成した。納入後に、当初より本年度に実施予定だった性能評価を行い、年度内に概ね評価を完了した。その結果、予定通りの性能を有していることが判明した。 以上より本計画は順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
データ同化処理のための準備とデータを即時にデジタル処理するソフトウェアの開発が完了したため今後は実際に月・地球環境で観測された太陽嵐イベントに対して太陽嵐の観測データを同化したシミュレーションを行い擬似的な予報実験を実施する。月面環境の観測は極めて限られるため、地球周辺で観測された太陽嵐イベントを用いた予報でシミュレーションと性能評価を行い、シミュレーション結果の月の座標を取り出すことで、月面の予報と同等の数値実験を得る。特に2024年に入ってから顕著な太陽嵐イベントが発生しているため、これらのイベントを優先して扱う予定である。
|