研究課題/領域番号 |
22K18879
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
梅津 理恵 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (60422086)
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研究分担者 |
木村 雄太 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10825847)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 磁歪定数 / 結晶磁気異方性 / スピン軌道相互作用 / 弾性異方性 |
研究開始時の研究の概要 |
磁性体が磁場を感じると伸縮する性質は「磁歪」と呼ばれる。大部分の磁性体が磁場印加方向に伸長して印加と垂直方向が収縮し(正の磁歪定数)、その結果全体として体積は保存される。しかしながら、中には磁場印加方向に収縮して垂直方向が伸長する磁性体もある(負の磁歪定数)。 電子軌道の縮退がスピンー軌道相互作用によって分裂し、その分裂した軌道とフェルミ面との位置関係によって磁歪定数の符号が変わる、と古くから解釈されている。科学技術の進展により電子軌道の直接観測が可能になってきている。本研究課題では、3dの電子構造を直接観測し、磁歪現象の電子論的解釈を根本的に見直すことを最終目標としている。
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研究実績の概要 |
磁性体が磁場を感じると伸縮する性質は「磁歪」と呼ばれる。大部分の磁性体が磁場印加方向に伸長して印加と垂直方向が収縮し(正の磁歪定数)、その結果全体として体積は保存される。しかしながら、中には磁場印加方向に収縮して垂直方向が伸長する磁性体もある(負の磁歪定数)。電子軌道の縮退がスピン-軌道相互作用によって分裂し、その分裂した軌道とフェルミ面との位置関係によって磁歪定数の符号が変わる、と古くから解釈されている。科学技術の進展により電子軌道の直接観測が可能になってきている。本研究課題では、3dの電子構造を直接観測し、磁歪現象の電子論的解釈を根本的に見直すことを最終目標としている。 本年度は昨年に引き続き、Fe-Gaの磁歪量増大を目的として、希土類元素の添加と同時にメルトスパン(急冷凝固)による配向制御も試みた。さらには、Fe82Ga18合金の粉末をガスアトマイズ法により作製した。 理論計算で指摘されていたように、La, Ce, Prの添加により、Fe-Gaの磁歪が増大する結果が得られた。また、それぞれの母合金を基に幅2㎜、厚さ20ミクロン程度のリボンを作製したところ、更に磁歪が増大することが分かった。組織観察の結果より、柱状組織が観られ、配向している傾向が伺われた。また、ロール回転速度(急冷速度)の違いにより、配向する方位が異なることも明らかになった。 アトマイズ法によって作製した粉末についてEDXで組成分析を行ったところ、母合金に近い組成であることが確認された。粉末形状評価装置にて寸法や形状を評価したところ、粒度分布のピーク値は約9ミクロン、円形度においても0.98がピーク値と高い値を示す粉末が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁歪定数が組成によって正から負に変わるFe-Ge系について試料を作製し、電子状態と磁歪定数の符号を決定する因子について明らかにすることを最終目標としているが、薄膜試料における磁歪特性評価方法を確立することと、磁歪特性に及ぼす格子膨張、ならびに組織形態との影響を明らかにするために、超磁歪材料の典型物質として知られているFe-Ga系から研究を行うこととした。昨年度に引き続き、Fe-Gaに希土類元素を一部置換した試料を作製し、磁歪特性評価を行っている。特に今年度は液体急冷法によりリボン試料を作製し、配向制御によってバルク体よりも大幅に磁歪量が増大する結果が得られた。ガスアトマイズ法によるFe-Ga粉末の作製は、当初は予定していなかったが、他に例を見ない研究に展開することが期待される。それらのことも含めると、研究概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
磁性体の3d電子軌道を直接観測し、磁歪定数の符号を支配する物理的因子を明らかにすることが研究の最終目標であるが、本申請課題では、その足掛かりとなる基礎データを蓄積することを計画している。そのために、組成によって磁歪定数が正から負に変化するFe-Ge合金に着目して研究を遂行する計画であった。しかしながら、超磁歪材料として知られているFe-Gaとの各種物性の比較検討が必須となることから、まずはFe-Ga合金の元素置換による格子定数の増大と磁気特性、ならびに磁歪特性の評価を行うこととした。そのために、Fe82Ga18二元系合金に加えて、希土類元素(Y, La, Ce, Pr)を添加したバルク体とリボン薄帯の試料について磁歪特性の評価を行った。今後はリボン薄帯において、急冷速度と配向度の関連性を明らかにする予定である。また、作製したFe-Ga粉末試料についてレーザー溶融を試み、異なるプロセスにおいて組織制御を試みることも計画している。理論計算の立場からの共同研究も進めてきており、Fe-Ga合金の磁歪特性に及ぼす第三元素添加効果と電子状態との関連性を明らかにし、次いでFe-Ge系へと研究を拡張していく予定である。
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