研究課題/領域番号 |
22K18882
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中島 章 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (00302795)
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研究分担者 |
石黒 斉 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 「次世代ライフサイエンス技術開発」プロジェクト, プロジェクトリーダー (00381666)
望月 泰英 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (30910179)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ウイルス / 希土類 / ヨウ素酸 / ポリマー / 非晶質 / 無機 |
研究開始時の研究の概要 |
非晶質ヨウ素酸セリウム塩は、暗所での有機色素を分解し、酵素たんぱく質を不活化する。本申請研究はこの材料の特性を極限まで高めることを目的とする。この目的を達成するため、①抗ウイルス活性を発現する機構を材料科学的に解明し、②抗ウイルス活性に及ぼす構造・組成の影響を明らかにする、そして③得られた知見を基に有機/無機ハイブリッド型の高性能抗ウイルス材料を創製する。本研究の成果は、ワクチン頼みの発想や体制からのゲームチェンジを促進し、人類の近未来の脅威であるウイルス関連被害への対策技術となる。
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研究実績の概要 |
令和5年度は前年度に暗所での抗菌・抗ウイルス活性の発現が明らかになったCe(IO3)4,Ce(IO3)3,La(IO3)3について、光励起反応の関与を検討した。Ce(IO3)4はCe4+ の高い酸化力により暗所でも色素分解活性や抗菌・抗ウイルス活性が高かったが、Ce(IO3)3とδ-La(IO3)3は紫外線照射下でこれらの活性が上昇した。これらの試料では、試料から溶出したCe3+ やIO3-イオンの300 nm以下の短波長の紫外線照射によって生じる光反応により、活性が上昇したことが明らかになった。さらに、溶出したイオンだけでなくバルクも紫外線照射で有機物分解活性が発現することが分かり、これはバンド計算から光触媒反応が寄与していることが考えられた。以上より、Ce(IO3)3とδ-La(IO3)3は暗所で菌やウイルスを不活化し、そこに紫外線を照射することで不活化された菌やウイルスを分解することができる可能性のある抗菌・抗ウイルス材料であると判明した。またこれらの物質とポリマーとの複合化を検討し、3種類の希土類ヨウ素酸化合物(Ce(IO3)4, Ce(IO3)3, δ-La(IO3)3)の粉体を水中に分散させて構成イオンを漏出させた。その水溶液にPVAを溶解してフローコートすることで、ガラス基板上にコーティング膜を作製した。得られたコーティング膜は可視光領域で一定の透過率を示し、ATR法で測定したIRにおいてIO3-の成分が確認された。コーティング膜には微小な析出物が観察され、その存在割合は内部より表面が多かった。Ce(IO3)3とδ-La(IO3)3を用いて作製したコーティング膜は、高い抗菌・抗ウイルス活性を示した。同様の結果はセルロース誘導体でも得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度当初の計画では、令和5年度は各種非晶質ヨウ素酸化合物の抗菌・抗ウイルス活性の発現に対しての光励起反応の寄与の程度の確認であった。しかしながら、実際にはその内容に加え、令和6年度に予定していたポリマーとの複合化まで検討が進んだ。その点では当初の計画以上に内容が進展したといえる。一方で昨年度計画していた、Y(IO3)3の評価については、試料合成の再現性を得るのに手間取り、昨年度は実施ができなかった(現在はこの課題は概ねクリアできつつある)。この点ではマイナスであったことから、全体としておおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、昨年度ペンディングにしていたY(IO3)3について検討を進め、合わせて昨年度明らかになった光励起反応の関与についても、メカニズムを掘り下げる。また同様の検討をZn, Cu, Mn等のヨウ素酸塩についても拡大していく。ウイルスは、脂質二重膜と糖タンパク質からなる膜状の構造であるエンベロープに覆われているインフルエンザウイルスのようなタイプと、エンベロープを持たずにカプシドのみからなるノロウイルスのようなタイプの2種類に大別されることから、それぞれのモデルウイルスを用いて、ISOに定められたフイルム密着法に加え漏出イオン接触法で評価を行う。併せて酵素タンパク質の不活化活性や活性酸素発生能を評価し、抗ウイルス活性の発現機構を明らかにする。ポリマーとのハイブリッドでは、温度や濃度に対するイオン漏出量を慎重に検討しつつ、ワックスエマルションについても検討を実施する。
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