研究課題/領域番号 |
22K18885
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北田 敦 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30636254)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 電解液 / スカンジウム / グライム / 常温電析 / 非水系金属電析 |
研究開始時の研究の概要 |
有価金属の回収とリサイクルが叫ばれているが、一方で鉱石などの原料から有価金属を生産するコストが高いものがある。本研究では生産コスト削減のための方法として、非水系金属電析の可能性を検討する。具体的には常温アルミニウム電析の経験をもつグライム系電解液をベースとして、アルミニウムとの合金を含むスカンジウムの電析挙動について調査する。塩化物系を中心に、塩の溶解度や電解液物性、電気化学挙動を明らかにした上で、電解液を電析試験に供する。
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研究実績の概要 |
スカンジウムは,イットリウムやランタノイドとともに希土類に分類される.金属スカンジウムは,アルミニウムに少量添加することで機械的強度や溶接性を飛躍的に高めるなど,大変有用な金属である.工業的に利用できる濃縮された鉱石が稀であることから,これまでその生産量はごく僅かであったが,近年になって他の金属の製錬残渣からより多くの酸化スカンジウムが得られるようになり、その利用拡大に期待が集まっている.しかし,現状の乾式プロセスでの金属スカンジウム製錬(酸化物から金属への還元)は,反応が高温で行われる、環境負荷が高いフッ素が用いられる等の課題を有しており、多角的な視点からのプロセス検討が必要である. 常温での電析は金属を還元する上で比較的安価な手法である.本研究では非水溶媒を用いたスカンジウム電析をとし,溶媒として安全性が高く安価で、かつ研究代表者が金属マグネシウムや金属アルミニウムの電析研究において豊富な経験をもつグライム類を用いて検討を行った。スカンジウム塩として,酸化スカンジウムからの合成プロセスが報告されている塩化スカンジウムを用いた. 昨年度は電析浴の探索に向けて,塩化スカンジウムのグライム溶媒への溶解を試みた.塩化スカンジウム単独での溶解試験の他,錯体形成を促進する可能性のある塩化リチウムを添加しての溶解試験を実施したところ,濃度は,最大0.3 mol dm-3程度であった.塩化スカンジウムと塩化リチウムの比率を変更しても溶解が確認されたことより,複数種の錯体の存在が示唆された.電気化学測定としてサイクリックボルタンメトリーを行い、還元電流を観測した。今後電析試験を進めるとともにグライム以外の溶媒にも探索を広げる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塩化スカンジウムのグライム溶媒(G1,G2,G3,G4,G5)への溶解試験において、単独塩の場合は難溶であったが、錯体形成を促進する目的で塩化リチウムを添加した場合,濃度は,最大0.3 mol dm-3程度となり、電解液として十分な溶解度が得られた.塩化スカンジウムと塩化リチウムの比率を変更しても溶解が確認されたことより,複数種の錯体の存在が示唆され、基礎データとしての有用性が認めらた.電気化学測定において還元電流が確認され、電析可能性が示唆された。以上の結果から概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
十分な溶解度が得られ、還元電流も観測された塩化スカンジウム・塩化リチウム・グライム系電解液について、長時間の室温電析試験を行うとともに電析物の相同定を行う予定である。また、安価安全な溶媒という観点から、尿素などのグライム以外の溶媒にも探索を広げる予定である。複数種の錯体の存在が示唆されたことから、合金電析の可能性を探るとともに、余裕があれば溶存化学種の解析も検討視野に入れる。
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