研究課題/領域番号 |
22K18886
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥田 浩司 京都大学, 工学研究科, 教授 (50214060)
|
研究分担者 |
平山 恭介 京都大学, 工学研究科, 助教 (70717743)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
|
キーワード | AlMgSi合金 / テンダーX線小角散乱 / 共鳴散乱 / XAFS測定 / tender X-rays / Mg absorption edge / AlMgSi alloys / ASAXS / XAFS / 異常小角散乱 / XAFS同時測定 |
研究開始時の研究の概要 |
X線では通常コントラストがほとんどつかない軽金属材料であるAl,Mg,Siを異常分散効果を利用して内部のナノクラスターの情報をX線散乱から求めると同時に、異常分散効果が使える波長では回折が起こらないために、クラスターなどの原子構造については回折の代わりに分光を同時に利用する新たな複合計測の実現を目指す。その手法を軽金属合金が熱処理の履歴によって示す複雑な組織変化、その結果としての力学的な性質の違いを説明するために利用する。
|
研究実績の概要 |
本年度はテンダー領域での定量共鳴散乱測定のシステム効率化と複数吸収端間での強度校正の定量化のためのシステム改良を進め、いくつかのAl-Mg-Si合金の熱処理条件についての試験測定を進めた。前期に計画していたSDDのSAXS装置へのマウントとテンダー領域での分光測定計測システムの立ち上げ評価については放射光施設の運転時間短縮の影響で実施できず、共鳴SAXS測定チャンバーを蛍光同時測定が可能なシステムに改造するためのSAXS装置改造、SDDポート取り付けとオフラインでのSDD動作確認などの準備をおこなった。 年度後期には軟X線のビームタイムが確保できたため、まず改造チャンバーでのMg,Al吸収端での散乱強度規格化(絶対強度変換係数)データの検討とSDD信号強度の確認、ならびにSi吸収端でのSDD測定試行をおこなった。Si/Mg比の化学量論的組成よりSi側にずれた2組成(組成比1:1~2:1)のモデルサンプルを利用し、MgおよびSiにおける規格化された散乱強度比からMgSiクラスターの組成を検討した。前年度に絶対測定によるMg吸収端での定量計測に成功した強度標準試料の安定性、再現性を確認するとともに、複数標準試料の作成による標準物質選定としての再現性についても検討をおこない、該当エネルギー領域での十分な試料作製に関する再現性や安定性に関する再現性について十分であるという結論を得られた。 次に本課題で重要なポイントである複数の吸収端での散乱強度の相互関係について標準試料を利用した散乱強度比の検討をおこない、MgSiクラスター組成に関する組成について従来顕微鏡法などによる文献で報告されているものとほぼ整合性のある結果が得られていることが確認できた。 一方SDDによるSi蛍光強度の計測については主成分であるAlの蛍光の影響を低減するための改良が必要であることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電気代高騰の影響で実験装置を設置、測定している放射光(PF)施設の運転時間短縮、運転期間変更などにより、比較的長時間の実験時間が必要な本課題の測定時間割り当てが得られない期間ができたため、全体計画が半年遅れとなった。特に装置立ち上げが関連する半導体検出器の動作確認などのインラインでの試験ができなくなった影響により全体計画がやや遅れている。複数吸収端での共鳴散乱強度比較については標準試料による強度校正はほぼ予定通り進んでいる。 一方、検出器(TOP-CCD)の初期からの問題として、ファイバーオプティクスとCCD表面との接続部の気泡発生問題はメーカーとの度重なる打ち合わせと改良でも目立った進展はなく、最終的に接続部へのグリース除去となり、この結果気泡発生によるビームタイム中の測定中止の頻度は大幅に減ったものの、実験ごとに必要な装置運送に伴うCCDダメージについて現在梱包の厳重化とともに影響を注視している。 全体計画については以上の状況であるため、最終年度でキャッチアップしたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度(最終年)では3つの吸収端での散乱強度および蛍光のふるまいに特徴的な信号パターンが期待される典型的な熱処理および組成の条件を2つ絞り込み、これについての定量解析によって本課題である共鳴散乱―分光複合解析の確立を目指すことを方針とする。これまでの2年間の装置改良を含む測定技術の前進により、共鳴散乱の部分についてはかなり効率的な計測が可能になった一方、その定量化には条件ごとにキャリブレーション含めて予備計測などの時間を十分とる必要が明らかになってきたためである。 前期についてはビームタイムがすでに確保されており、後期にさらにまとめに相当する実験測定の補足を予定している。
|