研究課題/領域番号 |
22K18907
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分26:材料工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西田 稔 九州大学, 総合理工学研究院, 特任教授 (90183540)
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研究分担者 |
赤嶺 大志 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (40804737)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 高温形状記憶合金 / 分散強化 / 非金属介在物 / 熱的安定性 / 高圧ねじり加工(HPT) / 3次元観察 / 界面剥離 / き裂 / 経時劣化 |
研究開始時の研究の概要 |
高温形状記憶合金(以下,HT-SMA)の基本系である第4族元素(Ti, Zr, Hf)と第10族元素(Ni, Pd, Pt)から成る等原子比近傍の組成の合金に適量の炭素:Cを添加してNaCl型炭化物の生成により分散強化を図り,高温環境下で安定した特性を示すHT-SMAの創製を目指す.非金属介在物として排除の対象となっていた炭化物を分散強化相に転換しHT-SMAの特性改善を図る研究は例が無い.高温強度を有するHT-SMAは作動時の機能維持と,高熱に曝されることが想定される防火・防炎に関連したセンサー・アクチュエーター等への応用が期待される.
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研究実績の概要 |
高温形状記憶合金(以下,HT-SMA: High Temperature Shape Memory Alloy)の実用化には使用環境下において経時劣化を起こさない熱的に安定な強化法の開発が不可欠である.本研究では,HT-SMAの基本系である第4族元素と第10族元素から成る等原子比近傍の合金に適量の炭素:Cを添加して生成するB2構造TiNiマトリックスと整合性が良好かつ熱的に安定な非金属介在物であるTiC,HfC等のNaCl型炭化物を分散強化相として利用し,高温環境下で強度低下を起こさないHT-SMA創製の可能性を探ることを目的とした.主な成果は以下の通りである. 開発合金として選定したTi-Ni-Hf-Cを溶製し鋳造材の組織観察を行い,マトリックスと良好な整合関係にあるTiHfCの晶出を確認した. Ti-Ni基合金中でのTiCの熱的安定性とTiNiマトリックス相との結晶方位関係の基礎的知見を得るために,モデル合金として選定した炭素と酸素の重量含有(C/O)比が1.0と1.5のTi-Ni-C合金を最終製品形状である0.3~0.5 mmの細線に加工し,SEM-FIBによるSlice and View観察を行い酸化物系介在物:Ti4Ni2OXと炭化物系介在物:TiCとマトリックスとの界面の密着性に着目した3次元像を構築して解析・評価し,後者の優位性を確認した. R4年度に高圧ねじり加工(以下,HPT: High Pressure Torsion)を施し,示差走査熱量分析によって非晶質化したC/O = 1.5のTi-51at%Ni結晶化開始・終了温度を測定し,それに基づき熱処理条件の決定を行い,各種電子顕微鏡による組織解析を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Ti-Ni-C合金においてTiCが安定に存在するC/O比を参考にしてTi, Ni, Hf, TiC粉末を素材としTi-Ni-Hf-C合金をアーク溶解した.組織観察の結果,介在物としてデンドライト状のTiHfCが確認された.透過電子顕微鏡観察と電子回折の結果,TiNiHfマトリックスとTiHfCには整合性の高い方位関係が認められた.また,高温長時間の焼鈍を施しても酸化物への遷移は起こらなかった.当初の予定ではこの合金についてHPT加工を実施する予定であったが,完了していない. C/O=1.0と1.5のTi-Ni細線を用いた3次元観察においては前者ではTi4Ni2OXとTiNiマトリックス界面では剥離が生じ,酸化物の分断やき裂の発生が頻出していた.一方,後者ではTiCとマトリックスの界面には剥離や亀裂の発生はほとんど認められず,断面減少率30%というTi-Ni系合金にとっては強加工といえる冷間伸線を経ても界面構造が安定あることが示唆された.この項目については概ね順調である. C/O = 1.5のTi-51 at%NiのHPT材ではマトリックスは非晶質化していたが,TiC介在物はデンドライト組織が崩れ粒状の形態で分散していた.DSC測定の結晶化開始,終了温度は各々350,420℃であった.この結果を基に熱処理を施したHPT材の結晶化・粒成長挙動,TiCとTiNiマトリックスとの方位関係等の調査を開始したところである. 以上より,当初の予定よりやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
C/O = 1.0と1.5のTi-Ni細線を用いた3次元観察をさらに進め,高分解能透過電顕観察を実施し加工に伴う界面構造の変化を調べる. C/O = 1.5のTi-51 at%Ni合金HPT材についてはTiCを核としたマトリックスの結晶化と引き続いて起こる粒成長挙動を詳細に観察する. Ti-Ni-Hf-C合金にHPT加工と熱処理を施し構造及び組織解析を行い,組織制御の可能性を探る.さらにTi-Ni-C, Ti-Ni-Hf-Cを高温長時間の等温焼鈍しTiCの熱的安定性を評価する.また,Ti-Ni-Hf-C合金より変態温度の高いTi-Pd-C合金については作動温度を想定した室温⇔600℃の温度時範囲で熱サイクルを与え特性構造・組織変化を明らかにする. 得られた成果を総括し NaCl型炭化物を分散強化相としたHT-SMAの創製指針を確立する.
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