研究課題/領域番号 |
22K18916
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
多賀谷 基博 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (20621593)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 水酸アパタイト / 生体鉱化作用 / 光機能アパタイトナノ結晶 / がん細胞の標的・可視・治療 / ナノ結晶表面サイト特異性の発現 / ナノ医薬品製造技術 / ナノバイオセラミックス / ナノバイオ材料 / バイオ機能ナノ結晶 / 水酸アパタイトナノ結晶 / 置換固定プロセス開発 / 微小がん組織の診断と治療の両立 / ナノバイオ材料合成技術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,「がん細胞に特異結合する標的薬分子」と「がん細胞の死滅を誘起する治療薬分子」を「がん細胞の可視化に最適な発光ナノ結晶」へ結集・固定する合成に挑戦する。具体的に,末端基にカルボキシレートイオン(CBLI)を2個もつ治療薬分子を「生体に安全な発光アパタイト(PHA)」のナノ結晶核のCaサイトへ配位させて核生成し,粒成長の際,末端基にCBLIを1個もつ標的薬分子をPHAナノ結晶の表面リン酸イオンサイトへ置換し,「2種類の薬分子が1つのPHAナノ結晶サイトへ固定化するワンステップ合成法」を開発する。
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研究実績の概要 |
『悪性腫瘍部位のみを安全にイメージング (可視) して治療する材料』 すなわち『がん細胞のみを標的として可視して治療する3つの機能を具備する生体に安全なナノ材料の創製』が強く望まれている。しかし,創製に伴う毒性の発現や薬効の低下の問題により実現していない。この実現のために,本研究では,生体の骨の鉱化でみられる『水酸アパタイト (HA) 結晶核のリン酸イオンサイト「Pサイト」に体液中の炭酸イオンが置換して核生成し,HAナノ結晶表面のCa2+イオンサイト「Cサイト」にコラーゲン分子末端のカルボキシレートイオン (COO-) が配位して粒成長し,最終的に炭酸イオンとコラーゲン分子の2種類がHAナノ結晶の表面サイトに固定されるプロセス』に着眼した。本研究では,この生体現象を液相マイクロ流路合成プロセスによって模倣・発展させ,1つのナノ結晶に3つの機能を結集するワンステップ合成法の確立を目的とした。 本年度は『生体安全性に優れた高輝度に発光するHA (PHA) ナノ結晶』の核生成段階で結晶核表面Pサイト へ『末端基にCOO-を1個もつ標的薬分子』を置換して核生成し,粒成長段階で『末端基にCOO-を2個もつ治療薬分子』を表面Cサイト (Ca2+,Eu3+) に配位させて粒成長させる『2種類の薬分子が1つのPHAナノ結晶表面サイトを特異的に認識して固定されるワンステップ合成法』について実施・考察した。 今後,がん細胞のみに本ナノ結晶が結合『標的』し,がん細胞のみをイメージング『可視』した後に,がん細胞のみを一重項酸素 (1O2) 生成によって死滅『治療』する応用原理についても実施していく予定にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のナノ結晶を一般的なバッチ法などで合成すると,核生成と粒成長が同時に起こり,2種類の薬分子を結晶サイト特異的に固定できない。ナノ結晶サイト特異的な固定特性を有効に発現させるためには,生体内の骨の鉱化プロセスにおいて,核生成と粒成長のタイミングが分離されている点が重要と考えられる。そこで,申請者は,液相マイクロ流路合成プロセスによって核生成場と粒成長場を分離した均一なナノ結晶合成プロセスを確立した。次いで,薬分子1種類をモノマー状にナノ結晶表面Pサイトのみに固定することに成功した。この合成プロセスの活用によって,PHAナノ結晶サイト種に応じた2種類の薬分子のワンステップ固定法も完成しつつある。以上より,おおむね研究計画どおりに順調に研究が進展しているものと判断された。
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今後の研究の推進方策 |
前年度のナノ結晶合成条件 (合成温度,流速,出発原料の各濃度) を調整し,ナノ結晶の結晶性・欠陥・粒径を制御し,ナノ結晶の表面サイトにおける「2種類の薬分子間」および「薬分子-ナノ結晶間」の相互作用を精微に制御する。これによって,「(1) がん細胞への結合に最適な葉酸分子のナノ結晶表面における分子占有率」「(2) 薬分子の固定に伴ったイメージングに最適なナノ結晶の発光特性 (発光帯と発光効率)」「(3) ポルフィリン分子の表面失活・濃度消光を抑制し,がん細胞死滅に最適な一重項酸素生成能」を実現し,各機能 ((1) 標的,(2) 可視,(3) 治療) を最適化する予定にある。
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