研究課題/領域番号 |
22K18926
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
大島 達也 宮崎大学, 工学部, 教授 (00343335)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | amine / extraction / CCU / carbon dioxide / separation / ion exchange / calixarene / pillararene / アミン吸収液 / 分子認識 / 二酸化炭素 / イオン交換 / カリックスアレーン |
研究開始時の研究の概要 |
二酸化炭素回収法の1つである化学吸収法は大量回収に優れるが,吸収したCO2を放散と吸収液の再生に加熱を要するため省エネルギー化が求められている。本研究では,Ca(II)に対して有機アンモニウムを選択的に認識するホスト分子を用いて新規なCO2吸収および再生プロセスを提案する。本系は,1級の有機アミンとCO2による重炭酸イオンと有機アンモニウムの生成,Ca(II)を充填したホスト分子によるCa(II)とアンモニウムの交換, 水中へのCa(II)放出に伴う溶液中での炭酸カルシウムの生成と沈殿からなる。本法によりアミン吸収液が非加熱で再生され,CO2は固体化され減容化と再資源化が可能となる。
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研究実績の概要 |
本研究では,カルシウムイオン(Ca(II))に対して有機アンモニウムを選択的に認識できるホスト分子を利用し,アミン吸収液の再生と炭酸塩精製を同時に達成する新規なCO2吸収および再生プロセスを開発する。 2023年度はホスト分子であるカリックス[6]アレーン酢酸誘導体(H6R)を合成し、アミン類の抽出特性を評価した。各種の芳香族アミンの抽出試験を行い、これらのアミン類が抽出剤によって抽出されること、抽出率がアミンの疎水性の序列と概ね一致することを確認した。加えて構造の類似するアミン類の抽出特性を比較した結果、1級アミンが対応する4級アンモニウムよりも抽出されやすいことが示された。検討した中で典型的なフェニルエチルアミンについて、抽出剤が1:1の化学量論比で錯体を形成して抽出していることが示された。これらの結果はクロロホルムを溶媒として調査された。次年度からはHPLCによる定量にて非ハロゲン系の有機溶媒中での抽出特性を調査するとともに、カルシウムとの交換反応について調査する。 さらに、アミン認識ホストとしてピラー[6]アレーン酢酸誘導体を新規に合成した。ピラーアレーンは2000年代に初めて報告された柱状の大環状ホスト化合物であるが、調査した限りカルボン酸系の誘導体の報告例がない。申請者らは合成ルートの工夫により本化合物の合成に成功した。得られた化合物によるアミン類の認識の特性としてアミノ酸エステルの抽出を検討した結果、高い抽出率が得られ、目論見どおりアミン類へのホスト化合物として利用しうることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの進捗のうち、特に優れた点として、アミン認識ホストとしてピラー[6]アレーン酢酸誘導体の新規合成に成功した点が挙げられる。ピラーアレーンを骨格としたカルボン酸系のホストは報告例が見当たらない。さらに、本化合物の合成ルートもH6Rなどの従来の類似化合物とは異なっており斬新である。これらの成果は学術的新規性が高いことから、今後は成果をまとめて高難易度の学術雑誌に投稿する計画である。 他方、H6Rによるアミンの抽出は、当初の期待通り各種の芳香族アミンに対する抽出特性を調査することができた。課題として、抽出試験はクロロホルム系で行われたことから、今後はより毒性が低い非ハロゲン系溶媒での抽出挙動について調査すべきである。さらに、次年度からはアミン類とカルシウムイオンとの交換反応について調査すべきである。 これらの研究成果を総合的に勘案すると、2023年度の進捗は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
H6Rによるアミン類の抽出については、調査するアミン類の範囲を拡張し、どのようなアミン類が抽出に適するかをさらに詳細に調査する。イオン交換反応に基づく逆抽出により抽出したアミンを再び水相に回収できるかについても確認する。また、実用性の観点から非ハロゲン系の溶媒におけるアミン類の抽出挙動について調査する。さらに、比較化合物と抽出能力を比較し、H6Rの環状構造と空孔径がアミンの認識に有効であるかを検証する。さらに、カルシウムイオンとの交換反応により、アミンを有機相に抽出するとともに、カルシウムイオンを水相に放出させられるかを検討する。 新規合成したピラー[6]アレーン酢酸誘導体については、類似の報告がないことから、各種のアミノ化合物へのホストとして広範な応用が期待される。幾つかの有機アミンや、アミノ基を有する生体分子を対象にピラー[6]アレーン酢酸誘導体による抽出試験を行い、ホスト分子としての有効性を評価する。非環状構造のモノマー化合物と抽出能力を比較し、大環状のホスト分子であることにより優れた抽出能力を示することを検証する。抽出における化学量論比をスロープ解析法などにより明らかにし、抽出反応を示す。イオン交換反応に基づく抽出であると予想されることから、pH制御により抽出したアミン類を逆抽出できるかを確認する。
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