研究課題/領域番号 |
22K18930
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
山本 勝俊 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (60343042)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 有機-無機ハイブリッド / 層状化合物 / バイオエタノール / 濃縮 / 親疎水性 / 有機ー無機ハイブリッド / 吸着 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、研究代表者が開発した有機-無機ハイブリッド型層状シリケート物質が持つ、水-エタノール混合物からエタノールのみを層間吸着するという特異な吸着能を利用し、低濃度バイオエタノールを高純度エタノールへと濃縮する新しいプロセスを開発する。層状物質の層間へのエタノール吸着挙動の追跡や濃縮前後のエタノール濃度の定量などの分析を通じて効率的なエタノール吸着・脱離条件を明らかにし、バイオエタノール濃縮効率を評価する。また、より高い性能を持つ新規材料の開発を並行して行う。この低コスト省エネルギー型濃縮プロセスの開発は、地域分散型の小規模バイオエタノール生産の実現に大きく寄与できる。
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研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者が開発した有機-無機ハイブリッド型層状アルミノシリケートKCS-11の特異な層間吸着能を応用し、低濃度バイオエタノールからエタノールを分離・濃縮する、新しい低コストプロセスを開発することを目的とする。その目的達成のため、2022年度の研究では、KCS-11のエタノール吸着挙動の詳細な調査、KCS-11を超える吸着性能を持つ新規物質の開発、実用化に向けた大規模合成の検討を行った。 KCS-11は10%水溶液からでもエタノールを選択的に層間吸着可能であることをすでに明らかにしているが、バイオエタノールは10%未満の濃度で得られることも多いため、より低濃度での吸着挙動を調べた。すると、KCS-11は8%エタノール水溶液からはエタノールをほとんど層間吸着しないことがわかった。アルコール発酵の廃熱利用を念頭に、吸着温度を50℃まで変化させながら吸着させたが、吸着温度の上昇に伴い層間吸着量は増加したものの完全には層間吸着は進行しないこと、5%以下の濃度では50℃でもエタノールを層間吸着しないことが明らかになった。 そこで、様々な有機シランを原料に用いて新規層状アルミノシリケート物質を合成し、そのエタノール吸着能を評価したところ、ビニル基で層間修飾された層状アルミノシリケート物質であるKCS-27が3%という非常に希薄なエタノール水溶液からでもエタノールを選択的に層間吸着できることを見出した。KCS-27では層間からのエタノール脱離も速やかに進み、室温、大気下でも2時間程度でほぼ脱離が完了することが明らかになった。 KCS-11、KCS-27ともに当初の10倍のバッチサイズでも結晶性良く合成できることも確認でき、今後、バイオエタノールを模した希薄エタノール水溶液を使った濃縮、分析が可能な体制を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に従い、まず研究代表者らが開発したKCS-11のエタノール吸着への吸着温度の影響を調べた。室温から50℃まで吸着温度を変化させたところ、吸着温度の上昇に従いエタノール吸着速度が上昇することがわかり、アルコール発酵の廃熱を利用することでKCS-11のエタノール吸着性能を向上させることができることが示唆された。一方で、吸着温度を50℃とした場合でもKCS-11は8%アルコール水溶液からエタノールを完全に層間吸着できないことが明らかとなり、10%未満の希薄エタノールの濃縮には新しい材料の開発が必要であると考えられた。そこで、様々な有機シランを原料に用いてKCS-11と同様の条件で層状アルミノシリケート物質を合成し、そのエタノール吸着挙動を調べたところ、ビニル基で層間修飾された層状アルミノシリケート物質であるKCS-27が3%という非常に希薄なエタノール水溶液からでもエタノールを選択的に層間吸着できることを見出した。層間吸着されたエタノールは室温、大気下で2時間程度でほぼ完全に脱離させることができることもわかった。KCS-27は当初の10倍のバッチサイズでも合成できることが確認でき、今後行う、模擬バイオエタノールのエタノール濃縮および回収物の分析を実施するための準備を整えることができた。 以上の理由から、本研究はこれまで順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により希薄エタノール水溶液からの選択的エタノール吸着を実現できる材料の開発に成功したため、今後はその新規材料からのエタノール脱離挙動を詳しく調べるとともに、模擬バイオエタノールを使ったエタノール濃縮を行う。まず、エタノールを吸着させたKCS-27からのエタノール脱離挙動をTPDやTG-DTAを用いて調べ、最適な脱離条件を明らかにする。次に希薄エタノール水溶液を用いてエタノールを層間吸着させたKCS-27からこの最適条件でエタノールを脱離させ、その蒸気をエバポレータあるいはトラップを使って回収する。得られたエタノールはガスクロおよび本研究費で購入したカールフィッシャー水分計により評価する。すでにKCS-27の大規模合成は可能となっており、脱離したエタノールを液体として回収および分析可能なサイズでの実験は可能となっている。これらの結果をもとに、小規模バイオエタノール製造に対して最も効率的な吸着・脱離プロセスのサイズや温度・時間等の条件を明らかにする。 上記と並行して、KCS-27の合成条件最適化の検討を行うとともに、新規材料開発も継続する。原料となる有機シランや母ゲルの組成、水熱合成温度を変化させながら新規物質を合成し、エタノール吸着・脱離性能の評価を行う。
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