研究課題/領域番号 |
22K18931
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分27:化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
高橋 宏信 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (00710039)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 培養肉 / ウシ筋細胞 / 配向制御 / 3次元組織 / 骨格筋 / 組織工学 / SDGs |
研究開始時の研究の概要 |
SDGs(持続可能な開発目標)に対する取り組みが注目を集める中、将来的な食糧危機に向けて、細胞培養技術によって食肉を生産しようとする、「培養肉」の生産技術が注目されている。組織工学技術を駆使して“本物”の食肉を家畜に頼らず生産するためには、①構造及び機能を含む医学的・生理学的にも生体を模倣した筋組織の作製、②それら成熟した筋組織の「食するに足りる」サイズへのスケールアップ、③大型筋組織の安定した供給体制、を実現する手法の確立が求められる。本研究では、組織工学技術を駆使してミクロ構造から組織サイズに至るまで高度に生体を模倣した“本物”の培養肉を作製する。
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研究実績の概要 |
本年度は、まずウシ筋細胞を内包するゲル成分の最適化を行った。これまで行ってきたヒト筋組織を作製する手法を参考にフィブリンゲルを採用し、ゲルに内包させる形で細胞を培養した。細胞の増殖や成長においてゲルの濃度条件が直接的に影響するため、ウシ筋細胞の組織化において最適な条件を検討した。その結果、ゲルに細胞を内包した後さらにゲル内で細胞が適度に増殖できるよう、これまで既往研究において用いてきたゲル濃度よりも低濃度の条件で培養することが有効であることがわかった。結果的に高密度に筋細胞を内包した状態で組織を形成させることができた。次に、ゲル内で増殖させた筋細胞を筋線維に分化させるため低血清培地での培養により分化誘導を行った。生体を模倣した配向構造をゲル内で形成させる戦略として、分化誘導時にゲルを一軸方向に伸展させる手法を試みた。様々な伸展率でゲルを伸展させ、その結果形成される筋線維の状態を顕微鏡観察したところ、最適な伸展率を見出すことができた。最終的に、ゲルを10%程度伸展させることでゲル内の細胞に異方性を認識させ、伸展方向に配向した状態の筋線維を形成させることに成功した。一方、筋線維の肥大化など、さらに高い成熟度を目指す必要があることも確認された。また、筋線維の成長に伴ってゲルが徐々に分解される様子が観察されており、次年度以降に検討する筋線維の高密度化に向けて有効に利用できる現象ではないかと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の最も重要な目標として、筋線維の配向制御をゲルの伸展によって実現することを揚げていた。実際のところ、ゲルに内包した筋細胞を分化誘導する際にゲルを伸展することにより、配向した筋線維を得ることができた。筋線維をさらに成熟化させる方法を引き続き検討する必要はあるが、当初の目標に関しては達成できたことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は配向した筋線維からなる組織の高密度化を実現するための手法について検討する。研究計画当初はこれを実現するためにフィブリンゲルを積極的に分解させて細胞成分の高密度化を実現することを考えていた。フィブリンゲルは分解を抑制するアプロチニンなどの化合物を培地に添加しないと分解してしまうため、これを逆手にとって筋線維形成後にあえてアプロチニンを除去することでゲルの分解を誘発させる手法を検討する予定であった。しかし初年度の研究成果において、ウシ筋組織の形成に伴いアプロチニン存在下においてもゲルが徐々に分解していく現象を見出したことから、これを有効に利用する手段についても併せて検討する。筋組織が崩壊しないようゲルの分解速度をコントロールする必要があるため、ゲル濃度や培養成分などの最適化な条件を検討する。また、初年度に確立した方法を応用してウシ筋組織のスケールアップを目指していく予定である。
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