研究課題/領域番号 |
22K18946
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菅原 康弘 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (40206404)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 光誘起力顕微鏡 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、物質表面の構造とキラリティーを原子分解能で観察可能な次世代の近接場キラル光学顕微鏡を開発すると共に、その原子分解能観察の条件を解明することにある。原子レベルでの物質と光との相互作用に関する科学は、学術的研究課題の宝庫である。本研究の成功により、従来の常識を覆す新しい物理現象や機能を発見できる。また、得られる知見は、光学材料開発での課題や化学センシングでの課題、キラリティーを選択できる化学合成での課題を解決し、さらにこれらの性能を向上させるための指針を与えてくれる。従って、本研究は、将来の環境・エネルギー・材料分野の発展を支える研究として必要不可欠である。
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研究実績の概要 |
キラリティーは、分子や結晶の構造が、その鏡像と重ね合わすことのできない性質であり、生化学的な過程に影響を与えるほか、創薬において極めて重要な役割を果たすことが広く知られている。これまで、物質近傍に局在する光(近接場光)を検出し、回折限界を超える近接場キラル光学顕微鏡を実現しようとする試みが行われてきた。しかし、先鋭化した光ファイバや金属探針を用いて近接場光を伝搬光に変換する方式では、原子分解能(0.2nm以下)での観察は困難であった。本研究の目的は、物質表面の構造とキラリティーを原子分解能で観察可能な次世代の近接場キラル光学顕微鏡を開発すると共に、その原子分解能観察の条件を解明することにある。そこで、以下の課題について検討した。 1)キラリティーの最適観察条件の理論的検討 キラリティーの測定は、円二色性分光法に基づき、右回りの円偏光と左回りの円偏光の応答の差より行う。キラリティーを高感度に測定するために制限している因子(キラリティーの力への変換効率や変位検出計の雑音など)を理論的に検討し、最適観察条件を求めた。 2)円偏光を変調する光照射系の実現 キラリティーを高感度に測定するため、右回りの円偏光と左回りの円偏光が交互に入れ替わる光照射系を実現した。 3)キラリティーを検出可能な光誘起力顕微鏡の構築 円偏光を変調した光で物質表面を照射し、カンチレバーの周波数シフトに現れる変調成分をロックインアンプで検出することにより、キラリティーを測定できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キラリティーの最適観察条件を理論的に検討した。具体的には、キラリティーを高感度に測定するために制限している因子を理論的に検討し、最適観察条件を求めた。また、キラリティーを高感度に測定するため、右回りの円偏光と左回りの円偏光が交互に入れ替わる光照射系を実現するとともに、キラリティーを検出可能な光誘起力顕微鏡を構築した。このように研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
1)キラリティーを測定するための試料準備 キラリティーを高感度に測定するため、探針による増強電場を用いる。試料として、絶縁性のNaCl表面上の銅フタロシアニン分子やペンタセン分子を取り上げる。 2)キラリティーの最適観察条件の実験的検討 キラリティーによる力を最も高感度に測定できる条件を実験的に検討する。キラリティーによる力は、カンチレバーの周波数シフトに現れる変調成分の探針・試料間距離依存性を数値積分することにより導出する。 3)近接場キラル光学顕微鏡の原子分解能観察の実証 銅フタロシアニン分子などのキラリティーの分布を原子スケールで超高感度・超高分解能に観察できることを世界で初めて実証する。また、分子がどのように撮像されるかを理論的・実験的に検討し、画像化機構を解明する。
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