研究課題/領域番号 |
22K18955
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
安田 賢二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20313158)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 脳型コンピュータ / 神経細胞ネットワーク / 構成的アプローチ / 論理演算処理解析 / 細胞外電位計測計測 |
研究開始時の研究の概要 |
記憶のみならず判断・創発を可能にする脳神経系の機能を理解することは、記憶障害や思考の機構の解明などの医療への貢献だけでなく、神経細胞ネットワークの「創発機能」を有するバイオコンピューティングの実現の可能性を秘めている。本研究は、これまで開発してきた細胞培養中にマイクロパターンを追加工できるアガロース微細加工技術と1細胞レベル細胞外電位計測計測技術を応用し、軸索・樹状突起の結合方向を完全に制御した神経細胞の最小ネットワークをバイオチップ上に構築し、これを用いて実際に神経細胞ネットワークがどのような情報演算処理を行うのか、またその細胞数・パターンや履歴現象による多様化を実際の計測で明らかにする。
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研究実績の概要 |
脳型コンピューティング技術は1)無保守で数十年に及ぶ安定した記憶・認知・判断力の維持、2)損傷時の自己修復、3)低消費エネルギー・耐電磁パルス(EMP)、4)創発などの能力を有する次世代コンピューティング実現の可能性を秘めている。さらに記憶障害や思考の機構の解明などの医療への貢献だけでなく、神経細胞ネットワークの持つ「メンテナンスフリー」「自己修復能力」「低消費エネルギー」「創発機能」などを有する生命システムの理解にもつながると考えられる。現在、神経細胞からのアプローチは海馬細胞・組織を中心とした「記憶」機構の解明に留まっており、神経細胞ネットワークを自在に構築した人工神経細胞ネットワーク演算回路の基礎的な原理検証には未だ世界のどこも成功していないのが現状である。本研究は、微小多電極基板上に神経細胞ネットワークを構築し、各神経細胞と電気的なシグナルの授受を可能にするオンチップ神経ネットワークプラットホームの開発を推進し、将来のシリコン系電子回路と神経細胞ネットワークが融合した新たなバイオコンピューティング系を実現する基盤技術の開発を目指すものである。 初年度となる今年度は第1段階として、①アガロース立体構造を用いた神経細胞ネットワークの構築技術、②神経突起の軸索分化技術と追加微細加工による軸索と樹状突起の一方向制御結合技術の開発を行い、次に述べる成果を得ることができた。①ネットワークの構築技術では、アガロース構造の最適な組成を見出し、交差する微細通路中で2次元に交差する2つの神経突起が互いに独立して配置できることを明らかにした。②神経突起の軸索分化技術も、神経細胞から伸長して最初に100um以上の長さに達した神経突起が軸索に分化することを明らかにし、アガロース追加微細加工を組み合わせて2つの神経細胞から分化伸長した軸索・樹状突起を方向制御して結合することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで神経細胞ネットワークを構築することが困難であった最大の原因は、神経細胞から伸長する2種類の神経突起である軸索(出力側)と樹状突起(入力側)が、伸長後に後天的に分化することからその配置を回路として予め組み込むことができなかったことにある。本研究では、われわれが開発した独自技術であるアガロース微細追加工技術を用いて、神経細胞培養中に各神経細胞から新調する神経突起の軸索・樹状突起への分化を確認しながら段階的に追加工をして結合・伝達方向を制御した神経細胞ネットワーク回路を構築する基礎技術の開発に成功した。以下に、2つの開発課題それぞれの達成成果を報告する。(1)細胞培養技術:基板上に薄く塗布した4%濃度のアガロース層に微細構造を組み込んで、神経細胞と神経突起の伸長が可能であることを確認した。さらに2つの神経細胞から伸長した神経突起を2次元平面上に互いを乗り越えて自在に複数の神経突起を神経細胞ネットワークの配線として配置できることを確認した。(2)神経細胞ネットワーク構築技術:神経突起が軸索に分化する条件を見出すため、アガロース微細構造を利用し、神経細胞から1本だけ伸長した神経突起の長さを制御したところ、伸長長さが50umに至らないところでは分化しないこと、伸長が100umを超えると100%分化することを明らかにした。また、1本目の神経突起が50umまでしか伸びない制限下で2本目を300umまで伸長させたとき2本目の神経突起が軸索に分化することも確認できたことから、軸索への分化誘導は、複数の神経突起の中で最初に100umを超えた神経突起が軸索に分化することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、第2年度も引き続き3つの課題(1)細胞培養技術、(2)神経細胞ネットワーク構築技術、(3)刺激・計測(演算)技術の開発を継続してゆく。特に(2)神経細胞ネットワーク構築技術:については、軸索への分化誘導を進める神経突起が1本のみ伸長する立体構造を2個直列に配置して、それぞれの神経細胞から伸長した神経突起が軸索に分化した後にアガロースの追加加工をして2つの神経細胞を軸索で結合して方向制御をした神経-神経接合を行う技術の確立を目指す。(3)刺激・計測(演算)技術の開発:については、緻密な刺激・応答を測定するためにパッチクランプ法を活用し、最小細胞ネットワークによる演算を進める。本研究では、神経細胞の刺激・測定に、電気生理学的手法として最も普及しているパッチクランプ法を用いるが、この手法では一般に最大でも3つのガラス微小電極を同時利用できるだけであり、また細胞に貫通穴を開けるため計測開始後の細胞の寿命は数十分程度に制限される。これらの課題を解決するために多電極アレイでの刺激・計測技術の利用も試みる。1細胞単位の多電極計測と1細胞のみに電極から刺激を与える手法についてはいろいろなアイデアを加えた改善が必要であるため、これらについても技術課題として取り組みたい。
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