研究課題/領域番号 |
22K18965
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分29:応用物理物性およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金澤 直也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10734593)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
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キーワード | キラル結晶薄膜 / スピントロニクス / 反対称的スピン軌道相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
導線を巻き付けたコイルは19世紀の最大の発明の1つとも言える。コイルの誕生によって、電磁誘導による発電、インダクタ、非接触充電や長距離通信といった様々な機能に繋がり、抵抗素子やキャパシタ素子と共に現在のエレクトロニクスを支える基盤素子を成している。コイルの電磁機能はらせん構造のキラルな対称性に由来している。抵抗やキャパシタは構成する物質中の量子状態を設計することで現代的な新しい機能が発明されているが、コイルはまだ古典的な構造のままである。本研究はミクロなコイルであるキラルな結晶構造に注目することで、コイル機能に量子物理の概念を導入し、新スピン機能物性「キラルスピントロニクス」を創出する。
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研究実績の概要 |
19世紀のコイルの誕生によって、電磁誘導による発電、インダクタ、非接触充電や長距離通信といった様々な機能が実現されてきた。コイルは、抵抗やキャパシタと同様に電気回路の基本素子として現代のエレクトロニクスを支えている重要な要素である。本研究は、キラル/ヘリカルな原子構造やスピン構造を利用して、コイルの機能に量子力学的効果を付与し、新しいスピントロニクス機能を生み出すことを目的としている。 初年度である2022年度は、主にキラルな結晶構造を持つFeSiにおける室温での電流による磁化スイッチング機能の室温動作の実現とヘリカルスピン構造の電流誘起ダイナミクスに由来したインダクタンスの微視的機構に対する実験的評価を行った。前者については、FeSiのエピタキシャル薄膜合成に成功し、(111)表面のキラルな対称性に由来して外部磁場なしでも決定論的磁化スイッチング機能を実現することができた。この物質設計指針を用いることによって、MRAMといった次世代不揮発メモリのデバイス構造を単純化できる可能性を示した。一方で後者については、高温(室温付近)で短周期らせん磁気構造を示すカゴメ格子磁性体において、磁性不純物サイトの導入によってどのようにインダクタンス応答の強度や符号が影響を受けるかを、小角中性子散乱実験を行うことで実験的に解明した。特に室温付近において共線的反強磁性スピン構造でも熱ゆらぎによって非共線的なスピンダイナミクスが生じ、インダクタ機能が発現することを示唆することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的であるキラル結晶薄膜合成に必要なエピタキシャル薄膜の合成に成功している。特に、基板選択によって(111)面成長が可能であることを示すことができた。さらにこのような結晶成長の対称性制御によって室温ゼロ磁場での電流誘起磁化スイッチング現象というスピントロニクス機能の重要な要素を実現できており、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
微細加工技術を用いてキラルな単結晶からマイクロデバイスを作製し、微小試料中に閉じ込められた磁気状態や電子状態を利用して、電気的制御が可能なスピントロニクス機能を開拓していく。またこれまでに確立した金属間化合物のエピタキシャル薄膜の合成条件を基盤として、キラリティの揃った単結晶薄膜合成に挑戦し、大面積で動作するスピントロニクス機能を開拓していく。特にキラリティ選択的結晶成長は未踏の領域であり数々の障壁が予測されるが、障壁の因子を実験的に洗い出し、少なくとも目的実現に向けた指針を提唱するまでに至りたい。
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