研究課題/領域番号 |
22K18986
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分30:応用物理工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 一成 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (40311435)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 原子層半導体 / バレートロニクス / バレースピン分極 / 励起子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究提案では、次世代エレクトロニクスとして渇望されているバレートロニクスにおいて、1)デバイス動作温度、2)高いバレースピン分極、3)極めて長いバレースピン分極保持時間、など乗り越えなければならない課題が存在する。その課題解決に向けて、原子層半導体ヘテロ構造において、バレースピン物理の理解を通して得られたストラテジーである、層間バレースピン励起子(荷電励起子)をその媒体として利活用し、機能的なバレースピントロニクスデバイスに向けた研究に挑戦する。
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研究実績の概要 |
本研究では、バレートロニクスに向けて打破が必要な技術的な困難を克服する方策として、異なる単層MX2(M=Mo, W, X=S, Se)をファンデルワールス力で積層したヘテロ構造(MoSe2/WSe2, WS2/WSe2)での特異なバレースピン分極状態を利用する事を着想し研究を進めた。これまでの研究から、バレースピン励起子(電子-ホール対)の電子-ホール(クーロン)交換相互作用が、分極緩和を引き起こす事がわかっており、その知見を利活用する。特に、電子とホールが空間的に分離し弱束縛した、ヘテロ構造(MoSe2/WSe2)での層間バレースピン励起子(荷電励起子)がこのような目的には最適ではないかと考えた。具体的な実験項目と成果は以下の通りである。 1)高品質ヘテロ構造(MoSe2/WSe2など)作製のために、乾式転写法とフォトリソグラフィ技術とを高度化し、狙った位置にグラフェン電極を施した電界効果トランジスタデバイスを作製が可能とした。これにより、ゲート電圧によるキャリア濃度変調における、より精度の高い光学実験が可能となった。 2)円偏光励起によるバレースピン分極の選択生成と光検出を行う実験セットアップを用いて、絶縁層を挟んだヘテロ構造(MoSe2/h-BN/WSe2など)において、2次元自由層間励起子が関与したバレースピン分極に起因する円偏光発光を観測することに成功した。さらに、時間分解測定から、そのバレースピン分極のダイナミクスの実験を行い、極めて長いバレースピン緩和時間を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、バレートロニクスに向けて重要なバレースピン分極の観測に必要となるデバイス構造を施した、二次元半導体ヘテロ構造の高度化を進めるた。さらに、励起子ポテンシャルを変調するために、意図的に絶縁層を挟んだヘテロ構造を作製し、2次元自由層間励起子からのバレースピン分極に起因する円偏光の観測できた事に加え、極めて長いバレースピン分極時間を得ることに成功した。また、実験的な観測のみならず、バレースピン分極の緩和ダイナミクスなどに関する物理の理解が進みつつあり、上記の判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降、本年度研究が進展した絶縁層を挟み込んだヘテロ構造(MoSe2/h-BN/WSe2)を対象として、ゲート変調によりキャリア濃度可変を通して、電子-ホール(クーロン)交換相互作用を制御した系においても研究を進め、さらに長いバレー分極時間が可能であるかどうかを検証する。
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