研究課題/領域番号 |
22K18987
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分30:応用物理工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高原 淳一 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (90273606)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 熱光学効果 / メタサーフェス / 非線形屈折率 / ミー共振器 / ホイヘンスダイポール |
研究開始時の研究の概要 |
バルク単結晶シリコン(c-Si)の非線形性は小さく、超短光パルスとシリコン光導波路により光電場を増強する必要があった。最近、我々はc-Siミー共振器の熱光学効果により非線形屈折率n_2がバルクより5桁増大する現象を見出した。 本研究の目的は本現象を用いて、波数整合が不要で低パワーの連続(cw)光で動作する全く新しい非線形光学素子を実現することである。電気双極子(ED)と磁気双極子(MD)を縮退化させたホイヘンスダイポール(HD)や四重極子を用いてQ値の高い完全吸収体を実現し、熱光学効果によりn_2をさらに増大させる。これにより高速光・光スイッチなどへの応用の基礎を築き、熱非線形光学を創生する。
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研究実績の概要 |
我々はシリコン(Si)ミー共振器をアレイ化した誘電体メタサーフェスにおいて、熱光学効果を利用した動的な光制御をめざして研究を行っている。昨年度は電気双極子(Electric Dipole :ED)と磁気双極子(Magnetic Dipole :MD)が縮退したホイヘンスメタサーフェス(Huygens' Metasurface: HMS)の縮退臨界結合(Degenerate Critical Coupling: DCC)の原理に基づいて完全吸体(Perfect Absorber: PA)を実現し、加熱の効率化を達成することで、これまでより1/10の低パワーでの光スイッチングの実証に成功している。しかし、光信号の波長と制御光の波長が同じであることから、加熱にともない吸収スペクトルの波長がシフトするにつれて、変調効率が低下する問題があった。今年度は、上の問題を解決するために、HMSにおいて信号光と制御光(加熱用)の波長が分離された構造を設計した。その結果、以下の結論を得た。 1)ED/MDよりも共振器への閉じ込め効果が強くQ値の高い四重極子(Quadrupole)に注目し、電気四重極子(Electric Quadrupole: EQ)と磁気四重極子(Magnetic Quadrupole: MQ)が縮退したEQ/MQ型のHMSを設計した。これにより制御光のみを短波長化し、ED/MDの担う信号光と波長分離できる。 2)波長分離に関連して、光吸収のおきる空間的位置が波長ごとに異なるフォトンソーターの機能を縦型化し、PAのメタ原子構造を小型化した。 3)楕円型ミー共振器アレイによるEQ/MQ型HMSを実際に作製し、吸収共振波長(450nm)が理論と一致することを確認した。次に、基板をヒーター加熱することにより吸収スペクトルにおけるED/MD信号光の強度変調を観測することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたメタサーフェス素子を実際に作製し、可視光域の透過・吸収スペクトルが理論と一致することを確認することができた。また、将来的に信号光を光通信波長の1550nmとするため、近赤外波長域用の高感度分光器を備品として購入し、近赤外顕微分光システムを構築した。以上のことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、デバイスの光による加熱を行う制御光と信号光の波長はどちらも592nmである。2024年度は光加熱をPAの共振波長である450nmへ短波長化し、制御光(加熱用)・信号光の波長をそれぞれ450nm、592nmと分離する。本素子を共同研究者の台湾国立台湾大学のShi-Wei CHU教授の研究室に送り、光・光スイッチングの測定実験を行う計画である。また、今後は信号光の波長を長波長化し、光通信波長(1550nm)にすることを目指す。
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