研究課題/領域番号 |
22K19019
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分33:有機化学およびその関連分野
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
斎藤 雅一 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (80291293)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 非結合性相互作用 / セレン / σ非局在電子系 / 単分子電気伝導度 / セレン原子官能基 / ジセレニド / 重原子 / 非局在電子系 / 高分子 / 電気伝導度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、重原子を導入し、炭素化合物では実現不可能な、結合の制約を受けない非結合性相互作用を利用した柔軟な構造変化を伴う電子の非局在化の機構を達成し、これを電気伝導に構造変化を伴う高分子化合物へと展開するための基礎学理とすることを目的とする。ベンゼン環の骨格炭素の全てにセレン原子を配置すると、そのセレン原子間で非結合性相互作用が生じる。この化合物の官能基を変換し、モノマーに相当する分子および高分子の合成を目指す。共同研究の実績のある研究協力者と共に、単分子電気伝導度および時間分解マイクロ波伝導度測定法を用いる。重原子により達成される高いエネルギー準位を利用した高い電気伝導度が期待できる。
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研究実績の概要 |
本研究では、重原子を導入し、炭素化合物では実現不可能な、結合の制約を受けない非結合性相互作用を利用した柔軟な構造変化を伴う電子の非局在化の機構を達成し、これを新たな電気伝導パスを有する機能性物質へと展開するための基礎学理とすることを目的とする。 今回、σ非局在電子系を有するユニットを拡張する試みとして、これまで用いていたジセレニド結合をその拡張のための架橋部位とする方法とは異なり、ビフェニルをプラットホームとしての拡張を試みたところ、ビフェニルユニットに最大で八つのヨウ素原子を導入することに成功した。そのヨウ素原子の孤立電子対がビフェニルの周縁部にσ非局在軌道を形成していることも明らかにした。また、σ非局在軌道とπ共役系の相互作用の構築を目的に、ペンタヨードおよび1,2,4,5-テトラヨードフェニル骨格に1,2,3-ベンゾトリアゾリル基を導入し、(σ+π)-混合非局在系の創製にも成功した。 六つのセレン原子官能基を有するベンゼンの単分子電気伝導度を測定したところ、セレン上の置換基がフェニル基の場合にはセレン原子が金基板に接着せず、フェニル基が接着することがわかった。一方、セレン上の置換基がメチル基のものを新たに合成してその単分子電気伝導度を測定したところ、セレン原子での接着が確認され、さらにセレン原子が少ない、即ちσ非局在電子系をもたない参照化合物の単分子電気伝導度と比較してはるかに高い電気伝導度が観測された。これは非結合原子間の相互作用が電気伝導パスに関与したことを示す意義深い結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重原子を導入し、炭素化合物では実現不可能な、結合の制約を受けない非結合性相互作用を利用した柔軟な構造変化を伴う電子の非局在化の機構の創成を目指している本研究において、六つのメチルセレニル基を有するベンゼンの単分子電気伝導度を測定し、非結合原子間のσ非局在軌道を通じた相互作用が単分子電気伝導度の向上に関与するという初めての現象の発見に成功した。 また、このようなσ非局在電子系の拡張を試み、ビフェニルユニットへのヨウ素の導入を検討したところ、最大で八つのヨウ素原子を導入することに成功した。 以上のような成果から、計画通りに研究が進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
セレン上の置換基がフェニル基のセレン六置換ベンゼンが金基板にフェニル基で接着したことを受け、今後の単分子電気伝導度の測定には、セレン上の置換基がメチル基のものを使う必要が生じた。そこで、今後はセレン上の置換基をメチル基に固定し、そのリチオ化およびジセレニド結合によるユニットの連結を検討する必要があろう。このリチオ化に成功しさえすれば、その後の様々な誘導体合成への展開は十分に可能である。
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