研究課題/領域番号 |
22K19021
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分33:有機化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
楠本 周平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (60737831)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | カルベン / ルイス酸 |
研究開始時の研究の概要 |
カルベンは6個の価電子を持つ中性2配位の炭素化学種である。一重項カルベンは同一の炭素原子上に空軌道と非共有電子対を併せ持ち、ルイス酸性/塩基性という相反する性質を同時に示し得る。N-ヘテロ環状カルベン(NHC)が報告されて以来、ルイス塩基としてのカルベン化学が急速に発展した。一方でルイス酸性カルベンの化学ははるかに立ち遅れている。本研究では極めて強いルイス酸性を示すと予想される『ジボリルカルベン』を発生させ、観測、単離、電子状態や反応性の調査を行う
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研究実績の概要 |
ホウ素二置換カルベンの発生、観測をおこない、さらにその高いルイス酸性を活かした反応性の探索も行った。 ホウ素原子が2つ置換した2配位中性炭素種ジボリルカルベンの前駆体として、フッ素および塩素が置換したカルベン等価体、カルベノイドの単離に成功した。さらにルイス酸によるハロゲン化物イオンの引き抜きにより、ジボリルカルベンの発生を核磁気共鳴分光分析により確認し、さらにホスフィンによる捕捉と強いルイス酸性の確認をおこなった。本成果について論文報告をおこなった。 この成果は、これまで主にルイス塩基として利用されてきたカルベンが強いシグマ-ルイス酸として働くことを示した成果であり、今後の反応剤、金属錯体における配位子としての利用が期待される。
さらに、ジボリルカルベンとカルコゲン単体との反応をおこない、ジボリルカルボニル化合物を経由する種々の反応をみいだした。これまで有機化学ではおもに酸素や窒素といったπ供与性のヘテロ原子が置換したカルボニル化合物が多く用いられてきたが、ホウ素を置換することによる特異な反応性により、新奇合成化学反応開発に貢献する成果である。 また、当初想定していなかった成果として、ジボリルカルベンとカルコゲン元素との反応において、ジボリルカルベン二量体である『テトラボリルエチレン』の生成を確認した。得られたテトラボリルエチレンはホウ素の空のp軌道が全てエチレンと共役しており、これまでに得られたことのない電子構造を有している。本化合物は電子不足オレフィンとして、電子受容体としての材料利用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目標としたジボリルカルベンの発生、観測を既に達成している。 さらに、カルコゲン単体との反応により、特異な反応性の開発と典型元素錯体としてのルイス酸性ジボリルカルベンの性質を明らかにすることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらにルイス酸性ジボリルカルベンの性質を明らかにするべく、23年度に達成した典型元素錯体の合成単離に加え、遷移金属元素錯体の合成にも着手する。 また同時に究極の目標である『遊離ジボリルカルベンの単離』に向けた検討もおこなう。
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