研究課題/領域番号 |
22K19022
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分33:有機化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩井 智弘 東京大学, 大学院総合文化研究科, 講師 (30610729)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | ロタキサン / 電極触媒 / 光触媒 / 有機無機ハイブリッド材料 / コバルト / イリジウム / シクロデキストリン / 配位子 / 遷移金属錯体 / 電子状態 / 被覆共役分子 / 遷移金属触媒 / 電気化学 / 有機合成化学 |
研究開始時の研究の概要 |
精密有機合成に有用な遷移金属錯体触媒では、配位子を介した金属中心の電子状態の制御が重要である。本研究では、電気化学的手法を用いて、金属錯体の電子状態をオンデマンドに制御可能な電極固定化触媒の創製を目的とする。電圧印可による金属錯体への直接的な電子効果を利用して、触媒活性の向上や特異な選択性の発現を目指す。本触媒設計法は、分子構造に依存した既存の方法とは異なり、電圧を触媒制御のパラメータとして取り入れる点が新しい。
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研究実績の概要 |
昨年度までに、ジフェニルアセチレン側鎖に導入したメチル化シクロデキストリンからなる[1]ロタキサン型アジド-ホスホン酸分子を合成し、これが金属酸化物担体の表面修飾に有効な足場分子として機能することを明らかにしている。本年度は、この足場分子が、メチル化シクロデキストリンによる被覆構造に基づきアジド基周辺に十分な反応空間を提供し、望まない分子間相互作用を抑制する一方で、末端アルキン分子との銅触媒Huisgen環化付加反応における表面アジド基の高い変換効率を実現することを見出した。こうした固体表面での分子挙動は、高表面積を有する単結晶酸化亜鉛ナノワイヤまたは電気伝導性を有する酸化インジウムスズを担体に用いて、フーリエ変換赤外分光法、原子間力顕微鏡法、サイクリックボルタンメトリー法により確認された。さらに、この足場分子の不均一系触媒としての有用性を、コバルト(II)クロリン修飾フッ素ドープ酸化スズ電極を用いた電気触媒的酸素還元反応と、イリジウム(III)色素増感白金-酸化チタンナノ粒子を用いた光触媒的水素発生反応で示した。いずれの反応でもメチル化シクロデキストリンによる共役部位の被覆構造が重要であり、メチル化シクロデキストリンに代わりエチレングルコール側鎖を有する非被覆型足場分子を用いた場合よりも高い触媒回転数を示した。これら結果をまとめ、国際学術論文誌への投稿準備を進めている。以上の知見は、金属錯体の電子状態をオンデマンドに制御可能な電極固定化触媒の創製に資するものである。
また、当初の研究計画とは異なるが、[1]ロタキサン構造を有する分子性金属錯体触媒の開発にも取り組み、その2,2'-ビピリジン型配位子が可視光駆動ニッケル触媒クロスカップリングに対して優れた性能を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発した[1]ロタキサン型アジド-ホスホン酸が、金属錯体-担体間の電子移動プロセスを含む有機無機ハイブリッド型金属錯体触媒の足場分子として優れた性能を示すことを明らかにした。また、当初の研究計画とは異なるが、[1]ロタキサン構造を有する2,2'-ビピリジン配位子を新たに設計・合成し、その電子的および立体的性質を活かして可視光駆動ニッケル触媒の高活性化に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
開発した[1]ロタキサン型アジド-ホスホン酸を修飾電極触媒の足場分子として用い、電圧印加に伴う金属錯体触媒の性能の変化を評価する。反応には、クロスカップリングやC-H結合ホウ素化などを想定している。また、高い導電性を有するグラフェンを用いた修飾電極触媒の創製にも取り組む。
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