研究課題/領域番号 |
22K19036
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分33:有機化学およびその関連分野
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
鈴木 克規 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 講師 (60455350)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 有機ホウ素化合物 / 空軌道 / 単結晶物性 / 単結晶 |
研究開始時の研究の概要 |
三配位の有機ホウ素化合物は、電子を受け取ることができる空の軌道を持つ。本研究では、有機ホウ素化合物の空の軌道が一次元に整列した結晶を用いて、一次元に相互作用した空軌道の性質について研究を行う。本研究で着目した有機ホウ素化合物は結晶中で分子間に空軌道どうしの相互作用があり、結晶サイズまで拡張した空軌道の相互作用をもつと考えられる。この拡張空軌道の性質の解明を行い、有機エレクトロニクス材料の新しい設計指針の探索に挑戦する。
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研究実績の概要 |
本研究は一次元に集積したホウ素空軌道の物性の解明を目的として研究を行っている。三配位の有機ホウ素化合物は三つの結合と垂直方向に張り出した空のp軌道を持つ。ホウ素化合物を空軌道の方向に積層させることで、空軌道が一次元に集積した集積空軌道が構築できる。一次元に積層した結晶構造をもつ有機ホウ素化合物であれば、この集積空軌道は単結晶のサイズにまで拡張する。この集積空軌道は高い電子受容性、電子貯蔵、電子移動経路になり得る。本研究では、この積層したホウ素p軌道に基づく単結晶サイズにまで拡張した一次元集積空軌道の物性を解明に挑戦する。本研究では、ある有機ホウ素化合物が、単結晶中で一次元に集積した空軌道を持つことを見出している。この単結晶中での物性の解明が本研究の概要となる。初年度である2022年度は、この有機ホウ素化合物について、良好な単結晶の育成条件の検討と、単結晶中の集積空軌道に対する電子の授与、還元剤による電子ドープについて研究を行った。本研究で着目している有機ホウ素化合物について、種々の溶媒中での結晶育成条件を検討した。その成果として長辺が数ミリメートルのサイズの単結晶を再現性良く得る条件を見出した。またこの再結晶条件では、極性のある溶媒を用いている。従って、得られた単結晶を用いて即座に化学還元などの電子移動反応を検討することができる。この単結晶中では、有機ホウ素分子の空のp軌道は分子間で一次元に集積している。この単結晶中での集積空軌道の電子受容性について知見を得る目的で、得られた単結晶について化学還元による電子授与についても研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、結晶中で集積した空軌道をもつ有機ホウ素化合物を用いて、一次元集積空軌道の電子物性の解明を行う。これまでの研究から、ある有機ホウ素化合物が、ホウ素の空軌道を分子間で重ねる特異な結晶構造をもつことがわかっている。この有機ホウ素化合物は単結晶中で、ホウ素原子と空のp軌道が結晶軸と平行に配列しており分子間で相互作用が可能な距離である。これらの事実は有機ホウ素化合物の空のp軌道が単結晶の対応する辺のサイズにまで拡張していることを示唆している。本研究では、結晶中における有機ホウ素化合物のp軌道のマクロな集積による物性発現の解明を行うこととしている。まずこの有機ホウ素化合物の単結晶の育成方法について研究を行った。その結果、最適化された条件で数ミリメートル以上のサイズをもつ単結晶を再現性良く得る条件を見つけることに成功した。分子のホウ素-ホウ素間積層方向のサイズが1ナノメートルに満たないことを踏まえると、ミリメートルサイズの単結晶中では、100万個以上のホウ素原子が空の軌道を集積して相互作用するように配列していると考えられ、集積したホウ素-ホウ素空軌道の物性を解明する上では十分なサイズであると言える。また本研究で見出した単結晶の作成条件では、ある程度の極性をもつ溶媒を使用することができる点でも興味深い。化学還元などにより電子の供与を行う上で、溶媒の極性は重要なファクターである。その一方で配位性の強い溶媒ではルイス酸性ホウ素への配位が起こってしまう。本研究で最適化した再結晶条件では、ホウ素への配位を行わず、かつ化学還元などの反応に耐えうる溶媒を用いるもであり、今後の様々な反応条件に適用することができる。この単結晶中で一次元に集積したホウ素空軌道の電子受容性について知見を得るため、この条件で育成した単結晶において様々な化学還元剤を用いた電子ドープについて研究を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、結晶中で集積相互作用したホウ素p軌道に由来する特徴的な物性の解明を目的としている。これまでに、ある有機ホウ素化合物が空のp軌道を分子間で相互作用することで集積する特異な結晶パッキング構造をもつこと、また極性溶媒中で数ミリメートルサイズの単結晶が容易に得られることがわかっている。今後の研究として、結晶中で一次元に集積した空のp軌道の物性解明を行う。三配位有機ホウ素化合物の空のp軌道は分子の状態でも一定の電子受容性をもつ。これが結晶中で一次元に集積し多数の相互作用することでどのように変化するのか、を本研究では明らかにする予定である。そこで本研究では極性溶媒中で作成した単結晶に対する化学還元を提案している。この化学還元については、これまでも予備的に検討を行ってきたが、これを今後も継続する予定である。化学還元剤は様々なものが知られており、その還元電位は多岐にわたる。これらの化学系還元剤を用いた反応について研究を行い、多数のホウ素分子の集積相互作用に基づく電子受容性について知見を集積する。また有機ホウ素分子がもともと電子受容性をもつことを利用することで単結晶に対する電子ドープを検討する予定である。本研究で対象としている有機ホウ素分子は強い還元剤の存在下でアニオンラジカルを与える。これを中性分子と共結晶化させることができれば、アニオンラジカルの電子が集積空軌道に非局在化した単結晶が得られると考えられる。上記の検討を行い、集積空軌道の電子受容性について研究を行う。またこの単結晶に対する電子授与は一次元に相互作用した軌道に対する電子ドープと言える。このドープによる導電性の変化など、単結晶由来の物性の解明を行う方策である。
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