研究課題/領域番号 |
22K19044
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
沖野 晃俊 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60262276)
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研究分担者 |
高松 利寛 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (10734949)
東海林 敦 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (90459850)
守岩 友紀子 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (80881515)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 大気圧プラズマ / 薬剤分析 / 質量分析 / 生体内薬剤分析 / 注射プラズマプローブ / 低温プラズマ / インバータ / 抗がん剤 |
研究開始時の研究の概要 |
抗がん剤などの薬剤が十分な効果を発揮するためには,治療対象となる腫瘍等の組織に適切な濃度で到達している事が重要である。しかし,これを実際の患者で確認する手段はなく,動物実験で摘出した検体のホモジナイズや組織切断面をマッピングして質量分析する事などで基礎研究が行われている。そこで本研究では,生体組織深部の薬剤を高い空間分解能でのリアルタイム分析を実現するため,15ゲージ程度の注射針に直径1mm以下の超小型大気圧低温プラズマとレーザーを内蔵した注射プラズマプローブを製作し,薬剤を注射針の残空間を通して体外に送出し,再度水素添加プラズマでソフトイオン化する事で高感度に質量分析する手法を開発する。
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研究実績の概要 |
抗がん剤などの薬剤が十分な効果を発揮するためには,治療対象となる組織に適切な濃度で到達している事が重要である。しかし,薬剤を投与した患者の組織内の薬剤濃度分布を直接確認することは困難である。そこで本研究では,注射針に大気圧低温プラズマとレーザーを内蔵した注射プラズマプローブを開発している。低温プラズマを生体組織に照射してその位置にある薬剤分子を気化させ,体外に取り出して質量分析する。 本年はまず,注射針に内蔵可能な小型プラズマジェットを製作した。このプラズマジェットは直径1.0 mmのガラス管の外側に螺旋状に電極を配置した直径1.5 mmのバリア放電型とした。プラズマ生成ガスとしてヘリウムを使用し,電極間に6.0 kV,16 kHzの電圧を印加することで安定なプラズマが生成できた。プラズマジェットの先端から2.0 mmの位置でのプラズマのガス温度は34.1℃であったため,人体に熱損傷を与えることなく照射できる事が示された。このプラズマジェットを14ゲージ(外径2.11 mm)の注射針内に配置し,安定したプラズマ生成を確認した。しかし,14ゲージの注射針は太く,患者の負担になるため,小型化を目的としてレーザーの併用も期待できる直径0.30 mmの中空光ファイバを用いて超小型のプラズマジェットを製作した。このプラズマジェットは直径0.70 mmであり,前述の装置に比べて約1/2の直径となった。その結果,16ゲージ(外経1.61mm)の注射針に,この超小型プラズマジェットと直径0.50 mmの薬剤吸引用チューブを内蔵したプラズマプローブを作製することができた。 この超小型プラズマジェットを用いて薬剤の分析を行った結果,プラズマ生成ガスに0.60 L/minのヘリウムを用いた場合に最も高い信号強度が得られた。 また,プラズマの強度を段階的に変調できるインバータ電源を製作し,3段階のプラズマ性を行い,発光強度と励起温度も3段階に変化することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
注射針は15ゲージ(内径1.47mm,外径1.81mm)に直径0.94mmのプラズマ発生部を挿入して使用する事を想定していたが,今年度は中空光ファイバを採用することで直径0.70mmのプラズマ発生部を製作できたので,注射針も想定よりも細い16ゲージ(内径1.25 mm,外経1.61mm)を使用する事ができた。また,薬剤の分析も順調に進んでいる。 そして,予定を前倒しして人体を模擬した試料の試作も行い,次年度の研究に向けた準備を行った。 さらに,インバータを用いて,プラズマの強度を3段階に高速変調できるプラズマ電源を開発し,基礎特性も測定した。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者らのこれまでの付着物分析では,プラズマ生成ガスに適切な量の水素を添加することで脱離試料に付与されるプロトンが増加するため,目的とする物質の信号強度が増加することが明らかとなっている。そこで本研究でも,プラズマ生成ガスに水素を混合する実験を実施する。また,脱離した試料は質量分析装置に送るチューブの内壁に付着する可能性がある。そこで,チューブの材質を変えて質量分析実験を行う。 次に,生体内に近い条件下で分析を行うため,コラーゲンや寒天中にグリペックやカンプトなどの抗がん剤や解熱剤等の様々な薬剤を均一の濃度で混合させた生体模擬試料を作製し,開発した注射プラズマプローブを用いて薬剤分析を実証する。
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