研究課題/領域番号 |
22K19047
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
蔡 徳七 大阪大学, 大学院理学研究科, 講師 (20273732)
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研究分担者 |
川俣 大志 北海道大学, 大学院教育推進機構, 特任准教授 (20415136)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 波長可変赤外レーザー / 微量ガス分析 / シクロヘキサン / アンモニア / 微差圧計測 / アセトアルデヒド / 新規ガス検出システム / 超微差圧検出 / 生体ガス / 赤外吸収法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では測定セル内に封入した分子が赤外レーザーを吸収し、光エネルギーを分子の並進エネルギーに変換させ、系内の圧力変化としてとらえて計測する新規高感度ガス計測システムの開発を目指す。特に、生理活性を示す数種類の分子をターゲットとして超高感度測定装置の開発を目指す。 測定装置を用いて呼気内に存在する分子種の定量分析を実施する。ガスの種類とその濃度を計測し、“分子の網羅的な濃度分布スペクトルパターンから病態診断への応用”を目指しす。本開発装置は赤外光を吸収する全ての分子に適用可能な汎用性を有し、将来的な生体ガス分析による病態診断法への応用を見据えている。
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研究実績の概要 |
本研究は極微量分子の定量分析を目指した新規ガス分析装置を開発することを目的としている。開発装置を用いてヒトが発する呼気を分析し、呼気中に含まれる各種分子の濃度分布を計測する。その濃度分布と疾病・疾患との相関を調べることで新規医療診断機器の開発を目指すものである。 測定原理は、ガスを封入したセルに赤外光レーザー光を照射し、分子が光を吸収した場合の系内の微弱な圧力変化を、微差圧計測系で観測するものである。前年度に開発した計測装置を用いてシクロヘキサン(50ppm)及びアセトアルデヒド(100ppm)の赤外吸収スペクトルの計測に成功した。同様にアンモニア(100ppm)濃度のガス分析に成功し赤外吸収スペクトルを決定した。 計測装置の感度向上を目指し、赤外レーザー光の強度依存性と出力信号強度の関係を調べたところ明確な比例関係が見られた。これは計測が一光子過程で進んでいることを示しており、本研究手法が有意に計測できていることを示している。一方で、レーザー光を反射ミラーを用いて多重反射させたところ、反射回数に比例して信号強度が上昇することが示された。これは高精度多重反射ミラーを設置し計測すれば計測感度を飛躍的に向上できることを示すものであり、今後、装置の改良を進める計画である。 一方で、本計測手法に関する理論計算を実施した。その結果、実験値は理論値に比べ2桁程度低い値となった。これは熱伝搬による影響が大きく関係していることを示しており、今後、セルの形状や温度制御等の改良により計測感度が飛躍的に向上できることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
微量ガス分析装置を試作し、生体内で重要な代謝産物とされるアンモニア(濃度50ppm)の検出と赤外吸収スペクトル計測に成功した。測定結果から、試作装置の計測感度は1ppm程度までの極微量サンプルの計測が可能であることが分かった。しかし、理論計算から見積もられた値よりも計測感度が低いことから、計測セルの形状など装置改良が必要であると判断した。現在、多重反射ミラーを設置し系内の分子吸収の確率を上昇させる等の改良を実施している。 同時に、ヒトを対象とした呼気分析を実施し、病態診断への応用を見据えた研究を継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
我々は赤外レーザー光を利用し分子が光を吸収することで測定系内の圧力変化を計測する装置の試作に成功した。試作装置を用いていくつかの分子種の同定に成功し、本研究手法が極微量ガス分析を可能にすることが示された。特にアンモニアなどの生体ガスとして重要とされる分子のスペクトル計測に成功している。しかし、生体ガス分析に必要とされるppbレベルのガス分析には至っていない。この問題を解決するために、今後多重反射ミラーを設置や計測セルの形状の改良などを行う。 更に今後、健常者の呼気を分析し、重要とされる数種類の分子の濃度分布を決定しライブラリー化する。その後、疾病を持つ患者の呼気と比較することで病態診断装置への応用の可能性を検討する。
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