研究課題/領域番号 |
22K19072
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
藤田 正博 上智大学, 理工学部, 教授 (50433793)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 柔粘性イオン結晶 / 固体電解質 / マグネシウムイオン伝導体 / 固相間転移 / 柔粘性結晶 / マグネシウム二次電池 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、3つの課題に取り組む。課題1:柔粘性イオン結晶(IPC)とMg塩複合体を作製し、相転移温度、イオン伝導度等の基礎物性評価を行う。課題2:得られたIPCおよびMg塩複合体の粉末X線回折測定により結晶構造解析を行う。イオン伝導性との相関について知見を集積し、構造最適化につなげる。課題3:開発したIPC/Mg塩複合体を用いて、Mgの酸化還元特性の評価を行う。さらに、電極にMg金属を用いてセルを作製し、充放電試験を行う。
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研究実績の概要 |
柔粘性イオン結晶(IPC)は可塑性を有する柔らかい結晶であり、熱・電気化学的安定性に優れ、イオン伝導性を示すことから新規固体電解質として期待される。今年度は、固体でありながら電解液の導電率に匹敵する高イオン伝導性IPCを開発することに注力した。まず、側鎖長の異なる2種類のピロリジニウムカチオン(エチルメチルピロリジニウムカチオン(P12)、ジエチルピロリジニウムカチオン(P22))と2種類のスルホニルアミドアニオン(ビスフルオロスルホニルアミド(FSA)、ビストリフルオロメチルスルホニルアミド(TFSA))を組み合わせた4種類のIPCを合成した。これらIPCにMg塩を添加し、IPCのイオン構造、およびMg塩濃度が固体電解質の諸特性に及ぼす効果を調査した。IPC/Mg塩複合体の相転移挙動、結晶構造、Mg塩解離度、電気化学特性は、アニオンの構造によって大きく変化した。FSA系IPC複合体はMg塩濃度の増加に伴い、アモルファス化した。TFSA系IPC複合体はMg塩濃度の増加に伴い融点が低下した。ラマン分光測定より、FSA系IPC複合体はMg塩の解離が促進され、TFSA系IPC複合体はMgとTFSA間でクラスターイオンを形成していることが示唆された。IPC/Mg塩複合体のイオン伝導度は、いずれの系においても、Mg塩濃度の増加に伴い向上した。サイクリックボルタンメトリーを行った結果、Mgの酸化還元挙動が観測された。IPC/Mg塩複合体は、Mgイオン伝導体として機能することがわかり、意義深い成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高Mgイオン伝導性IPC電解質を開発するため、4種類のピロリジニウム塩を合成した。諸特性に及ぼすカチオンのアルキル側鎖長、アニオン構造の効果を詳細に検討するため、それらピロリジニウム塩に所定量のMg塩を添加して、それら複合体の熱分析、インピーダンス測定、X線回折測定、輸率測定など計画通りに基礎物性を集積した。これら一連の測定結果から、高Mgイオン伝導性を有するIPCやMg塩の構造因子について知見を得ることができた。初年度に目標としていたイオン伝導度も達成したため、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
イオン伝導度に関しては、初年度の目標値を達成したものの、電解液のイオン伝導度と比較すると、まだ低く、さらに1桁以上の向上が必要である。さらなるイオン伝導度の向上には、IPC自身のイオン伝導性を向上させることが効果的である。マテリアルズ・インフォマティクスを用いて、材料開発を加速させる。さらに、Mg塩の種類も増やすことで、最適な組み合わせを探索し、電解液に匹敵する高Mgイオン伝導性IPC電解質を開発する。一方、初年度に開発したMgイオン伝導性IPC電解質を用いて、セルの作製に着手する。セルの充放電試験などを繰り返し行い、デバイス作製条件の最適化についても並行して進めることで、本研究を推進する。
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