研究課題/領域番号 |
22K19082
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
上野 和英 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30637377)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
|
キーワード | 弱配位性溶媒 / カチオン輸率 / イオン伝導性 / 濃厚電解液 / 液体電解質 / イオン伝導率 / 溶媒和 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、液体電解質中で意図的にカチオンの溶媒和状態を不安定化(溶媒和フラストレーション)させ、高活性なアルカリ金属カチオンを生成させる方法論を確立し、粘性に支配されずイオンホッピング機構によって高速イオン輸送が可能な新規液体電解質の創出を狙う。これにより、高いイオン伝導性、高いカチオン輸率、容易な電極/電解質界面形成が可能な高速カチオン伝導性液体電解質を開発する。
|
研究実績の概要 |
蓄電デバイスの高性能化は持続可能社会実現の一翼を担う重要な研究開発課題であり、高出入力密度の二次電池を実現するために、高速カチオン輸送が可能な電解質の開発が望まれている。従来の電解液中のカチオン輸送は溶媒和されたカチオンの並進運動によって行われ、系の粘性に支配される。本研究では、液体中での効率的なイオンホッピング輸送を実現するため、濃厚電解液中で意図的にカチオンの溶媒和状態を不安定化(溶媒和フラストレーション)させることで、高活性なアルカリ金属カチオンを生成させる方法論を確立する。これにより、液体中でも粘性に支配されない、配位サイト間ホッピング機構によって高速イオン輸送を可能とし、高いイオン伝導性、高いカチオン輸率、容易な電極/電解質界面形成が可能な液体電解質を開発する。様々な分子性溶媒のリチウムカチオンへの配位性について、NMR法によりGutmannのドナー数を見積もった。中でも、鎖状エーテル系溶媒の多くはドナー数が低い弱配位性溶媒に分類されることが分かった。鎖状エーテルからなる濃厚電解液は室温で1 mS/cm以上の比較的高いイオン伝導率を示し、0.7程度の高いリチウム輸率を示すことが分かった。さらに、分子動力学シミュレーションによって、様々な溶媒からなる濃厚電解液中でのリチウムイオン―溶媒間の配位寿命(residence time)を評価したところ、配位寿命とリチウムイオン輸率には良い相関があり、配位寿命が短いほどリチウムイオン輸率が高くなる結果を得た。すなわち、これらの結果は本課題で提案している「意図的なカチオンの溶媒和状態の不安定化(溶媒和フラストレーション」によって生成した高活性なリチウムイオンによる効率的なイオン輸送が行われていることを支持するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で提起した「意図的なカチオンの溶媒和状態の不安定化(溶媒和フラストレーション」の導入が効率的リチウムイオン輸送を示す電解液の創出に有用であることが実験・計算の両面から明らかになってきている。今後も用いる溶媒種・アルカリ金属塩について材料探索を続け、カチオンホッピング輸送を発現させるために重要な支配因子の解明を行うことで、高速カチオン輸送(「高いイオン伝導性(室温で 10-3 S cm-1 以上)」、「高いカチオン輸率(t+ > 0.9)」)が可能な新規液体電解質の創出に繋がると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
優れたイオン輸送特性を示すことが分かった濃厚電解液に関しては、FT-IRやラマン分光法によるカチオンの配位環境の調査に加え、電気化学的手法による電気化学安定性評価、電池適用による充放電特性評価を進め、電解質材料の重要なパラメータを明らかにする。更に、磁場勾配NMR法による溶媒、カチオン、対アニオン其々の自己拡散係数の測定も併せ、イオン伝導機序を解明する。また、弱配位性溶媒として、鎖状エーテルのみならず部分ハロゲン化溶媒など、更に弱配位性を示す溶媒の適用を進め、カチオンの溶媒和状態がさらに不安定化された状態を生成させる。これによって、電気化学特性とイオン輸送特性の両立も同時に達成できる電解液設計に繋げる。
|