研究課題/領域番号 |
22K19086
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 (2023) 大阪大学 (2022) |
研究代表者 |
近藤 美欧 東京工業大学, 理学院, 教授 (20619168)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 錯体化学 / フレームワーク触媒 |
研究開始時の研究の概要 |
本申請研究では、分子認識場と物質変換サイトの両者を併せ持つ新規結晶性多孔材料を用いた水素同位体の精密分離法を提案する。本材料では、分子認識場によるトンネル効果と物質変換サイトによる化学変換が協奏的に連動することで特異な分離能が発現し、常温常圧下という極めて温和な条件における水素同位体の精密分離が可能となる。つまり、本申請研究で開発する新規フレームワーク触媒は、これまで極めて困難であるとされてきた低エネルギーで水素同位体を精密に分離できる画期的材料である。
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研究実績の概要 |
申請者は、これまでに分子性金属錯体触媒の自己集積によって構築される多孔性分子触媒材料、「フレームワーク触媒」を独自に開拓してきた。本材料は、原子レベルで構造・電子状態が規定された細孔中に触媒活性点を自在に導入可能である点で既存の多孔性結晶材料とは一線を画す。このフレームワーク触媒の開発研究を進める中で、CO2還元を触媒するフレームワーク触媒(Small, 2021, 2006150)において、H2O中とD2O中とでその触媒反応速度が大きく異なり、その速度論的同位体効果(kinetic isotope effect, KIE)がおよそ100と非常に大きな値を示すことが判明した。この大きなKIEは、フレームワーク触媒中で水素原子の量子トンネリング現象(K. Kuwahata et al., Phys Rev Lett., 2015, 115, 133201)が生じることに由来すると解釈できる。この事実は、フレームワーク触媒が水素のトンネリング現象を室温で発現可能な特異な材料であることを示している。 上記の萌芽的知見を礎に、本研究では、申請者が独自に開発してきたフレームワーク触媒を基軸とした水素同位体の高効率分離・精製手法の確立を志向した研究を展開する。そのために、疎水性分子認識場と水素イオン変換触媒サイトとを併せ持つ新規フレームワーク触媒を開発することを目標とした。 本年度の研究においては、ロジウム二核錯体からなるフレームワーク触媒FC1の機能評価を実施した。その結果、非常に高い反応速度(8.0××104 μμmolh-1g-1)での水素発生が確認された。この反応速度は、既存のMOFならびにCOFなどの類似材料を触媒として用い可視光条件下かつ水溶液中で行った水素発生反応の中で最高クラスの値であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度の研究では、触媒部位に水素還元発生能を有するRh二核錯体、コネクタ部位に水素結合形成サイトとして機能するテレフタル酸を採用し、フレームワーク触媒(FC1)の構築を行った。その結果、Rh二核錯体間で非共有結合性相互作用である水素結合によるネットワークが形成され、この水素結合ネットワークが細孔構造の形成に寄与していることが判明した。以上から、①触媒部位、②プロトン伝導サイト、③多孔性を有した構造の構築に成功したことが明らかになった。またFC1反応速度は、既存のMOFならびにCOFなどの類似材料を触媒として用い可視光条件下かつ水溶液中で行った水素発生反応の中で最高クラスの値であった。したがって、疎水性分子認識場と水素イオン変換触媒サイトとを併せ持つ新規フレームワーク触媒の開発には成功した。一方で、その触媒能の速度論的同位体効果については現状全く調査が行われていない。よって、進捗状況をやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究では、フレームワーク触媒により促進される水素発生反応の速度論的同位体効果について調査を行い、温和な条件で水素同位体を高効率に分離・精製するための方法論の確立に向けて鋭意努力する所存である。
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