研究課題/領域番号 |
22K19087
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 裕貴 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (30598488)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | リチウムイオン電池 / 水系電解液 / 水和融体 / 疎水化 / 黒鉛 / インターカレーション |
研究開始時の研究の概要 |
現在のリチウムイオン電池では、電解液として可燃性の有機溶媒系を用いており、火災事故の原因となっている。このような状況を鑑み、本研究では、リチウムイオン電池の電解液を有機溶媒系から水系に置き換えることを目的とする。この目的達成のため、負極反応となる黒鉛電極へのリチウムイオン挿入反応を可能にする水系電解液及び電極/電解液界面の設計を行う。本研究が成功すると、火災リスクを最小化した水系リチウムイオン電池の実現が可能となり、火災事故が許されない新規用途への応用が大きく拡大する。
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研究実績の概要 |
本研究では、リチウムイオン電池に使用されている電解液を有機溶媒系から水系に置き換えることを目的とする。その際に問題となるのが負極反応である。リチウムイオン電池の負極には黒鉛が用いられ、その充放電反応(リチウムイオンの挿入脱離反応)は極めて低い電位(強還元雰囲気)で起こるため、水の還元分解(水素発生)と競合してしまう。本研究では、低電位における水の還元分解反応を高度に抑制可能な黒鉛電極/電解液界面を探索した。 本年度は、電極表面における水の還元分解反応の素過程について調べるとともに、黒鉛表面の疎水化手法について検討した。電極表面における水分子の状態を分光法により調べた結果、水系電解液のリチウム塩濃度によって水分子の表面集積状態が異なることが分かった。既に観察されているリチウム塩高濃度化による水の還元分解抑制の一因となっていると考えられる。また、黒鉛表面の疎水化手法として、疎水性ポリマーによる被覆方法について検討した。次年度に高濃度水系電解液(水和融体電解液)を組み合わせた評価を実施する。 本研究により明らかとなった水の還元分解反応の素過程は、水素発生抑制に向けた重要な学術知見となる。競合する水素発生反応の抑制により、黒鉛電極へのリチウムイオン挿入反応に成功すれば、安全かつ高性能な水系リチウムイオン電池の実現が期待される。現行リチウムイオン電池は、使用されている有機電解液が可燃性であるため、火災事故が多発し、更なる用途拡大に向けた大きな障壁となっている。水系リチウムイオン電池では、火災リスクを最小化することができるため、火災事故が絶対に許されない用途への応用が大きく拡大する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水の還元分解反応の素過程に関する知見が得られ、かつ電極表面の疎水化に関する検討も進行中であり、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り推進する予定である。水の還元分解反応に大きな影響を与えるリチウム塩濃度に着目し、より還元安定性の高い水系電解液を探索する。また、電極表面の疎水化について、疎水性ポリマーによる被覆以外の方法の組み合わせを検討する。
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