研究課題/領域番号 |
22K19090
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分36:無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
高木 慎介 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (40281240)
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研究分担者 |
嶋田 哲也 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (50252317)
石田 玉青 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (90444942)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 粘土鉱物 / 電荷密度 / 粒径 / ポルフィリン / 色素 / 生命の起源 / 超分子科学 / 情報の伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
生命の本質は、進化しうる情報伝達システムであり、現存の生物では、DNA/RNAの持つ情報 が世代間で引き継がれている。このようにDNA/RNAは重要化合物であるが、これらは複雑な 三元系高分子であり、自然界での合成が困難であると考えられている。 そこで本研究では、生命の根本原理である「情報の伝達」に化学の視点で取り組み、ありふれた化合物を ベースとした情報伝達モデルの提案と実験的検証を行う。具体的には、 自然界においてありふれた物質である粘土鉱物と、有機化合物(ポルフィリン誘導体)間の情報伝達(詳細は調書に記述)に着目し、化学的情報伝達の繰り返しプロセスを実験科学的に検証する。
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研究実績の概要 |
今年度は、電荷密度、粒径を系統的に変化させた粘土鉱物の合成法を昨年度に続いて検討した。このことにより、前年度に比べ、粘土鉱物の大量合成が可能となった。それと並行して、粘土鉱物への芳香族化合物をを中心とした有機化合物の吸着、および、それらの光化学的挙動について検討した。粘土鉱物上でのポルフィリン合成を行うべく、その原料であるカチオン性のアルデヒドを合成しそのキャラクタリゼーションを行った。また、得られたカチオン性アルデヒド類の粘土鉱物に対する吸着挙動について検討した。予想通り、カチオン性アルデヒドが粘土鉱物に吸着することが判明し、その最大吸着量は、粘土鉱物のカチオン交換容量に対して10%程度であることが明らかとなった。また、カチオン性の化合物に加え、ピレンなど中性化合物についても調査対象とした。従来、粘土鉱物と中性分子の複合化挙動はほとんど検討されてこなかったが、ピレンが粘土鉱物に吸着することを定量的に明らかとした。粘土鉱物上でのポルフィリン合成にも着手し、現状では、定性的な確認にとどまっているが、実際に、粘土鉱物存在下において、ポルフィリンが生成しうることを確認した。同時にカチオン性芳香族化合物の吸着現象の解明の一端として、アゾニアヘリセンの吸着挙動についても検討を加えた。これらの研究の一部は、審査付き論文として発表することができた。今後、pHなどの反応条件を系統的に変化させて、ポルフィリン生成の定量化を行い、研究計画、目的の達成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、粘土鉱物におけるSi(IV)元素のAl(III)元素による同型置換位置、すなわち、負電荷発生位置が情報源になると考えた。したがって、まずは、 A(lIII)元素による同型置換量の異なる粘土鉱物の合成が必須である。研究実績の概要で記したように、初年度に実施する予定であった粘土鉱物の合成は概ね想定通りに進行している。一方、前年度において問題となった大量合成については、反応容器の工夫により、一定の成果を得た。また、実際に、粘土鉱物上でのポルフィリンの合成についても着手することができ、定性的にはその合成が可能であることを見い出した。これらの成果は、おおむね、順調であると判断できるが、ポルフィリン合成の定量化、および、ポルフィリン誘導体の合成についてはまだ着手できておらず、また、本研究の本筋からの論文化は少数にとどまっており、総合的には、研究進捗はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
粘土鉱物の合成については、電荷密度の制御に関してはおおむね目的を達したので、粒径についての検討を引き続き行う。また、研究目的を達成するために、カチオン性、中性分子の粘土鉱物への吸着について、その分子種の拡大、物理化学的な解析により、詳細を明らかとする。また、粘土鉱物上での色素分子の光化学的な振る舞いを検討することで、粘土鉱物の反応場としての機能性についてん知見を得る。これらの基盤に立ち、研究の最終目的となる、粘土鉱物上での有機合成、特に、生成物分布への効果についての検討を行う。具体的には、カチオン性アルデヒドとピロールの重合反応を粘土上で検討する。生命の起源に直結する可能性を持ったものとして、当初の研究計画には含まれていないが、粘土鉱物上での核酸塩基の合成についても検討してみたいと考えている。研究成果を明示するために、研究の途中段階の結果(粘土鉱物の合成、中性分子の吸着挙動、カチオン性分子の吸着挙動、および、その光化学的挙動など)についての論文化を行う。
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