研究課題/領域番号 |
22K19100
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分37:生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹澤 悠典 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (70508598)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | DNA / 鎖置換反応 / 速度論 / 金属錯体形成 / 修飾核酸塩基 / 金属配位 |
研究開始時の研究の概要 |
DNA鎖置換は、一本鎖領域への入力DNA鎖の結合により開始し、ブランチマイグレーションによって二重鎖の組み換えが進む反応であり、DNA演算回路やDNA分子機械の開発に汎用されている。DNA回路の高機能化においては、個々の鎖置換の反応速度のチューニングが重要となる。そこで、始状態で二重鎖を組んでいるDNA鎖に金属配位性修飾ピリミジン塩基を導入し、金属イオン濃度依存的にワトソン・クリック型塩基対の安定性を微調整することで、鎖置換反応、特にブランチマイグレーションの速度制御を試みる。修飾塩基の種類・導入箇所や添加金属イオンの濃度を詳細に検討し、鎖置換反応の速度論の精密制御の方法論を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究は、動的DNAナノテクノロジーの根幹をなすDNA鎖置換反応の速度論を、修飾ピリミジン塩基の金属配位により精密に制御することを目的としている。本年度は主に、ウラシル塩基の5位にイミノ二酢酸配位子を導入したN,N-ジカルボキシメチル-5-アミノウラシル(dcaU)塩基を用い、DNA二重鎖中での金属錯体形成、および金属イオン添加・除去によるDNA二重鎖の組み換え反応について検討した。二重鎖融解実験から、一対のdcaU-dcaU対を含むDNA二重鎖が1当量のGd(III)イオン存在下で大きく安定化されることを見出した。これは2:1錯体(dcaU-Gd(III)-dcaU塩基対)の形成により、二重鎖が架橋されたためである。一方、dcaU塩基は水素結合型の天然様dcaU-A塩基対も形成した。dcaU-A塩基対を含む二重鎖は、Gd(III)イオンの添加により不安定化した。結果として、Gd(III)イオンの有無により二重鎖安定性が逆転し、dcaU-Gd(III)-dcaU塩基対とdcaU-A塩基対の相互変換が可能であることが示唆された。さらに、dcaU塩基を含むDNA鎖を用いて、Gd(III)イオンの添加および除去による二重鎖形成の制御を試みた。非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、および蛍光修飾した相補鎖を用いた蛍光時間変化測定から、Gd(III)イオンを外部刺激として、DNA鎖の会合挙動を等温下で可逆的に変換できたことが示された。今後は、DNA鎖置換反応の速度論を詳細に解析し、修飾ウラシル塩基の数や導入位置に基づく速度論の制御を検討する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、動的DNAナノテクノロジーの根幹をなすDNA鎖置換反応の速度論を、修飾ピリミジン塩基の金属配位により制御することを目的としている。本年度は主に、ウラシル塩基の5位にイミノ二酢酸配位子を導入したN,N-ジカルボキシメチル-5-アミノウラシル(dcaU)塩基を用い、DNA二重鎖中での金属錯体形成、および金属イオン添加・除去によるDNA二重鎖の組み換え反応について検討した。新たに設計したdcaUヌクレオシドは、5-ブロモ-2’-デオキシウリジンを原料として合成し、ホスホロアミダイト法によりDNA鎖中に導入した。二重鎖融解実験から、一対のdcaU-dcaU対を含むDNA二重鎖が1当量のGd(III)イオン存在下で大きく安定化されることを見出した。これは2:1錯体(dcaU-Gd(III)-dcaU塩基対)の形成により、二重鎖が架橋されたためである。一方、水素結合型の天然様dcaU-A塩基対を含む二重鎖は、Gd(III)イオンの添加により不安定化した。結果として、Gd(III)イオンの有無により二重鎖安定性が逆転し、dcaU-Gd(III)-dcaU塩基対とdcaU-A塩基対の相互変換が可能であることが示唆された。 さらに、dcaU塩基を含むDNA鎖に対し、dcaUを含む相補鎖、およびA塩基を含む相補鎖を混合し、Gd(III)イオンによる二重鎖形成の制御を試みた。非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動、および蛍光修飾した相補鎖を用いた蛍光時間変化測定から、Gd(III)イオンを外部刺激として、DNA鎖の会合挙動を等温下で可逆的に変換できたことが示された。 以上のように、新規dcaU塩基を開発し、Gd(III)イオンを外部刺激としてDNA鎖の会合挙動を等温下で可逆的に変換することに成功したことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は主に、5位にイミノ二酢酸配位子を導入した修飾ウラシル塩基(dcaU)を用い、DNA二重鎖中での金属錯体形成、および金属イオン添加・除去によるDNA二重鎖の組み換え反応の検討を行った。 次年度は、DNA鎖置換反応の速度論を詳細に解析し、修飾ウラシル塩基の数や導入位置に基づく速度論の制御を検討する。また、すでに報告した5-ヒドロキシウラシル(UOH)や5-カルボキシウラシル(caU)塩基も用い、鎖置換反応の一過程であるブランチマイグレーションの速度制御に挑む。さらに、修飾ウラシル塩基を用いたDNA鎖置換反応を素反応として様々なDNA分子回路を構築することで、金属イオンを調節因子としたDNA分子回路の動作制御の実現も目指す。
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