研究課題/領域番号 |
22K19106
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分37:生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大神田 淳子 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (50233052)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | フシコクシン / 植物成長促進活性 / プロトンポンプ / 14-3-3 / 光合成活性 / 蛋白質間相互作用 / bump-and-holeペア / bump and hole / 合理設計 / 成長促進活性 / プロトンATPase / 気孔開口 |
研究開始時の研究の概要 |
ジテルペン配糖体フシコクシン-A (FC-A)は、植物の気孔開口を亢進し枯死させる天然毒として古くから知られている。我々は最近、水と光を十分に供給した条件下では、FC-Aが植物成長を有意に促進することを見出した。本研究では、FC類縁体を世界の食料問題の解決に資する天然化合物として社会に還元することを目標に、これまでの通説を覆すFC-Aの植物成長促進活性の仕組みの詳細を、化学生物学的なアプローチにより解明する。
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研究実績の概要 |
植物病原真菌が生産するジテルペン配糖体フシコクシン (FC)は、孔辺細胞中の細胞膜 プロトンポンプと14-3-3と3者会合体を形成して両者の蛋白質間相互作用を安定化し、気孔開口の亢進と蒸散過多をもたらし植物を枯死させる毒として知られてきた。最近我々は水と光の十分な供給下では、FCは二酸化炭素の吸収と光合成活性を亢進し、むしろ植物の成長を有意に促進するという通説と相反する活性を見出した。したがってFCには分子生物学研究におけるツールとしてはもとより植物成長促進剤としての農業利用の可能性が期待される。本研究では、FCの植物成長分子機序の詳細な解明とFC構造改変体による14-3-3蛋白質間相互作用の選択的調節ツールの開発を目的とした。 水耕栽培レタスに対するFCの成長促進活性について、幼苗期に限定した薬剤処理でも継続的な処理とほぼ同等の成長促進活性が観察され、成長段階初期でFCの効果により植物体の成長差が後期成長期にも維持されることが判った。また水耕栽培香草類についても検証し、種やFCの与え方により効果の出方に違いがあることが判った。一方、14-3-3の器官特異的またはアイソフォーム特異的な調節ツールの創出に向けて、前年度に調整したFC構造改変体について14-3-3変異体および各種リン酸化リガンドとの3者会合体形成能を、蛍光偏光を指標とする滴定実験により系統的に検証した。その結果、3者会合体形成時にFCに隣接すると考えられるi+1およびi+2位のアミノ酸残基により特異的形成能が大きく変化することが判った。以上の結果から本研究で設計したFC-14-3-3のbump-and-holeペアが植物・動物細胞の特定の14-3-3のみならず配列特異的な調節を可能にすることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、従来植物毒としての活性が広く知られていたフシコクシンが、水と光の十分な供給下では植物成長を促進させる新たな活性と機序を明らかにした。この成長促進活性は、シロイヌナズナなどのモデル植物のみならず、他の栽培作物に広く観察されることを明らかにし、フシコクシンの新たな農業利用への可能性を示すことができた。これらの結果をまとめ、現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
FCの気孔開口活性と病原菌感染率についての定量的な検証を始めとするリバイス実験を早急に完結させ、論文受理を目指す。
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