研究課題/領域番号 |
22K19132
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
浅川 晋 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50335014)
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研究分担者 |
村瀬 潤 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30285241)
渡邉 健史 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60547016)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 水稲 / 根圏 / 連作障害 |
研究開始時の研究の概要 |
湛水下で栽培されるイネ(水稲)には土壌病原菌による連作障害が起きない。従来,湛水で生じる土壌の還元・嫌気状態により好気性の土壌病原菌の活動が抑制されることがその原因とされてきたが,イネと同様に湛水下で栽培されるレンコンやクワイにはフザリウム等の好気性糸状菌による連作障害が起きるため,他に原因があると思われる。イネの根圏では地上部より送られる酸素が根から漏出し酸化的となる。このようなイネの根圏で活発化する(1)原生生物の捕食作用,(2)根周囲の酸化還元境界層における二価鉄の酸化反応によるラジカル生成,(3)非病原性の細菌・糸状菌群集の増殖が土壌病原菌を抑止していると想定し,その機作を探る。
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研究実績の概要 |
湛水下で栽培されるイネ(水稲)には土壌病原菌による連作障害が起きない。従来,湛水で生じる土壌の還元・嫌気状態により好気性の土壌病原菌の活動が抑制されることがその原因とされてきたが,水稲と同様に湛水下で栽培されるレンコン,クワイにはフザリウム等による連作障害が起きるため,他に原因があると思われる。本研究では,地上部より送られる酸素が根から漏出し,酸化的となるイネの根圏で活発化する微生物活動と生化学反応が土壌病原菌に対する抑止性に関与していると想定する。水稲根圏において,優占して生息する原生生物の捕食作用,根周囲の酸化還元境界層の鉄酸化反応,根からの酸素と有機物で増殖する細菌・糸状菌群集に注目し,水稲が土壌病原菌に対し抑止性を発揮している機作を探ることを目的とする。 2022年度にイネに対する病徴の発現を確認した結果に基づき、Fusarium commune MAFF236517株を供試菌株とした。湛水水田条件および落水畑条件の圃場でイネを栽培し、それぞれのイネから調製した根圏土壌試料について、フザリウム共培養法を用いてF. commune MAFF236517株に対する根圏微生物による抑止作用の調査を行った。分げつ期、出穂期のどちらの試料でも、畑と比べ水田のイネの根圏土壌でF. communeのコロニーの伸長程度が明らかに小さくなる傾向は認められなかった。また、ニ価鉄と過酸化水素によるフェントン反応で生じるヒドロキシラジカルを蛍光プローブHydroxyphenyl Fluoresceinにより特異的に検出できることを確認し、F. commune MAFF236517株をニ価鉄と過酸化水素で処理し、平板培地で増殖程度への影響を調査した。処理区と非処理区の間でF. commune MAFF236517株の増殖程度に差が見られず、ヒドロキシラジカルの影響は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度にイネに対する病徴の発現を確認したFusarium commune MAFF236517株を供試菌株として用い、根圏に生息する微生物による抑止作用について、圃場において湛水水田条件および落水畑条件でイネを栽培し、それぞれのイネから調製した根圏土壌試料を対象に、フザリウム共培養法を用いてF. commune MAFF236517株に対する抑止作用を調査した。水田と畑で明確な差異は認められなかったものの、どちらの試料もF. commune MAFF236517株に対する生育抑止作用を有することを確認することができた。また、根圏での鉄酸化反応による病原菌の抑止作用については、今回用いた条件ではF. commune MAFF236517株の増殖程度への影響は認められなかったが、鉄酸化反応に伴うヒドロキシラジカルの発生を蛍光プローブを用いて特異的に検出することができた。以上より、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
根圏での鉄酸化反応による病原菌の抑止作用については、ニ価鉄濃度やラジカル処理回数を変え、F. commune株に対する生育抑制作用をさらに調査する予定である。根圏に生息する微生物(細菌・糸状菌)による抑止作用については、圃場において湛水水田条件および落水畑条件でのイネを栽培を2024年度も継続することにより連作を行い、それぞれのイネから調製した根圏土壌試料について、フザリウム共培養法を用いてF. commune株に対する抑止作用に水田と連作2年目の畑の間で違いが見られるかの調査を行う。さらに、原生生物による捕食作用については、イネ根圏より分離された原生生物株がF. commune株を捕食するかの調査を行う予定である。
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