研究課題/領域番号 |
22K19141
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
加藤 真悟 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 上級研究員 (40554548)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | CPRバクテリア / DPANNアーキア / 絶対外部共生 / 微生物ダークマター / 培養 / メタゲノム / DPANN / CPR / 難培養微生物 |
研究開始時の研究の概要 |
原核生物の全系統多様性の15%以上を占めるともいわれるCPRバクテリア群およびDPANNアーキア群は、地球上の至る所に生息するものの、その99%以上の種がまだ実験室で培養できておらず、宿主域も不明であるため、その生理機能や生態学的役割はほとんど未知である。本研究の目的は、 培養に依存せずに未培養性CPR/DPANNの宿主を同定する手法を確立し、その宿主情報に基づいて「CPR/DPANN―宿主」共生体を培養することである。本研究は、謎に包まれたCPR/DPANNの生き様や生態学的役割の理解を深め、大局的には、人間活動に深く関わる地下水などの環境の保全や改善に貢献すると期待される。
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研究実績の概要 |
原核生物の全系統多様性の大部分を占めるともいわれるCPRバクテリア群およびDPANNアーキア群は、地球上の至る所に生息するものの、その99%以上の種がまだ実験室で培養できておらず、宿主域も不明であるため、その生理機能や生態学的役割はほとんど未知である。本研究の目的は、培養に依存せずに未培養性CPR/DPANNの宿主を同定する手法を確立し、その宿主情報に基づいて「CPR/DPANN―宿主」共生体を培養することである。研究計画の初年度となる今年度は、非培養依存のCPR/DPANNの宿主同定法の肝となる1共生体分取顕微装置の開発に着手し、ほぼ完成形に近いところまで組み立てた。未培養微生物の可培養化の成功の鍵は、良い植菌源を選定することである。植菌源の一次スクリーニングとして、国内温泉地4地点において採取済みの温泉水・泥のショートリードメタゲノム解析を実施した。さらにそのうちの1試料において、PacBioロングリードメタゲノム解析を実施し、16S rRNA遺伝子を含むCPR/DPANNのゲノムを10個以上獲得することに成功した。この成果は国際誌(オープンアクセス)に掲載された。この16S rRNA遺伝子配列を標的にすることで、試料中のCPR/DPANNの細胞を特異的に可視化することが可能となる。また、別の1試料からは、好気条件下で増殖可能なDPANN群の1種と宿主との共培養系を、従来の培養法により確立し、その培養性状やゲノム配列を決定した。この成果は国際誌(オープンアクセス)に掲載され、プレスリリースや解説記事も発表した。このDPANN共培養系は、本研究計画においては、新たに開発する顕微装置の実用性試験において、有用な試料となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非培養依存のCPR/DPANNの宿主同定法の肝となる1共生体分取顕微装置の開発に着手した。必要となる部品の発注は完了した。ごく一部の部品の納品が遅れているため未完成ではあるが、ほとんどの部品を調達することができ、組み立てもほぼ完了した。PCRに依存しないショットガンショートリードメタゲノム解析によって、複数の国内温泉地の微生物群集構造を明らかにし、CPR/DPANNが多く存在する試料を選定することができた。同解析によって、16S rRNA遺伝子を含む複数のCPR/DPANNのゲノムの再構築にも成功した。さらにそのうちの一つの試料では、PacBioロングリードメタゲノム解析によって、CPR/DPANNの高品質ゲノムを9個(そのうちCPRの完全ゲノムは5個)得ることができ、誌上発表にまで至った。これら16S rRNA遺伝子を含む再構築ゲノムは、研究計画の次の段階で実施予定の、試料中のCPR/DPANNを特異的に染色するためのプローブ設計およびそれらの可培養化に向けた戦略を練るために必須となる。また、好気条件下で増殖可能なDPANN群の1種と宿主との共培養系(MJ1-MJ1HA培養物)の確立においては、その成果が誌上発表まで完了した。以上のように着実に成果が上がっており、すでに論文発表もできているため、計画通り順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
必要部品が納品され次第、1共生体分取顕微装置の完成を目指す。同顕微装置を用いて、MJ1-MJ1HA共培養物を試料として1共生体の分取を試みることで、装置・手順の最適化を行う。今年度までに選定した温泉地にて新鮮な試料を新たに採取し(もしくは既に凍結保存済みの試料から復元培養を行い)、顕微装置を用いて1共生体の分取を試みてゲノム解析、宿主同定、可培養化まで実施する。1共生体の分取に必要となるFISHプローブを、既に再構築済みゲノムの16S rRNA遺伝子配列に基づいて設計する。引き続き、よりよい培養試料を求めて、新しい天然環境でサンプリングを行い、メタゲノム解析および培養のための凍結保存を行う。
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