研究課題/領域番号 |
22K19152
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分38:農芸化学およびその関連分野
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
島田 裕士 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (80301175)
|
研究分担者 |
佐藤 綾人 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (10512428)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 光合成 / ケミカルスクリーニング / ハイスループットスクリーニング / ハイスループット / ケミカルバイオロジー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は光合成活性に影響を与える化合物(促進剤)をケミカルライブラリー(化合物バンク)からハイスループットスクリーニングによって発見し,基礎研究と産業応用に供することである。スクリーニングを遂行し,得られた候補化合物を元に高活性・高選択性で毒性の無い化合物を見出すとともに,ターゲットタンパク質の同定をはじめとした活性メカニズムの解明,実用的な植物成長促進剤の開発を行う。
|
研究実績の概要 |
現在深刻化している人口増加に伴い必要となる農作物生産の増産と安定供給を目指し、ケミカルバイオロジーの観点から化合物を用いた光合成活性上昇技術の開発とそのメカニズム解明を目指した。本研究の目的は光合成活性に影響を与える化合物(促進剤)をケミカルライブラリーからハイスループットスクリーニングによって発見し,得られた候補化合物を元に高活性・高選択性で毒性の無い化合物を見出し,基礎研究と産業応用に供することである。1,050種の化合物の光合成促進効果を測定し,2つの光合成促進効果を示す化合物を得た。得られた化合物の構造から類似の化合物ライブラリーを構築し200種の2次スクリーングを行った。その結果,2次スクリーニングで新たに1個の光合成促進効果を示す化合物を見つけた。また,520種の食品関連化合物ライブラリー中から促進効果3種、抑制効果4種のヒット化合物を得た。これらを生育しているチンゲン菜に処理し、成長に対する影響を調べた。化合物AとBを植物個体へ投与したところ成長促進が観察された。また、化合物CとDは強力な光合成抑制効果があり、植物個体への投与実験においても強力な成長抑制が観察された。 光合成活性測定装置を用いて化合物Cの濃度依存性を調査した結果、50 uMと5 uMでの処理において強力な光合成抑制が観察されたが0.5 uMの処理においてはわずかながら促進効果が観察された。さらに濃度を下げることで促進効果を示す可能性が示唆された。 化合物Aにおいてはスクリーニング結果で光合成促進効果を示しており、植物成長にも促進効果を示した。化合物Aは多くの人が日常的に摂取している食品に含まれており,「安全で環境にやさしい」植物成長促進剤としての利用が期待される。 今後は得られた化合物のさらなる光合成促進効果を目指し、促進効果のある化合物を複数同時に植物に投与したときの効果を調査する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケミカルスクリーニグに用いる植物は,実験室内で生育が容易,比較的大きな葉が得られる,葉の光合成速度の個体差が小さい理由からチンゲン菜を用い た。チンゲン菜は温室(22°C,湿度約45%,明16時間・暗8時間)で生育した4週齢を用いた。上位葉の陰になっていない,毎回同様の大きさの葉を選定し,コルクボーラーによってリーフディスク(直径11 mm)を作成した。その際に単位面積当たりの光合成活性が低いと考えられる太い葉脈は避けてリーフディスクを作 成した。ケミカルスクリーニングは2日かけて行った。初日 (day0)は化合物処理前のリリーフディスクの光合成活性を測定し,測定後にリーフディスクを50 μMの化 合物に浸した。翌日 (day1) に化合物処理後のリーフディスクの光合成活性を測定し,day0とday1の光合成速度の差を比較することで,光合成促進効果のある 化合物のスクリーニングを行った。化合物による光合成促進効果は,同一化合物について独立した3回の調査を行い,同時に行った3回の未処理サンプルの2SD (標準偏差)を超えたものを促進効果のある化合物とした。 スクリーニンクグに用いたケミカルライブラリーは名古屋大学ITbM所有の植物に特化した特徴のあるケミカルライブラリーとともに,食品関連化合物ライブラリーを用いた。食品関連ライブラリーは「食用とされていることから毒性が無く,生体でのプロファイルが明らかになっている」「作物とのリンクが明らかで,化合物を見出した後の抽出物の作成が迅速かつ容易である」という特徴を有している。 ケミカルスクリーングの結果これまでに4種類の光合成促進剤の候補を見出した。 また,520種の食品関連化合物ライブラリーから光合成促進効果3種、抑制効果4種のヒット化合物を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでのケミカルスクリーニングによって4種の光合成促進剤候補を得ており,食品化合物スクリーニングによって3種の光合成促進剤候補,4種の光合成阻害剤候補を得た。これら化合物について光合成に与える影響について濃度依存性の確認を行う。また,これまではチンゲンサイのリーフディスクを用いて光合成への影響を調べていたが,本年度は生育中のチンゲンサイに各種化合物を処理し,生育(バイオマス)ならびに光合成活性への影響について定量化する。同時に化合物の光合成活性におよぼす影響の濃度依存性も調べる。チンゲンサイはこれまで土壌栽培していたが,生育中のチンゲンサイへの化合物の影響を詳細に調べるためにロックウールを支持体とした水耕栽培を用いる予定である。光合成促進効果のあった合計7種に化合物について,植物個体に2種類以上を同時に処理して促進効果の増強効果があるかも確認する。
|