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ヒト培養細胞を宿主とした抗がん剤の生物的全合成

研究課題

研究課題/領域番号 22K19158
研究種目

挑戦的研究(萌芽)

配分区分基金
審査区分 中区分38:農芸化学およびその関連分野
研究機関静岡県立大学

研究代表者

渡辺 賢二  静岡県立大学, 薬学部, 教授 (50360938)

研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
キーワード細胞内de novo合成 / 抗腫瘍性抗生物質 / 遺伝子治療法 / 天然物 / 生合成 / fumagillin / 遺伝子治療 / 生合成遺伝子異種発現 / 抗がん剤 / ヒト細胞発現系 / フマギリン
研究開始時の研究の概要

抗生物質などの天然物は強力な生物活性を示すが、標的以外の細胞にも作用してしまうケースが多い。そこで本研究では、標的細胞でのみ天然物の効果を発揮させる新たな仕組みを構築する。その基盤となるコンセプトは、合成生物学の手法を応用して細胞自身に生物活性天然物を生合成させることである。具体的には、まず疾患細胞に天然物生合成遺伝子を導入し、天然物生産能力を獲得させる。形質転換された疾患細胞は代謝産物を原料にして天然物を生合成するようになり、自身で産生した天然物によって細胞死の誘導や、神経伝達の正常化、がん転移の抑制など様々な変化が疾患細胞でのみ永続的に生じる。

研究実績の概要

我々は細胞内で天然物を生合成させ, 直接細胞に作用させる新しい遺伝子治療法を提案してきた。すなわち天然物を生産するために必要な遺伝子をヒト細胞内に導入し, 細胞自身に薬となる天然物を生合成させるものである。糸状菌Aspergillus fumigatusが産生するfumagillin (1) はメチオニンアミノペプチダーゼ2 (MetAP2) を選択的に阻害することで血管内皮細胞の増殖を阻害する強力な血管新生阻害剤で, 抗がん剤として期待された化合物である。MetAP2と1複合体のX線結晶構造解析から, 1のスピロエポキシ環がMetAP2の231番目のヒスチジン残基と共有結合しており, それにより酵素活性が阻害されることが明らかとなっている。1の誘導体はがん治療薬として期待された化合物であったが, 神経毒による副作用や, 半減期の短さなどの臨床的な制約により, 医薬品開発が断念されている。そこで我々は, ヒト細胞に1生合成遺伝子を発現させ, 1もしくはその誘導体を産生させることを目的として研究に取り組んだ。
はじめに, fma-TC, fma-P450をHeLa細胞へ導入し, 細胞内のFPPを基質とした化合物3の生合成を試みた。その結果, 3の5位が還元された天然物の立体とは逆の化合物5′の生産が確認できた。これは, 2から3への反応が進行した後, HeLa細胞内在性の還元酵素により5位カルボニル基の還元が起こり, 生成したものと考えられた。次に, 5位カルボニルの還元を担うfma-KRによる変換反応を試みた。しかしながら, fma-KRの細胞内での発現は確認できなかったため, 6位の水酸化を触媒するfma-C6Hを細胞に導入し, 化合物6′の生産を試みた。LC-MS解析から6′の生合成を確認し, さらにその生合成によって誘導されたと考えられる細胞死が認められた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

植物や微生物が生産する化合物 (天然物) には、生物活性を有する化合物も多く、それらは抗生物質や抗がん剤などの医薬品として利用されてきました。一方で、活性はあるものの臨床効果の低さや副作用等の問題により、医薬品開発がストップしてしまった天然物も数多く存在する。そのような有望な天然物のポテンシャルを生かすために、細胞内で天然物を生合成させ、直接細胞に作用させる方法を考案してきた。すなわち天然物を生産するために必要な遺伝子をヒト細胞内に導入し、細胞自身に薬となる天然物を作らせる方法である。特定の細胞にのみ確実に作用させることができる新しい遺伝子治療法につながります。本研究では、がんを対象疾患とし、強力な抗がん作用を持つfumagillinのがん細胞内での生合成を目指した。今回、糸状菌Aspergillus fumigatusが保有するfumagillin生合成遺伝子をヒトがん細胞内で発現させ、fumagillin類縁体を生合成させることに成功し、さらに期待通りがん細胞が死滅することを確認できた。本研究結果から、新しい遺伝子治療法の有効性を示すことができた。
ヒト細胞における天然物の生合成遺伝子の機能発現による、新しい遺伝子治療の可能性を示した。
これまでの医薬品開発の中で、副作用等により開発中止を余儀なくされてきた強い活性を有する天然物を利用することが出来ます。効果的かつ副作用の少ない治療法の確立につながります。また、本研究ではがんを対象疾患としましたが、その他多くの生合遺伝子を用いることで対象疾患の範囲を拡大させることも期待される。

今後の研究の推進方策

RT-PCRによるfma-KRの発現は確認できたものの、LCMS分析では目的化合物は検出できなかった。しかしながら、細胞生存率では化合物を生合成させたものに有意差が見られた。この結果から、生成化合物はLCMSの検出限界以下の量であるが生産しており、その生合成により細胞毒性を示すことが明らかとなりました。そこでこれまでに発現させてきたフマギリン生合成酵素にGFPタグをつけることで、それらの細胞内局在性を確認した。その結果、これら生合成酵素は細胞の1か所に存在しているわけではなく、細胞質もしくは小胞体に存在していることが確認できた。このことから化合物は一挙に生合成されるのではなく、各生合成酵素の存在している場所で生合成されると考えられる。基質が各ステップで細胞内を移動せざるを得なくなり、今回のようにHeLa細胞由来の還元酵素による代謝を受けやすくなったことが示唆された。今後はシグナルペプチドを付けるなどして生合成酵素を細胞内で局在させ、反応効率を高める方策をとる。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 天然物生合成機能の発現による新しい遺伝子治療2022

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Shinya、Watanabe Kenji
    • 雑誌名

      有機合成化学協会誌

      巻: 80 号: 8 ページ: 747-754

    • DOI

      10.5059/yukigoseikyokaishi.80.747

    • ISSN
      0037-9980, 1883-6526
    • 年月日
      2022-08-01
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 抗腫瘍性抗生物質fumagillin生合成遺伝子のウイルス発現系による新規抗がん治療法の確立2023

    • 著者名/発表者名
      根岸 天都, 恒松 雄太, 佐藤 道大, 渡辺 賢二
    • 学会等名
      日本薬学会144年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 抗腫瘍性抗生物質fumagillin生合成遺伝子のウイルス発現系による新規抗がん遺伝子治療法の確立2023

    • 著者名/発表者名
      根岸 天都, 恒松 雄太, 佐藤 道大, 渡辺 賢二
    • 学会等名
      日本農芸化学会2024年度大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 天然物生合成遺伝子の発現による遺伝子治療法の確立2023

    • 著者名/発表者名
      根岸 天都, 恒松 雄太, 佐藤 道大, 渡辺 賢二
    • 学会等名
      日本生薬学会第69回年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 抗腫瘍性抗生物質fumagillin生合成遺伝子のウイルス発現系による新規抗がん治療法の確立2023

    • 著者名/発表者名
      根岸 天都, 恒松 雄太, 佐藤 道大, 渡辺 賢二
    • 学会等名
      第24回 天然薬物の開発と応用シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 生物に作らせる未来の天然物合成化学2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺賢二
    • 学会等名
      日本化学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 静岡県立大学 薬学研究院 生薬・天然物化学研究室 渡辺グループ

    • URL

      https://sweb.u-shizuoka-ken.ac.jp/~kenji55-lab/

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] WATANABE RESEARCH GROUP

    • URL

      https://sweb.u-shizuoka-ken.ac.jp/~kenji55-lab/

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-07-05   更新日: 2024-12-25  

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