研究課題
挑戦的研究(萌芽)
最近研究代表者らが見出した、モデル植物に処理すると、ジャスモン酸(JA)の内生量を増加させる化合物の、乳管細胞の分化、二次代謝産物の合成に対する影響に焦点を当て、有用物質生産に用いられる種々の植物種に供試し、応用可能性を探索する。一方モデル植物を用いて作用機序の解明を進める。こうしたアプローチにより、植物による有用物質生産の類例のない制御技術の基盤確立を目指す。
本研究の対象とする化合物の有機溶媒、界面活性剤に対する溶解性を調査し、植物体内に導入する方法を検討した。化合物を高濃度に処理すると副作用が生じる可能性が明らかとなり、遺伝子発現を指標として、様々な生育ステージの植物について、化合物の処理方法を比較検討し、最適化を進めた。本化合物をモデル植物シロイヌナズナの幼植物体に処理した際に誘導される遺伝子発現変化の時系列変化をRNA-seq法により網羅的に解析した。Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomesを用いてエンリッチメント解析を行った結果、処理後短時間のうちに、ジャスモン酸経路、サリチル酸経路の遺伝子に加えて、種々の特化代謝産物の代謝経路、特に種々の有用物質の生合成経路の上流に位置するフェニルプロパノイド経路の生合成関連遺伝子群の発現が誘導されることが明らかとなった。またcis-elementエンリッチメント解析により、本化合物処理により発現変動が見られた遺伝子群の転写制御に関与する可能性のある転写因子の候補を同定した。種々のビオチン化標識化合物を合成し、ビーズ法により、化合物に特異的に結合するタンパク質の単離同定を目指した実験を進めた。またタバコ培養細胞BY-2及びシロイヌナズナ培養細胞T-87に化合物を処理し、処理濃度、処理時間を変えながら影響を解析した。代謝産物を高速液体クロマトグラフィ法で分析し、化合物処理の影響の解析を進めた。モデル植物以外に、特有の特化代謝産物の合成能を持つ植物種を用いた実験系に関する情報を収集し、本化合物の効果を調査する準備を進めた。
3: やや遅れている
モデル植物シロイヌナズナの時系列トランスクリプトーム解析に基づく化合物の作用機能の解明は概ね順調に進展した。一方で、化合物を高濃度に処理すると副作用が生じる可能性が明らかとなり、処理条件の検討に当初の予想以上の時間を要した。また、有用物質生産に用いられる実用植物種を用いた実験、特に国際共同研究は、材料の入手や実験の準備に当初の予想以上の時間を要した。
モデル植物シロイヌナズナを用いた実験により化合物の標的や作用機構の解明を進める。実験に供する植物種を拡げ、化合物の処理条件の検討を進め、特化代謝活性化の可能性を検証する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Scientific Reports
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