研究課題/領域番号 |
22K19170
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
梅澤 泰史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70342756)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 乾燥ストレス / 転写開始点制御 / リン酸化 / RAF型キナーゼ / RNA-seq / 転写開始点 / アブシシン酸 / シロイヌナズナ / TSS-seq解析 / トランスクリプトーム |
研究開始時の研究の概要 |
近年、植物の環境応答において転写調節の前に起こる「転写開始点の制御」が注目されている。申請者らは、このような遺伝子の転写開始点制御が植物の乾燥ストレス応答でも起きていることを明らかにしてきた。そこで、これらの転写開始点の調節が植物の乾燥ストレス応答においてどのような役割を持つか、またその役割の普遍性について明らかにするための研究を行う。
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研究実績の概要 |
生物が環境の変化に応答するとき、一般的にはゲノムワイドな遺伝子発現の変化を伴う。一方、近年遺伝子の「転写前」の調節である転写開始点の制御が注目されている。遺伝子の転写開始点が変化すると、プロモーターの調節領域が変化したり、翻訳産物のアミノ酸配列に影響を与えるので、一つの遺伝子領域から機能の異なる複数のタンパク質を作り出すことができる。少なくとも植物の乾燥ストレス応答において、大規模な転写開始点制御は報告されておらず、その重要性もわかっていない。そこで、申請者らは植物の乾燥ストレス応答における転写開始点制御の研究に着手した。Hi-Seq3000シーケンサー(illumina社)を用いて、転写開始点を網羅するTSS-seq解析を行ったところ、シロイヌナズナにおいて乾燥ストレスの際に転写開始点が大規模に変化することを突き止めた。したがって、転写開始点制御が植物の乾燥ストレス応答の一環として機能している可能性がある。この仮説を証明するために、まず植物の乾燥ストレス応答における転写開始点制御の普遍性及び重要性を証明したい。そこで、本研究では大規模な転写開始点データをシロイヌナズナ以外の植物から取得すること、そして植物の乾燥ストレス応答に関与する新規な遺伝子を同定し、その機能を明らかにすることを目的とする。 これまでに、RNA-seq解析の大規模データを解析し、乾燥ストレスによって転写開始点が変化するとされた遺伝子群について、実際に植物において転写開始点が変化しているかどうかを確認するために、5’-RACE法による解析を行った。その中で、転写開始点変化が確認された遺伝子群について、遺伝子破壊株を単離して表現型を解析した。また、転写開始点の異なる型を変異体に導入して、その表現型を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乾燥ストレス処理した植物を用いたRNA-seq解析によって、転写開始点が変化すると推定された遺伝子群について、5’-RACE法を行い転写開始点制御について確認した。その後、それぞれの遺伝子について遺伝子破壊株を単離して表現型を調べた。その結果、RAF型キナーゼをコードする遺伝子の破壊株がABAや浸透圧ストレス感受性に変化がみられることが分かった。このRAF型キナーゼはまだ機能が報告されていないため、これについて最優先で取り組むこととした。このRAF型キナーゼには転写開始点が2か所検出され、それぞれ転写開始点Aおよび転写開始点Bとする。この転写開始点A型およびB型のRAFを遺伝子破壊株に導入して、表現型を相補するかどうかを調べたが、いずれの型も表現型を相補したため、転写開始点制御の意義を見出すことが困難な状況となった。現在、別の遺伝子群についても同様の解析を進めていることである。以上のことから、本研究については当初の計画からやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、5’-RACE法によって転写開始点制御が確認された残りの遺伝子群について、遺伝子破壊株の単離を行う。得られた遺伝子破壊株について、乾燥耐性試験や浸透ストレス、ABA応答を調べる実験を行う。具体的には、発芽試験や根伸長試験、蒸散速度の測定、気候電導度の測定、乾燥ストレス下での生存率の測定、などを行う予定である。このような解析から表現型に変化の見られた遺伝子破壊株については、異なる転写開始点の型を導入して、表現型を相補するかどうかを調べる。また、転写開始点の異なる組換えタンパク質を大腸菌等をもちいて調製し、タンパク質の機能に変化があるかどうか調べる。さらに、蛍光タンパク質を付加した融合タンパク質を発現させ、細胞内局在が転写開始点によって変化するかどうかを調べる。以上の研究を進めることによって、乾燥ストレス下で転写開始点が制御される遺伝子群を明らかにするとともに、その生理学的意義についても検討していく予定である。
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