研究課題/領域番号 |
22K19172
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
角井 宏行 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60783199)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 花粉 / コムギ / コアコレクション / ゲノムワイド関連解析 / 葯長 / 生殖 / 花粉数 / セルカウンター |
研究開始時の研究の概要 |
“花粉数”は植物にとって、次世代に残せる子孫の数に直結する重要形質であるとともに、農学分野においても効率的な種子・作物生産に欠かせない重要な形質である。本研究では、世界三大穀物であるコムギ、特に4倍体コムギを対象に研究を行い、作物から初めて花粉数を制御する遺伝子を同定することを目的とする。4倍体コムギは野生種・在来種・栽培種が存在し、花粉数に多様性があると考えられる。そこでこれら4倍体コムギコアコレクションを用いて花粉数の計測およびGWAS、遺伝子機能証明実験により花粉数を制御する遺伝子の探索および同定を試みる。
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研究実績の概要 |
初年度であるR4年度はコムギの花粉関連形質に関する基礎データの取得を目的とした。コムギの大規模種子ストックセンターであるNBRPコムギのコアコレクションのうち、四倍体コムギおよび六倍体コムギ合計350個体を育成し、セルカウンターにより花粉数、花粉サイズ、葯長を計測した。各形質の計測として、まず1系統から2もしくは4個体をサンプリングし、それぞれの個体から1穂あたり2小花分の葯(合計6葯)を1.5mlチューブに採取した。この葯について、カメラ付き実体顕微鏡により画像を取得し、画像解析によって葯長を算出した。これらの葯については1.5mlチューブ内で葯を切断し、2.5%Tween-20液を加えることで花粉液を作製した。この花粉液には100μm以上の葯の細胞片や20μm以下のゴミが含まれる。これらの不要なゴミを除去する目的で目開き20μmもしくは100μmのナイロンメッシュと0.5mlを組み合わせた自作カラムによって不要な粒子を除去した。この花粉液をセルカウンターにより計測し、1花あたりの花粉数および花粉サイズを算出した。その結果、系統間で1小花あたりの花粉数に10倍近い違いがあることがわかった。興味深いことに四倍体コムギでは野生種に比べて栽培種の花粉が有意に少なく、また、六倍体コムギでは在来系統と比較して近代品種で花粉数が少ないことがわかった。今回の花粉数の減少は栽培化を通じて花粉数が減少したことを示すものである可能性がある。次に花粉数や、花粉サイズや葯長についてゲノムワイド関連解析を行った。その結果、それぞれの形質と有意な相関を示すSNPを検出した。今後はこれらのSNPについて他の植物などで既知の花粉関連遺伝子があるかどうか、周辺領域も含めて探索する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度でコムギのサンプルを準備できるか不透明であったが、京都大学育種学研究室ですでに育成していたコムギのコアコレクションを利用することができたため、花粉関連形質をスムーズに解析することができた。これらの解析結果について学会で発表を行ったため、おおむね順調に研究が進んだと区分した。
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今後の研究の推進方策 |
コムギコアコレクションの花粉数、花粉サイズ、葯長のゲノムワイド関連解析で得られたSNPについて他の植物などで既知の花粉関連遺伝子があるかどうか、周辺領域も含めて探索する予定である。また、京都大学育種学研究室で育成したコムギのNAM系統についても同様に花粉関連形質の計測を進めており、こちらについてもデータの取得や解析を行う。このデータについてはチューリヒ大学との国際共同研究として推進しており、共同して解析を進めていくとともに海外での国際学会で研究発表を行う。研究環境の変化として、2022年12月に京都大学から東京大学農学生命科学研究科附属生態調和農学機構に異動となった。京都大学育種学研究室の那須田周平教授とは引き続き共同研究を進めていく。東京大学附属生態調和農学機構ではコムギを育成できる畑が広く存在するため、今後この圃場を利用した新規のコムギ研究も視野に入れて研究を進めていきたいと考えている。
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